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2006年10月16日
東京応化工業株式会社
株式会社日立製作所
極端紫外線(EUV)リソグラフィ用低分子フォトレジスト材料を開発
高感度、高解像度、低ラフネス(LER)の同時実現に目処
ハーフピッチ32 nm世代以降の量産に適用可能
東京応化工業株式会社(取締役社長:中村洋一/以下、東京応化)ならびに株式会社日立製作所(執行役社長:古川一夫/以下、日立)は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業において、技術研究組合 超先端電子技術開発機構(以下、ASET)の協力を得て、hp(ハーフピッチ)32 nm世代以降の半導体デバイス量産プロセスで必要となる、EUV (Extreme Ultra Violet:極端紫外線)リソグラフィ用*1ポジ型およびネガ型低分子フォトレジスト材料の基本技術を確立しました。
本研究開発において、フォトレジスト材料の開発は、NEDOの基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)「50 nm以降に対応する分子制御ナノリソグラフィ材料」による委託事業において、東京応化と日立によって行われました。また、上記フォトレジストのEUVリソグラフィとしての性能評価は、NEDO委託事業「極端紫外線(EUV)露光システム開発プロジェクト」の研究開発項目「EUV リソグラフィ用レジストの評価」において、ASETによって行われました。
本フォトレジスト材料により、2012年頃と予測されるhp 32 nm世代以降のEUVリソグラフィに求められている30 nm以下の高精度で生産性の高い超微細加工が可能となります。さらには、それ以降の世代の半導体デバイス量産開始にも実現性を示すとともに、半導体デバイスの高性能化および低コスト化に道を拓く技術として期待されます。
フラッシュメモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、マイクロプロセッサなどに代表される半導体デバイスは、微細化の進展によって高集積化が可能となり、急速な大容量化、高性能化、低コスト化を実現しています。 現在の最先端の微細加工は、波長193 nmのArF (Argon Fluoride)エキシマレーザーを露光光源として用いて行われていますが、この波長では30 nm以下の微細加工は困難であり、hp 32 nm世代以降に向けて微細化の限界が深刻な問題となっています。そのため、hp 32 nm世代以降の微細加工に適用するため、波長13.5 nmのEUVリソグラフィ技術の開発が、日・米・欧におけるそれぞれのコンソーシアム主体で急速に進められています。このEUVリソグラフィの要素技術の中でも、フォトレジストの開発は最大の技術課題と位置づけられており、特に高解像度、高感度、低LER(Line-Edge Roughness)*2の三者を同時に併せ持つ高性能化が求められています。
今回、東京応化と日立は、フォトレジストの基本材料に分子量1,000程度の新規低分子ポリフェノールを開発しました。これは、飛躍的な分子サイズのスケーリングと精密有機合成による製造方法による、従来の高分子材料(分子量約10,000程度)と異なる“均一で小さな分子”の採用により、フォトレジストの高解像性と、大きな課題とされていたLERの低減を同時に達成しました。また、今回開発に成功したフォトレジストは、すでに適用されている化学増幅型の反応メカニズムを採用しており、その最適化により従来と同等以上の高感度化を実現いたしました。これまで技術的難易度の高かった高解像度、高感度、低LER、三者の同時実現に目処をつけたもので、EUVリソグラフィの実用化に向けて大きな可能性を示すものです。
開発した技術の概要は以下のとおりです。
- (1) 耐熱性・エッチング耐性・現像特性をあわせもつ低分子ポリフェノールの開発
従来の高分子フォトレジストと同等の耐熱性、エッチング耐性、および現像特性を併せ持つ、低分子ポリフェノールを開発しました。これにより本フォトレジストは従来のリソグラフィプラットフォームとの整合性を持っています。 - (2) フォトレジスト材料の量産性を実現するための材料設計
本低分子フォトレジスト材料は、安定して大量製造が可能な材料設計を採用し、量産技術を確立しました。従来のフォトレジスト材料と同程度またはそれ以上の純度、収量、収率を確保可能です。 - (3) ポジ型・ネガ型の両像形成に対応
本低分子フォトレジスト材料は、使用するポリフェノール種類最適化と、ポリフェノールに付加する官能基の最適化により、ポジ型・ネガ型の両像形成モードに対応が可能です。ネガ型に関しては、日立独自のフォトレジストメカニズム(極性変換反応)を組み合わせることに成功し、ポジ型と同等の特性を有することを確認しました。 - (4) フォトレジストの高性能化(高感度、高解像度、および低LER)を実現
