森ビルと日立がエネルギー管理サービスをSaaSで提供
テナントごとにエネルギー利用の“見える化”を実現
【課題】
これまではビルのテナントごとのエネルギー使用状況の把握が困難で、一体的な取り組みに限界があった。
【解決】
森ビルが長年にわたって培った環境配慮型のビル運営ノウハウと日立のクラウド技術を融合し、SaaS型の「テナントエネルギーマネジメントサービス」を開発。2012年4月より提供を開始した。
【効果】
各テナントがエネルギー使用状況を“見える化”できるほか、省エネ法などに対応した報告書作成も効率的に行えるようになった。
森ビル株式会社 Webサイトを見る
[所在地] |
東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー |
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[設立] |
1959年6月2日 |
[事業内容] |
「都市を創り、都市を育む」を社のビジョンとして、従来の価値観や基準にとらわれないで発想し、提案し、対話し、意見を聴き、まとめ、実現へ結びつける総合デベロッパー。 |
選ばれたポイント
Point1 エネルギーの“見える化”でビル全体の省エネ活動を支援
六本木ヒルズなどを運営する総合デベロッパーの森ビルは、都市と自然との共生を図る「Vertical Garden City(立体緑園都市)」をコンセプトに、持続可能な都市づくりに積極的に取り組んでいます。そこでは、都市の拠点となるビルの環境性能の向上は重要な要素です。「大前提となるのがエネルギー使用状況の“見える化”です。省エネ対策を進めるには今の状況を把握し、改善点を明確にする必要があるからです」と森ビルの武田正浩氏は話します。
そこで森ビルは日立製作所(以下、日立)と共同で、テナントおよびビル全体のエネルギー使用量を“見える化”するクラウドサービス「テナントエネルギーマネジメントサービス」を開発。2012年4月より提供を開始しました。
これは既存の自動検針設備やBEMS(ビルエネルギー管理システム)から詳細データを取得し、Harmonious Cloud(ハーモニアス クラウド)センタで蓄積・自動集計する仕組み。特別な設備を導入する必要がなく、各テナントは電力や水などのエネルギー使用量を様々な切り口で確認できるようになります。
ビル運営会社にとってもメリットが大きく、担当者が個別にテナントごとのエネルギー使用量を集計する必要がなくなるからです。請求書の発行や省エネ法など法令が定める報告書用のデータ提供も容易に行えるようになります。「テナントへのデータ開示のスピードアップと、集計作業の大幅な省力化を実現できます」と武田氏はそのメリットを語ります。
自動検針設備やBEMSのメーカーは問わないのも特長です。また、そうした設備のないビルについては、月次請求データをアップロードすることで利用が可能です。「ビルの設備状況に依存せず、エネルギー使用状況を“見える化”できます」と武田氏は説明します。
テナントごとに省エネ対策のレベルアップも図れます。「例えば、ほかのテナントと比較する『省エネランキング』を活用すれば自分たちの取り組みを検証することができ、省エネ活動に一層弾みがつきます」(武田氏)。総量や原単位などの目標値を月次累計値で管理できる「目標値管理」、デマンド目標値を超過した際に警報を発する「デマンド管理」などの機能も有効です。
Point2 効果の高いシステムを全国のビルに普及させたい
森ビルと日立の協業のきっかけとなったのが、森ビルが2011年5月より運用を開始した「エネルギーWEBシステム」です。これは日立の環境情報収集システム「EcoAssist-Enterprise(エコ アシスト エンタープライズ)」(以下、EcoAssist)をベースに開発したエネルギー管理システム。現在、六本木ヒルズを含む約80棟のビルに入居する約1300のテナントを対象に運用しています。
パートナーに日立を選定した理由について、武田氏は次のように述べます。
「既存の料金請求システム、自動検針設備やBEMSとスムーズに連携できるEcoAssistの機能に加え、豊富な社会インフラの構築・運用を担う日立の実績とノウハウを活用することで、社会的に意義のあるエネルギー管理ソリューションを実現できると判断しました」
柔軟な対応力も大きなポイントでした。森ビルは長年培ったビル運営ノウハウに基づき、使い勝手の改善、フレキシブルな組織構造対応などを提案。画面構成を分かりやすくしたほか、ビル単位やフロア単位での分類に加え、複数のビルやフロアにまたがるテナント情報も集約して管理できるよう改良を促しました。「提案に対して柔軟かつ的確に対応してくれたおかげで、より使いやすいシステムになりました」と武田氏は評価します。
様々な切り口でデータを表示できるため、テナントの省エネ活動も活性化します。「エネルギーの利用状況を“見える化”するだけでなく、積極的に情報をプッシュ配信する“見せる化”、情報を見ることを常態化させていく“見る化”も可能になり、省エネ活動の定着が促進されます。これにより、ピーク時の電力を約30%削減できたテナントもあります」と武田氏は話します。
このシステムを全国のビル運営会社に提供できれば、社会全体の省エネ対策は大きく前進します。―こうした思いから、森ビルと日立が開発・提供したのが「テナントエネルギーマネジメントサービス」です。同サービスには「エネルギーWEBシステム」の提供機能が網羅されています。
Point3 スマートなエネルギーマネジメントで次世代都市の実現に貢献
掛け声だけの省エネ対策は長続きせず、一過性の取り組みに陥りがちです。「『テナントエネルギーマネジメントサービス』を利用すれば、テナントおよびビル運営会社のスタッフ全員で、データに裏づけされたコミュニケーションが可能になります。現場の意識改革が促され、省エネ活動の定着と効果の最大化が期待できます」と武田氏は話します。
なお、同サービスは「平成23年度エネルギー管理システム導入促進事業」の補助金交付対象となっています。高い節電・省エネ効果が評価された形です。
今後はサービスのメリットを広く訴求し、利用拡大を促進。機能強化や品質向上に向けた改善にも積極的に取り組みます。
森ビルは日立とともにサービスの拡販に向けた活動を展開することで、テナントとビル運営会社が一体となった省エネ活動を強力に支援し、スマートな次世代都市の創出に貢献していきます。