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2004年8月3日
強磁性を有する極低温回転子軸材(13%ニッケル鉄合金)を開発
地球環境保全に貢献する超電導発電機の高性能化・低コスト化に道
日立製作所(執行役社長:庄山悦彦/以下、日立)と超電導発電関連機器・材料技術研究組合(理事長:橋本安雄/以下、Super-GM)は、このたび、20万kW〜60万kW級超電導発電機*1用の超電導界磁巻線*2を取付・支持するための極低温回転子軸材として、機能性に優れた低コストの新材料、13%ニッケル鉄合金を開発しました。これにより、超電導発電機の高性能化と低コスト化が実現されるため、地球環境保全に貢献する超電導発電機の早期実用化に道を拓く材料として期待されます。
超電導発電機は、現用発電機と比較して、発電機効率の向上や小型・軽量化が可能な発電機として実用化が期待されており、その特長を検証するために、これまで国家プロジェクトにより、7万kW級超電導発電機での実証試験を実施してまいりました。しかし、超電導発電機は、その構造が複雑であることに加え、使用する材料のコストが高いことが、実用化に向けての隘路となっていました。
そこで、日立とSuper-GMは、超電導発電機をより低コスト化するために、このたび、これまで超電導発電機の極低温回転子軸材として用いられていた非磁性の析出強化型25%ニッケル-15%クロム鉄合金*3に替えて、強磁性でマルテンサイト強化型の13%ニッケル鉄合金*4を新たに開発しました。おもな開発内容は、以下の通りです。
(1) 試作による実証:
開発した13%ニッケル鉄合金により、20万kW級超電導発電機の極低温回転子軸と同一断面で、長さのみ1/2とした大形鍛造品(外径620mm、長さ1850mm、質量3.4トン)を株式会社日本製鋼所の協力を得て製作し、極低温回転子軸材に必要な機械的強度、磁性を有していることを確認しました。
試作した極低温回転子軸(外径620mm)
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(2) 小型・高効率化:
電磁界解析シミュレーションにより、強磁性回転子軸は従来の非磁性回転子軸よりも、超電導発電機の小型化、効率向上、電力系統安定度向上、超電導界磁巻線安定性向上などに有利であることを確認しました。
(3) 低コスト化:
従来の非磁性鉄合金よりも低ニッケルで、切削加工性、溶接性などに優れているため、極低温回転子軸のコストを従来の約50%に低減できる見通しを得ました。
さらに、今回開発した13%ニッケル鉄合金は、高温超電導体*5を用いた機器にも幅広く適用が可能であり、今後、高温超電導体を用いたモータ・発電機などの回転機器への応用が期待できます。
なお、本開発は、経済産業省の革新的温暖化対策技術プログラムの一環として独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が計画した「超電導発電機基盤技術研究開発プロジェクト」により実施したものです。
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用語説明
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*1 |
超電導発電機: |
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通常、回転子(回転部)側に超電導線からなる界磁巻線を用い、固定子(固定部)側に銅線からなる電機子巻線を用いるタイプの交流発電機。 |
*2 |
超電導界磁巻線: |
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直流電流を流して磁極を作るための巻線に、超電導線を用いたもの。 |
*3 |
非磁性の析出強化型25%ニッケル-15%クロム合金: |
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鉄-25%ニッケル合金にクロムを15%添加することによって極低温靭性を高め、熱処理によって微細な化合物粒子を析出させて強化した鉄合金。クロムの多量添加により非磁性材となっています。 |
*4 |
強磁性のマルテンサイト強化型13%ニッケル鉄合金: |
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鉄-13%ニッケル合金の不純物を低減することで、極低温の靭性を改良し、熱処理によって、微細で硬いマルテンサイト組織がつくることにより強化した鉄合金。クロムを含まないため強磁性を保持しているので、超電導界磁巻線の作る磁束を強くすることができます。 |
*5 |
高温超電導体: |
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チタン・ニオブなど金属系の超電導体よりも高い温度で使用することが可能な、ビスマス酸化物系などの超電導体。 |
| | お問い合わせ先 |
株式会社 日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:根本]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 : 0294-52-5111 (代表)
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