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2019年10月、東京国際フォーラムにおいて「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」が開催され、大勢のご来場者に、社会のさまざまな課題を解決する社会イノベーション事業の最新の事例や取り組みなどをご紹介しました。ここでは、会場にお越しになれなかった方のために、編集部が会場でキーパーソンにインタビューした、お客さまとの取り組み事例や経営課題解決につながるヒントなどをご紹介します。


チケッティングソリューションについて日立製作所 研究開発グループの小林悠一さんに伺いました。

ブロックチェーンを基盤技術として活用したサービスのコラボレーション

ブロックチェーン技術をベースに交通・リテール・観光・広告など、さまざまな事業間をセキュアに接続してデータの共有・連携を行うことで、新たなチケッティングサービスを創生する研究開発の取り組みについて、小林さんにお話を伺いました。よろしくお願いします。
ブロックチェーン技術を活用して、さまざまな事業間でデータ共有や連携をし、新しいチケッティングサービスを実現するというものです。

例えば、ホテルと鉄道の予約を結び付け、ICカードのような1枚のチケットで宿泊ができたり、新幹線に乗ったり、レストランでも使えるシングルチケットのサービスを第一段階として想定しています。その次の段階では、駅の混雑状況やレストランの空き状況などのデータを連携させて、高度なサービスを提供していきたいと考えています。
第二段階では、どのような利用場面を想定されているのでしょうか。
それでは、デモ画面で説明しましょう。

あるお客さまが、都心の駅で下車するところだと考えてください。ICカードで改札機にタッチして改札の外に出ました。すると、鉄道システム側は、このカードを持っている人が駅の周りにいることがわかります。また、その駅周辺が混雑しているという情報も持っているので、この人がしばらく別のところにいてくれると混雑が緩和できてありがたいなと鉄道事業者側は考えるわけです。

一方で近隣のレストランから、今空いているという情報も入ってきています。 そこで、お客さまの携帯電話に通知が行きます。今、最寄りの駅に人が大勢いるので、帰りの電車は混雑しそうだということと、同時に、近くのレストランでの割引クーポンや別の交通手段もあることなど、いくつかの提案が伝えられます。
混雑しているという情報だけでなく、利用者はいくつかの提案が受けられるわけですね。
そうです。すぐに帰宅したいなら、電車ではなくタクシーにしようとか、時間に余裕があるからレストランに寄って帰ろうか、といった選択ができます。

今回はレストランに行くことを選んだとします。レストランに着いたら、携帯電話に送られてきたQRチケットを読んでもらうなどしてクーポンを使うことができます。例えば"デザート1点無料"といったサービスが受けられます。このとき、携帯電話でQRコードを読み取るという動作をしたことで、このお客さまはそこのレストランでご飯を食べていることがわかり、鉄道事業者側ではしばらくは鉄道の駅に来ないから、この時間帯の乗降客がどのくらい減るかという予測ができるようになります。

同時に、このお客さまは協力的な人だということも記録されますので、そうした情報が積み重なっていくことで、そのお客さまに特化したパーソナライズな提案もできるようになります。 そして、混雑が緩和してきたらその情報もお伝えしますから、じゃあそろそろ駅に行こうか、ということになり、改札を通ると、今度は、ご協力ありがとうございました、というメッセージが出ます。
お客さまにとっても、鉄道事業者、周辺のレストランなどもうれしいサービスですね。
はい。そうしたWin-Winなサービスを目指しています。これがなぜできるかと言いますと、携帯電話やICカードといった複数のチケット媒体が一つのIDにひも付いていて、かつ鉄道事業者はレストランや他の事業者などの情報とも接続されているからです。事業者同士をつなぎ、複数の媒体をつなぐという両方が実現できることでこうしたサービスが可能になっています。
ユーザー側から見ると、個人情報がどこまで使われるのかなという心配もありそうですが。
個人情報をどこまで共有するかはユーザーが自分で選ぶこともできますから、その点は安心していただけると思います。

ブロックチェーン技術を活用し、大がかりな開発工程なしでセキュアに連携

事業者間同士の情報連携に、ブロックチェーンの技術を使われているわけですね。
さまざまな事業者間で情報連携するのはなかなか大変です。
鉄道事業者内のグループだけでも、鉄道以外にもホテル、百貨店、バスなど、さまざまな事業があります。また、事業ごとにもともと持っていらっしゃるシステムがあり、システムごとにICカードやQRコードといった、さまざまな媒体の利用が想定されています。そのシステム同士を連携する部分を日立が担当します。システムをつなぎ合わせる方法はいくつかありますが、今回はできるだけ早く情報連携したいというご要望を想定し、ブロックチェーンを応用し迅速にサービスイン可能なコラボサーバーによって情報連携する仕組みを作りました。
ブロックチェーンを選択されたのはどのような理由からでしょうか。
あくまでもブロックチェーンありきではなく、いくつかあるオプションの一つとして、今回はそれが最適だったということです。

お客さまそれぞれが持っているシステムはさまざまな背景で作られており、簡単に手を入れられるものではありません。しかし、新しいサービスは実施したいということで、既存システムになるべく手を入れないシステム構成としてHyperledgerというブロックチェーンの基盤を活用し、お客さまのシステムにアドインできる形で実現しました。

近年、鉄道系事業者は、Mobility as a Service、 MaaSと呼ばれるサービスに対する感度が上がっていて、鉄道事業の領域は鉄道だけで収まるものではないと考えておられます。

モビリティとしてバスの連携、タクシーの連携。さらには街づくりなどへと伸ばしていきたいという要望もありますので、公共性という視点も含めてさらに開発を進めているところです。
これは他のいろんな業種にも応用できそうですね。
そうですね。ブロックチェーンなら、既存のシステムを共通のルールのもとで連携できますから、交通系サービスに限らず、さまざまなコラボレーションでお互いの利益を生み出せると思います。
ありがとうございました。



関連リンク

Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO

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