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2010年3月26日
国立大学法人東北大学
株式会社日立製作所
金属間化合物(Co3(Al,W))を分散したコバルト基合金を採用し、
高温時の強度と耐摩耗性を向上
国立大学法人東北大学(総長 : 井上 明久/以下、東北大)と株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長 : 川村 隆/以下、日立)は、鉄、チタン合金、ジルコニウム合金など、融点が高く従来の金属製摩擦攪拌接合用ツールでは接合が困難とされていた材料の接合を可能にする摩擦攪拌接合用ツール(以下、FSW*1ツール)を開発しました。本FSWツールは、高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物*2(Co3(Al,W))を分散*3したコバルト基合金(以下、Co基合金)をツールの材料として用いることで、従来のセラミック系FSWツールと比べ、高い耐久性と耐磨耗性を実現しました。高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物(Co3(Al,W))は、2006年に東北大工学研究科金属フロンティア工学専攻石田研究室が発見したものです。
今回開発した本FSWツールは、融点が高く接合の難しい鉄やチタン合金、ジルコニウム合金などの接合も可能であることから、電力プラントや化学プラント、自動車などの産業分野への応用展開が期待されます。
摩擦攪拌接合は、回転するツールを接合する材料の間に挿入し、接合部に沿ってツールを回転移動させることで接合する方法です。接合する材料と回転するツールの間で発生する摩擦熱で接合材料を軟化させると同時に、ツールの回転により材料を混ぜ合わせることで接合します。この接合方法は、従来のアーク溶接などとは異なり、材料を溶かさずに接合でき接合後の変形も小さく、かつ接合欠陥が小さいため、製品の高品質化と低コスト化を実現できます。また粉塵などの発生もなく、環境にも優しい接合法です。
日立は、1997年にアルミニウム製鉄道車両の製造において、世界で初めて摩擦攪拌接合を実用化し、その後、二輪用ブレーキ部品などにも応用展開しています。従来の金属製FSWツールは、主に融点の低いアルミニウムを接合する技術として実用化され、その後、アルミニウムなどの低融点金属と高融点金属の接合技術も開発しています。しかし、融点が高く接合の難しい鉄やチタン合金、ジルコニウム合金を、従来の金属製FSWツールで接合すると、接合ツールの先端が摩擦熱などの影響で高温となり、損傷してしまうなどの課題がありました。
このような背景から、今回、東北大と日立は、高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物(Co3(Al,W))を分散したCo基合金を用いて、新しい金属製FSWツールを開発しました。
今回、開発した技術の特長は以下の通りです。
Co基合金は本来、耐摩耗性に優れた材料ですが、融点が高く接合の難しい金属の接合に用いるためには、高温時の強度を高めなければなりません。そこで、東北大が発見した金属間化合物(Co3(Al,W))をCo基合金に分散させ、分散量、粒径、結晶粒界の形状などを制御することで、高温でも高い耐摩耗性と強度を向上しました。また、開発したツールは靭性*4が高く、工具の欠損に対する耐久性も向上しています。
今回開発した技術は、金属製FSWツールの耐久性を向上させるとともに、一般的な金属部品の鋳造法であるロストワックス法*5での製造が可能なため、素材費と切削加工費を低減することができます。さらにツール素材として高価で強度のあるレニウムなどを使用していないことから、接合コストに優れた技術です。
国立大学法人東北大学工学研究科金属フロンティア工学専攻 [担当 : 石田]
〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6
電話 022-795-7321(直通)
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508(直通)
以上