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新販売・物流システム「DOT(ドット)」にJP1を導入
マルチプラットフォーム環境での効率的な運用管理を実現

タイヤメーカー大手の株式会社ブリヂストン(以下、ブリヂストン)では、販売会社とのシームレスなビジネス連携を可能にする新販売・物流システム「DOT」を、2003年6月より全面本稼働させた。このシステムは同社と販売会社50社・500拠点を結んでおり、ピーク時には一日20万件という大量のトランザクション処理を伴う大規模システムである。それぞれOSが異なる大量のサーバ群で構成されているため、構築時には運用管理の効率化が大きな課題となった。そこで同社では日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」を運用管理基盤に採用。異種システムを統合的に管理できる環境を構築し、基幹業務システムに欠かせない万全の信頼性・可用性を実現している。

ビジネスの最適化を実現する 新販売・物流システム「DOT」を構築

高田 幸二 氏の写真
ブリヂストンソフトウェア株式会社
システム技術運用部
ERPシステム技術課長
高田 幸二 氏

ブリヂストンでは、2000年7月に新販売・物流システム「DOT(Dealer & branch Online Terminal system)」の構築プロジェクトをスタートさせた。

同社のシステム開発・運用業務を手がけるブリヂストンソフトウェア株式会社(以下、ブリヂストンソフトウェア) システム技術運用部 ERPシステム技術課長 高田 幸二氏は、その概要を「DOTはカー用品店などで販売されるリプレース用タイヤの販売・物流システムですが、同時に販売会社のシステムとも一体になっています。ブリヂストンにとっては受注出荷業務を担う重要な業務システムであり、販売会社にとっては基幹業務システムになるわけです」と説明する。

今回構築されたDOTは4代目になるが、3代目の旧DOTにおいては販売・物流業務を、メインフレームと販売会社に設置された専用端末によって行っていた。これをオープン系のハードウェア群とERPパッケージ、クライアントPCに置き換えることで、ビジネスの最適化を推進するのが狙いである。

システムの中核を支えるERPパッケージには、同社の会計・購買システムなどで実績を積んでいたSAP® R/3®を採用。さらにアドオン開発を加えることで、自社の強みを最大限に発揮できる環境を実現した。各販売会社への展開作業は2002年末より開始され、2003年6月に無事全面カットオーバーを迎えている。

大規模システムを効率的に管理すべく 「JP1」を運用管理基盤に採用

新DOTの特長について、高田氏は「大規模」「マルチプラットフォーム環境」「サーバ台数の多さ」の3点を挙げる。

「DOTは販売会社50社と、全国に展開する支店・営業所など500拠点とつながっています。各拠点で稼働する端末は1,700台。LBPやシリアルプリンタなども含めると、約3,400〜3,500台にも上ります」(高田氏)。

これほどの大規模システムだけに、処理されるデータも半端な量ではない。DOTが1ヶ月に処理するデータ件数は約400万件。さらにピーク時には1日20万件・1時間あたり3万件もの大量データを処理するという。

また2点目のマルチプラットフォーム環境について、高田氏は「DBサーバはz/OS、アプリケーションサーバはWindows® 2000で稼働しています。またこれ以外にも、周辺システムとしてWindows® 2000サーバやUNIXサーバが数多く稼働しています」と語る。サーバ数はアプリケーションサーバだけで18台、本番システム全体では48台ものサーバが稼働している。しかもそのいずれもが、業務上重要な役割を担っているのだ。

「そこでシステム構築に際しては、運用管理の効率化が大きな課題となりました。ポイントは『各サーバ群のジョブを一元的に実行・管理できること』、『システム全体を確実に監視できること』『クライアントPCへの資源配布』の3点です」と高田氏は語る。

これらの条件を満たせるツールとして選ばれたのが、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」である。

JP1を採用した理由を、高田氏は「一番大きかったのは、ツールとしての信頼性の高さですね。以前には他の運用管理ツールを導入していたこともあるのですが、障害が多かったり、充分なサポートが受けられないなどの問題がありました。DOTはビジネスを支える重要なシステムですから、こうしたことは許されません。その点、JP1で管理しているブリヂストン社内の他のR/3®システムでは、こうしたトラブルに悩まされることがなかった。そこでDOTにもJP1を適用することにしたのです」と語る。

Windows®とメインフレーム間のシームレスなジョブ連携を実現

ブリヂストンではJP1を利用して、異種システム間にまたがるジョブを統合的に制御している。たとえばメインフレームのDBをバックアップする際には、「アプリケーションサーバのトランザクション停止」→「R/3®停止」→「DB停止」→「高速コピー開始」といった一連の流れをJP1で実行させている。このうち「R/3停止」まではWindowsサーバ、「DBサーバ停止」以降はメインフレームに対する処理だが、これらをシームレスに連携させているのだ。もちろんコピー終了後は、これと逆のステップを踏んでトランザクションが再開される。

