ERPと関連システムを1分間隔のデータ連携で結び
リードタイム短縮と経営の見える化を実現。
システム間連携を支える「DataStage®」と「JP1」
安心安全な無添加化粧品と、美と健康に対する機能性を高めた栄養補助食品で急成長を遂げてきた株式会社ファンケル(以下、ファンケル)は、ERPパッケージを導入して、基幹系システムを全面的に刷新した。
競争力を高めるためには、標準化の基盤となるERPと、差別化の原動力となる通販システムをはじめとする独自システムとを連携させることが不可欠である。
そこで、日立のデータ統合のための情報資産管理基盤「DataStage(データステージ)」と統合システム運用管理「JP1」を使って、ハブ&スポーク型のシステム間連携基盤を構築。
1分間隔での高速・大量データ連携を実現して、製販のリードタイム短縮と、経営の見える化に成功した。
株式会社ファンケル
情報システム部
部長
中島 理人 氏
無添加化粧品と栄養補助食品の通信販売で急成長を遂げてきたファンケル。創業から27年を経た現在でも、インターネット通販、直営店販売、コンビニエンスストアなどへの卸売、海外輸出などの販売チャネルを強化して、成長を続けている。
「しかし、無添加化粧品や栄養補助食品の競争が激化して、先行きに不透明な要素も出てきました。今こそファンケルの原点に帰り、新鮮で作りたてのものを提供するという強みをさらに強化したい」と中島氏は力強く語る。
商品の新鮮さを追求し、「今日受注したものを明日届ける」体制を確立するには、製造・販売のリードタイムを短縮しなければならない。しかし、システムは追加開発を重ねるなかで分断・肥大化が進み、事業や販路ごとの動きを把握しにくい状況に陥っていた。
「業務とシステムの両面で、統合・標準化が急務でした。そこで、まずERPを導入して、ものづくりの土台を標準化した上で、独自の売り方を強化して差別化を追求していきたいと考えたのです」と中島氏は言う。
2005年以降、ERP導入と業務改革、経営管理強化という3つのプロジェクトを並行して進めた。
ERPは、まず2006年4月に会計システムが動き出し、さらに、2007年4月の全面稼働に向けて新しいSCMの開発が進んでいた。
「製販を連携させてSCMを機敏に回すには、検品システムなどの関連システムとの連携が不可欠です。さまざまな関連システムをどのように連携させ、精度の高いデータとして統合していくか。システム間連携の方法を複数の角度から検討しました」と池森氏は言う。
検討した結果、選択したのは日立の情報資産管理基盤「DataStage」である。
DataStageは、送り手のシステムからデータを抽出し、利用しやすい形に変換し、受け手のシステムへ書き出すというETL処理を行う。DataStageのデータ統合ジョブを日立の統合システム運用管理「JP1」で管理をすることで、ERPと関連システムとの連携を実現する。
同社ではEAIツールを用いたリアルタイム連携も検討したが、DataStageとJP1の組み合わせなら、「準リアルタイム」で情報の鮮度を高められるうえに、EAIツールよりもコストパフォーマンスが際立っていた。構造がシンプルで拡張性が高いというメリットもある。さらに決定打となったのが、実際に1分間隔で数十のジョブを同時に実行して大量データを連携させられることを、事前テストで実証できたことである。
「スペックレベルでは、どのベンダーの提案も要求を満たしていましたが、DataStageとJP1の組み合わせは実際に目の前で高速処理を実証してくれました」と中島氏は語る。ETLツールとジョブ管理ツールをワンストップで提供したうえで高い処理性能を引き出した日立の技術力が評価されたのである。
株式会社ファンケル
情報システム部
コーポレートシステムグループ
石川 雅俊 氏
株式会社ファンケル
情報システム部
コーポレートシステムグループ
池森 正記 氏
2007年4月、ERPは予定通りに全面稼働を開始した。現在、DataStageとJP1は、ERPと10以上の関連システムを連携させている。連携ジョブは複雑で、データ量はきわめて多い。
「現在、関連システムとERPの間では、約60本の連携ジョブが動いており、そのうちの20本が準リアルタイム連携です。準リアルタイム連携の中には、1度に最大数千件のデータをやりとりしているジョブもありますから、DataStageは日中合計20万件のデータ連携に対応できるよう設計しています」と石川氏は説明する。こうした連携が的確に機能することにより、たとえば自動倉庫システムを使って入庫処理をすると、即座にERPの在庫が更新されるという動きが実現できているのである。
このDataStageとJP1で構築したデータ連携基盤は、システムの運用や拡張性といった点でも評価が高い。
第1には、ERPの動きを支える正確なデータを、決められた時刻に的確に送ることができるようになったことがあげられる。
「DataStageとJP1の連携部分でエラーが発生したことは一度もありません。2つの製品は非常に親和性が高い」と池森氏は評価する。
第2は、障害対応が短時間でできるなど、システムの運用・保守が楽になったことである。
DataStageの動きは、JP1がきめ細かく管理しており、問題が発生したときには、必要な担当者へ自動的にメールが送信される。エラーの状況が正確に把握でき、最小限の操作で的確にリカバリができるのは、JP1ならではの特長だ。処理開始時間の変更もマウス操作で容易に指定でき、プログラミングは必要ない。
「監視画面もグラフィカルで見やすい。抽出・変換・書き出しの動きがアイコンのフロー図で表示されているので、処理の状況が一目瞭然です」と池森氏は語る。
そして第3には、n対nのシステム連携を実現するハブ&スポーク型の基盤を確立できたことがあげられる。連携システムの追加・変更は、DataStageの設定を修正するだけで実現でき、送り手・受け手のシステムを変更する必要がない。変化への対応が柔軟にできるのだ。
「ハブ&スポーク型のデータ連携基盤を構築することは、当初からの目標でした。現在はERP関連の連携をしていますが、これからはもっと幅広いシステムの共通基盤にしたい。DataStageは拡張性に優れており、『疎結合・準リアルタイム』で充分なものはすべて、この基盤に載せていきます」と中島氏は語る。
すでに、構築中のDWHや次期通販システムとの連携も検討中である。
「ERPの導入で、いままで見えなかったものが見えてきました。経営状態の把握が、実態により近くなったのです」と中島氏は言う。
在庫の動きは、事業別・販路別で正確に見える。システム変更に合わせて購買統制を行い集中購買が効果的にできるようになり、コスト削減にも貢献している。需要予測システムも稼働を開始して、予実の誤差を減らし、適正在庫を追求するチャレンジも本格化している。
さらに、同時に進めた業務改革との相乗効果により、従来の1ヵ月サイクル生産が2週間サイクル生産に変わりつつある。製販のリードタイムを半分に短縮し、これまで以上に新鮮な商品を市場に提供できる体制が整いつつある。
変化に即応できるデータ連携基盤は、ファンケルの今後の変化も柔軟に支えていく。
ファンケルの新システム概要
USER PROFILE
株式会社ファンケル
[本社] 神奈川県横浜市中区山下町89-1
[設立] 1981年8月18日
[資本金] 107億9,500万円(2007年3月31日現在)
[従業員数] 691名(2007年3月31日)
無添加化粧品の通信販売でスタート。現在は、化粧品、栄養補助食品、発芽玄米・青汁などの健康食品、肌着を製造・販売。システム、業務と同時にブランドの統合・標準化にも取り組んでおり、2007年9月、主力商品である基礎化粧品をファンケルブランドに一本化する。