本低分子ポリフェノールを用いた新開発のポジ型フォトレジストは、ASETにおいて高NA小フィールド露光装置(HiNA:High NA Small Field Exposure Tool)を用いてEUV露光評価を行った結果、世界最高水準の限界解像性;28 nm hp (図1)、感度;5 mJ/cm2(45 nm hp)、LER;3.6 nm (12.2 mJ/cm2、45 nm hp)が確認されました。また、ネガ型フォトレジストについても、ASETにおけるEUV露光評価の結果、世界最高水準の限界解像性28 nmが確認されました。(図2)
引き続き、本格的にEUVリソグラフィへの適用実現に向け、ASETとの共同研究により開発を進め、hp 32 nm世代、さらにその先の微細化に向け、フォトレジストの実用化研究を加速させてまいります。
開発した技術は、EUVおよびEB(Electron Beam)リソグラフィ用フォトレジストとして、2007年春からサンプル提供を開始し、2010年頃の製品化を目指します。なお、本成果は、2006年10月15日からスペイン・バルセロナで開催のEUVLシンポジウム(2006 International EUVL Symposium)および2006年10月25日から鎌倉で開催のMNC2006 (19th International Microprocesses and Nanotechnology Conference)で発表される予定です。
用語説明
- *1
- EUV (Extreme Ultra Violet)リソグラフィ
EUV リソグラフィとは、半導体デバイス製造において波長13.5 nmのEUV光を用いてシリコンウェハ上に回路パターンを形成する技術です。2012年以降に予測されているhp 32 nm世代以降で必要となる微細加工にも対応することができます。このEUV リソグラフィを量産レベルで使用するために、フォトレジストに対しては、高解像度、低LERとともに、高感度化が強く求められています。しかし、これらの三大要求の同時実現は原理的に難しく、それゆえに、フォトレジストは現在最大の技術課題と位置づけられています。 - *2
- LER (Line-Edge Roughness)
LER (Line-Edge Roughness)とは、フォトレジストパターン壁面にできる凹凸(荒さ)のことです。この凹凸の大きさは、配線の断線、ショート等を引き起こし、半導体デバイスの生産性に多大な影響を与えるため、極微細化に向けて高い加工、配線精度を実現する低LER化は解決すべき課題の一つとなっていました。特にhp 32 nm世代以降、さらにその先の世代では、LERの許容範囲は僅か1.3 nm (3 sigma / MPU Gate CD Control)となり、従来の高分子材料では分子サイズ自体がこの許容値を越え、また、単に低分子化するだけでは耐熱性、エッチング耐性、現像特性を維持することが難しく、LER低減は達成が極めて困難な技術的課題となっていました。
ご参考
ITRSによる半導体リソグラフィのロードマップ(2005)
半導体製造技術の代表的なロードマップであるITRSのロードマップでは、hp 32 nm世代の量産開始は2012年頃と予測されています。
Year of Production (西暦) | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 |
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DRAM ハーフピッチ (nm) | 80 | 70 | 65 | 57 | 50 | 45 | 40 | 36 | 32 |
MPU/ASIC ハーフピッチ (nm) | 90 | 78 | 68 | 59 | 52 | 45 | 40 | 36 | 32 |
Flash ハーフピッチ (nm) | 76 | 64 | 57 | 51 | 45 | 40 | 36 | 32 | 28 |
お問い合わせ先
東京応化工業株式会社 広報部[担当:渡辺]
〒211-0012 神奈川県川崎市中原区中丸子150番地
TEL : 044-435-3000 (代表)
株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (ダイヤルイン)
EUVリソグラフィ用レジストとしての性能評価に関しては、
技術研究組合 超先端電子技術開発機構 EUVプロセス技術研究室 [担当:西山]
〒243-0198 神奈川県厚木市森の里若宮3-1 NTT研究開発センタ内
TEL : 046-270-6680 (ダイヤルイン)
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以上
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