日立グループ20万人の統一コラボレーション環境を実現するGroupmax Collaboration
日立製作所では、日立グループの従業員約20万人が利用する全社統一コラボレーション環境に「Groupmax Collaboration」の適用を開始しました。部門や拠点の枠を越えたコミュニケーションの活性化とセキュアな情報共有、時間や場所を選ばないワークスタイルの実現などにより、お客さまの要求に即応するための迅速な意思決定と知の創出に加え、基盤統一によるTCO最適化にも大きな成果を上げています。今後はIP電話やTV会議といったリアルタイム・コミュニケーションとの連携を図りながら、日立グループ全従業員のワークスタイルを改革する世界最大級の企業内コラボレーション環境に発展させていく予定です。
既存ナレッジの有効活用による迅速な意思決定が企業の競争力に直結する時代となり、多くの企業では、組織の枠を越えた柔軟なコラボレーションと情報共有を実現するための仕組みづくりに力を入れ始めています。
一方、2005年4月から施行された個人情報保護法に対応するコンプライアンスやセキュリティへの取り組み、時間や場所を選ばないユビキタスなワークスタイルへの対応なども重要な課題と言えます。
こうした新たなビジネスニーズに応えるには、既成の階層型組織にとらわれない、人と人とがシームレスに連携する「クロスファンクショナル型組織」への転換と、そこで集められる幅広い「知」を、セキュアかつ一元的に運用管理するためのITプラットフォームが必要となってきます。
日立のコラボレーション・ポータルGroupmax Collaborationは、高信頼のコラボレイティブEビジネスプラットフォームCosminexusを基盤に、このクロスファンクショナル型組織という概念を、「コミュニティ」を軸に具現化する機能を搭載した製品です。
ここでいうコミュニティとは、共通の目的や問題意識のもと、情報やナレッジの交換・共有を通じて、共同で目標達成に取り組む「人の集まり」を指しています。
Groupmax Collaborationでは、組織や拠点の違いを越えて集まったメンバーが、いつでもコミュニティを編成することができ、コミュニティごとに作成される共同の作業空間「ワークプレース」に配置された電子メールや電子会議室、ファイル共有などの機能を通じて、これまで散在していた情報やノウハウのリアルタイムな共有を可能とし、組織全体のコンピテンシー向上とビジネスチャンスの拡大をともに実現することができるのです。
しかし、いくら強力なポテンシャルを備えたツールでも、そのスケーラビリティや運用面で制約があるとすれば、「組織の枠を越えたコラボレーション」や「グローバルな情報共有」といったキーワードは、たちまち“幻想”になりかねません。
そこで日立製作所では、Groupmax Collaborationが備える圧倒的なスケーラビリティと機能面・運用面での数々のアドバンテージを実証するため、みずからを世界最大級のユーザーとして、本格的な運用をスタートさせたのです。これが日立グループの全従業員34万人のうち、約20万人が利用する全社統一コラボレーション環境への適用です。
日立製作所
情報システム事業部
e-プラットホーム本部
インフラ企画部
主任技師
伊勢 広敏
「Groupmax Collaborationの導入は、日立グループ共通の企業プラットフォームを再構築するプロジェクト『インフラOne Hitachi』の一環として進めているものです。全社的なインフラを“統制と集中”によって一層強固でセキュアなものとし、グループ間のシナジーを最大限に高めながら、お客さまによりよいサービスを提供する―それが『インフラOne Hitachi』最大のミッションです」―そう語るのは、同プロジェクトの推進役の一人である伊勢広敏(情報システム事業部 e-プラットホーム本部 インフラ企画部 主任技師)です。
日立グループのITプラットフォームは、SCMやDE(DigitalEngineering)など、各事業部ごとのコア・コンピタンスを担う「事業プラットフォーム」と、財務/人事勤怠/資材系システムといった全社横断的な「経営プラットフォーム」、そしてグループ全体の認証/ネットワーク基盤や電話、サーバ統合など企業のIT基盤を担う「企業プラットフォーム」の3つに大きく分けられます。この「企業プラットフォーム」における新たな“コラボレーション基盤”としてGroupmax Collaborationが位置づけられているのです。
「これまでも私たちはメールやスケジューラ、掲示板などを備えたグループウェアを活用してきました。しかしそれぞれの事業部でインフラが統一されていなかったため、組織横断的なプロジェクトに関する情報共有や、特定のノウハウ、スキルを持った人へコンタクトするための仕掛けが不十分だったのも事実です。セキュリティやコンプライアンスの観点からも、サーバを集約し、認証基盤など『インフラOne Hitachi』の他の施策と連携すれば、情報漏えいの防止や監査証跡に大きな効果をもたらします。こうした課題を一気にクリアするための施策の1つがGroupmax Collaborationの全社的な導入だったのです」
(伊勢)