「複数のアプリケーションサーバをグルーピングし、迅速さが要求される業務は多くのリソースを持つサーバ群に、そうでない業務はリソースの少ないサーバ群に振り分けるといったこともJP1では可能です」と高田氏は語る。

DOTでは「擬似リアルタイム処理」と呼ばれる仕組みを構築することで、受注伝票発行をスムーズに処理するようにしているが、ここでもJP1が活用されている。擬似リアルタイム処理では、販売会社のクライアントから送られた受注・出荷の要求を直接処理するのではなく、「擬似処理キュー」と呼ばれるテーブルに一旦格納し、受注・出荷伝票を発行する。さらにDBへの更新を擬似処理キューから行うことで、アクセスが集中した場合にもスピーディに業務が行えるようにしているのだ。

「DB更新については、JP1/Automatic Job Management System 2(JP1/AJS2)を使用して1分〜30分間隔のサイクル処理を行っています。このためジョブ数が非常に多くなっています」と語る高田氏。1日あたりのジョブ実行数は約14万件、同時実行ジョブ数は最大178ジョブ、一分あたりのジョブ起動数は最大540ジョブにも上るとのことだ。

「このためJP1の停止は、我々にとってシステムダウンにも等しい。しかし本稼働開始以来、ほとんどトラブル無く運用できています」と高田氏は満足げに語る。

大量のサーバ群を確実に監視 資源配布業務の効率も大幅アップ

マルチベンダーで構成されたサーバ群の統合監視を行う上でも、JP1は絶大な効果を発揮している。ジョブの異常終了や開始・終了遅延、ハードウェア障害などが発生した場合には、JP1/Integrated Manager(JP1/IM)の統合コンソールに即座に通知され、迅速に対応できるようになっている。

DOTを構成するサーバの中には、他ベンダー製の運用管理ツールでCPUやメモリー、ディスクなどの状態を監視しているものもある。しかしこれらの情報も最終的にはすべてJP1/IMに集約されるため、オペレータはJP1にあがるアラームだけを監視していればよい。

また構築時の課題であった資源配布についても、JP1/NETM/DMが有効に活用されている。「JP1/NETM/DMには拠点のサブマネージャから配下のクライアントに資源配布を行う機能が備わっていますので、WANの帯域に負担を掛けることなく配布が行えます」と高田氏は語る。

以前は拠点に媒体を搬送し、現地でインストールやセットアップ作業を行う必要があった。それ以外にも手順書の作成や配布、作業日程調整、進捗確認など、膨大な手間とコストが必要だった。しかしJP1/NETM/DMを導入したことで、こうした問題は完全に解消。高田氏は「ソフトウェアのバージョンアップなどにも、迅速に対応できるようになりました」とにこやかに語る。

「DOTは販売会社の基幹業務システムでもありますから、さまざまな障害に対してプロアクティブに対処していくことが重要です。そういう意味でも、システム全体を統合管理できるJP1を導入した効果は大きかった」と今回のプロジェクトを振り返る高田氏。

今後の意気込みを「将来的にはDOT以外の他のシステム群も連携させ、すべてをJP1で統合監視できる環境を構築していきたい」と続けた。

ブリジストンの総合監視システム概念図

USER PROFILE

株式会社ブリヂストン

[本社] 東京都中央区京橋1-10-1
[設立] 1931年3月1日
[資本金] 1,263億5,400万円
[売上高] 2兆3,039億円(連結、2003年度実績)
[従業員数] 12,480名

乗用車用、トラック・バス用タイヤなどのメーカー大手としてグローバルにビジネスを展開している。また、化工品の分野では自動車関連部品、ウレタンフォームおよびその関連用品などの製造も手がけている。

PARTNER PROFILE

ブリヂストンソフトウェア株式会社

[本社] 東京都小平市小川東町3-1-1
[設立] 1986年4月1日
[資本金] 1億5,000万円
[売上高] 50億4,600万円
[従業員数] 144名

ブリヂストンの情報システム部門を母体として1986年に設立。ブリヂストングループ企業のシステム構築・運用を担当するほか、タイヤ小売店向けのパッケージソフト開発・販売なども行っている。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ」2004年8月9日号・Open Middleware Report Vol.27に掲載されたものです。
  • SAPおよびR/3は、SAP AGのドイツ及びその他の国における登録商標です。
  • UNIXは、X/Open Company Limited が独占的にライセンスしている米国ならびに他の国における登録商標です。
  • Windowsは、米国およびその他の国における米国Microsoft Corporationの登録商標です。
  • z/OSは、米国およびその他の国における米国International Business Machines Corp.の商標です。
  • その他記載されている会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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