2004年8月、プロジェクトの第1フェーズとして、まずは本社、情報・通信グループなどの従業員、約4万人のユーザーにGroupmax Collaborationが導入されました。この新たな統一コラボレーション環境では、オフィスはもちろん、出張先や自宅などからもセキュアにアクセスできる認証基盤のもと、従来からのグループウェア機能に加え、組織を越えたコミュニティを自由に編成しながら活発な情報交換や共同作業を展開できる「電子会議室」と「ファイル共有」の機能が追加されています。
その導入効果について伊勢は、「利用開始後4か月で、800を超える組織横断的なコミュニティと、2,100を超える電子会議室が編成されました。それぞれのコミュニティや電子会議室では、日々さまざまな部門のスタッフどうしで活発なディスカッションとナレッジ共有が図られており、組織横断型プロジェクトや社員間の文化活動なども非常にやりやすくなったと好評です」と語ります。運用面でも、各種サービスを提供するサーバの統合と運用の集中化により、TCO最適化を実現しているのです(図1)。
図1 日立グループ20万人のコラボレーション基盤
日立製作所
情報・通信グループ
国際情報通信営業
統括本部
営業企画部 主任
渡邊 光
では、実際にユーザーはどのようにこの環境を利用しているのでしょうか。情報・通信グループで国際情報通信営業統括本部に所属する渡邊 光(同本部営業企画部 主任)は、Groupmax Collaboration導入前の状況を次のように説明しています。
「同部署では、ストレージやサーバ、通信ネットワーク機器などの製品を、国内の事業所や海外現地法人と連携し全世界への製品販売および事業企画業務によりグローバル事業を推進しています。当然、われわれの仲間たちは米国、欧州、中国、韓国など世界各国の拠点で活動していますが、それぞれのオフィスのインフラが統一されていないため、これまでの情報交換はどうしてもメールベースに止まっていました」
メールベースの情報では、蓄積・検索対象のデータとしては限界があり、情報共有を行うにも、オープンなネットワーク上で社外秘のファイルを扱うのはリスクが大きかったのです。また、インフラが異なるため、複数のメンバーが議論する電子会議室は使えませんでした。ところがGroupmax Collaborationの導入で状況は一変したのです。
「各拠点のインフラや時差の違いなど、まったく気にすることなく双方向コミュニケーションの舞台が作れることに、まず驚きました。Groupmax CollaborationはWebアプリケーションなので、それぞれのPCにソフトをインストールする必要がありません。イントラネットにさえつながれば、どんな環境からでもワークプレースにアクセスし、時差を気にせず仕事ができるわけです。そこから自分が参加するコミュニティに入れば、いつでも仲間たちと情報交換したり、ExcelやPowerPoint、画像などのファイルをリアルタイムに共有することが可能となる。これでわれわれが今までやりたかったことが一気にできる環境が整備されたと確信しました」(渡邊)
現在同部署が管理しているコミュニティの1つに「Global情報共有サイト」というものがあり、ここでは、さまざまな海外拠点から日立の幹部向けに発信される週報や月報などが、すべてデータベース化されています。Groupmax Collaborationの議事録作成機能により、それぞれの情報に関連する補足資料や発言が一括登録されるのも、データの検索性や全体状況の把握を容易にしている点の1つなのです(図2)。
「これらの情報をアクセス権限のあるメンバー間でセキュアに共有しながら、リアルタイムに情報交換できるようになりました。今後は各国市場でのIT関連需要動向や個別ビジネスに関連したWin&Loss分析などの情報共有を推進して行きたいと思います」(渡邊)
図2 国際情報通信営業統括本部の「Global情報共有サイト」
このほか同部署では、本部が取りまとめた受注実績・報告資料、各国のリスク対策情報、セミナーや研修の告知、出張報告、業務改革の提案などを共有化する掲示板的なコミュニティ、複雑な輸出入管理業務のFAQや運用基準などをデータベース化し、若手でもみずから問題解決が図れるコミュニティなどを用意しています。こうした仕掛け作りが、一人ひとりの情報発信マインドを刺激しつつ、コミュニケーションの活性化とビジネスの効率化を大いにバックアップしているのです。
また渡邊は、「Webアプリケーションなのに、GUIがリッチなのにも驚いています」と付け加えます。Groupmax CollaborationはWebベースでありながらWindowsクライアントレベルのGUIを実現しており、画面左のナビゲーションビューで個人用とコミュニティ用のワークプレースを切り替えながら、それぞれの業務に必要な各種ポートレット(メール、スケジュール、電子会議室など)や業務コンテンツにすばやくアクセスし、業務をスピーディに推進できるのです。
メール機能では、送信属性(未読、至急)や主題、送信者、コミュニティ名などでフィルタリングして表示できるのも便利だといいます。こうしたシンプルで直感的なGUIと操作性が、利用率をさらに高めているのです。
現在同部署では、海外9拠点も含めた約140人のメンバー間でコミュニケーションを展開していますが、今後は他の海外拠点や関連事業部との情報共有拡充を予定しています。さらに将来的にはビジネスパートナーや各地のローカルスタッフなどにも参加を呼び掛けていくほか、IP電話やテレビ会議の機能も積極的に活用していきたいと、今後の展望を力強く語っています。
「参加者の数だけ付加価値が高まるよう、これからも情報受発信能力と事業部間のシナジーを高めながら、この環境を大切に育てていきたいと思います」(渡邊)
日立製作所
ソフトウェア事業部
ネットワーク
ソフトウェア本部
第3ネットワーク
ソフト設計部
主任技師
永山 光春
これ以外にも、Groupmax Collaborationが備える機能やメリットはバラエティに富んでいます。開発者の1人である永山光春(ソフトウェア事業部 ネットワークソフトウェア本部 第3ネットワークソフト設計部 主任技師)に話を聞きました。
「国際情報通信営業統括本部での活用に関連する話から始めますと、まずGroupmax Collaborationは言語環境やタイムゾーンの切り替えが容易に行えるほか、国内外で蓄積したそれぞれの業務情報を連携させ、業務をスムーズに推進できるグローバリゼーション対応を実現しています。
また、IP電話やTV会議と連携したリアルタイム・コミュニケーションのサポートも大きな特長の1つです。日立のIPテレフォニーソリューションCommuniMaxと連携することで、例えばコラボレーションのユーザー検索画面から相手の電話番号をクリックすれば、そのままIP電話が利用できますし、スケジュールからTV会議を起動すれば、遠隔地の相手とでも関連資料を見ながらリアルな集中討議が行えます。こうしたリアルタイム・コミュニケーションとの連携は、今後『インフラOne Hitachi』の中でも段階的に強化されていく予定です」
さらに永山は、全体的なセキュリティレベルの高さもGroupmax Collaborationの大きなアドバンテージだと強調。「個人情報漏えいの多くは、組織内部での意図的な犯行や過失によるものです。そこでGroupmax Collaborationでは、コミュニティ単位のアクセス管理によって、必要なメンバー以外からの情報アクセスを許しません。コミュニティの存在そのものを隠すことも可能です。メールの添付ファイルからの情報漏えいを防止するため、添付ファイルは安全な共有ファイル内に格納し、メール本文にはそのURLのみを記入することで社外へ情報を流出させない仕組みも提供しています(図3)」
Groupmax Collaborationはこうした独自のセキュリティ機能に加え、CosminexusやHiRDB、JP1を中心とした日立オープンミドルウェアやセキュリティ関連製品との連携で、さらに強力なセキュリティの確保とコンプライアンス対応を実現しているのです。 セキュリティの脅威や情報漏えいへの懸念から、全社的な情報共有システムの構築に不安を抱いている企業にとって、これらのソフトとハード、運用、教育などのノウハウも総合的に提供できる日立のトータルソリューションは心強い味方となるでしょう。
2005年3月、日立グループ34万人のうち、約20万人のユーザー情報を管理するディレクトリ基盤と認証基盤の整備が完了しました。これによりGroupmax Collaborationの全社的な導入が2007年度を目標に急ピッチに展開されていきます。まさに世界最大級といえる企業内コラボレーション環境―そこからフィードバックされる数々のノウハウと運用技術の蓄積によって、これからもGroupmax Collaborationはその機能とスケーラビリティ、信頼性に一段と磨きをかけていきます。
図3 添付ファイルでの情報漏えい防止
日立では、統一コラボレーション環境として導入されたGroupmax Collaborationを、各事業部/セクションが業務の効率化や、お客さまサービスの品質向上を目的に、さまざまな工夫をこらしながら活用しています。
以下に、その数例をご紹介します。ここで得られたノウハウや技術は、 今後のエンハンスやソリューション提供の中で生かされていくことになります。
事例1 製品開発業務への適用
ソフトウェアの大規模開発プロジェクトにおいて、各工程での課題解決に電子会議室を使うことによりミーティング回数を減らし、効率を大幅に向上させました。また、仕様決定にいたるまでの経過を残すため、会議室ログ(議事録)をとり、今後の類似開発に利用できるようにしています。
事例2 案件対応業務への適用
情報システムを納入する際には、さまざまな要件が発生します。それらの見積速度と精度を向上させるには、開発部門とSE部門の密接なコミュニケーションが必要です。しかし、ハードウェアから多数の製品をまとめあげるSE部門では、特定の開発部門と常にミーティングを持ち続けることは不可能に近い。そこでGroupmax Collaborationの中で案件ごとのコミュニティを立ち上げ、セキュアでスムーズな情報共有を実現。これにより、お客さまへの見積提案のスピードアップと精度向上を実現しました。
事例3 お客さまドットコムへの適用
日立では、大規模な取引をさせていただいているお客さまとの間に、ホットライン的な機能を持つ情報共有サイト「お客さまドットコム」をGroupmax Collaborationで構築しています。このシステム最大の特長は、営業スタッフとお客さまが時間を気にせずコンタクトできる点にあります。また、強固なセキュリティを確保しているため、情報漏えいの心配もありません。