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千葉銀行×日立製作所
 リソースを顧客サービスに集中
「電子手形交換」の時代をチャンスに!

2019年6月に全国銀行協会は3年後を目途に電子交換所を設立することを発表。それに伴い、全国の金融機関は紙による手形・小切手での決済(以下、交換業務)から、イメージデータによる交換業務への移行が必須となった。移行にあたり必要となるシステムで、堅確性と効率化の両方をいかに実現していくか。地域金融機関をけん引する千葉銀行は、日立製作所(以下、日立)と協創し、ASPサービスによる電子手形交換サービスの開発に着手した。千葉銀行と日立が、電子交換への移行に伴う銀行事務の革新をどのように実現しているか、見ていこう。

電子化で店舗を「軽量化」
顧客との接点に集中する

松岡 宏明 氏
千葉銀行
事務企画部 部長
松岡 宏明 氏

金融機関は変革の真っただ中にある。環境が大きく変化するなか、いかに顧客との関係を強化するか。1943年の創立以来、本拠地を置く千葉県を中心に、顧客とともに歩む千葉銀行は、中期経営計画(2023年度-2025年度)において「お客さま中心のビジネスモデルの進化」を取組指針に掲げた。証券・資産運用、調査・コンサルティング、リース・ベンチャーキャピタルなどグループ会社と一体となって顧客一人ひとり、一社一社とのエンゲージメント向上を実現していく。

中期経営計画を定めるにあたり、「千葉銀行グループと関わる人々にとって、我々はどのような存在であるべきか」という企業の普遍的な存在意義を役職員で徹底的に議論した結果、「一人ひとりの思いを、もっと実現できる地域社会にする」というパーパスが生まれた。千葉銀行 事務企画部 部長の松岡宏明氏は、その考え方について説明する。

「簡潔に表現すると、『お客さまを深く理解し、お客さまの役に立つ』ということです。現在、銀行とお客さまの接点は、スマホ中心の非対面にシフトしつつあります。一方で、お客さまには『対面で相談したい』というニーズもあります。千葉銀行では、お客さまがニーズに合わせて銀行との接点の手段を選べるように、店舗運営にかかるリソースを軽量化することで運営コストを下げ、リアル店舗の維持に取り組んでいます」

千葉銀行は、店舗における事務処理を受付から後続処理まで完全ペーパーレス化し、顧客と関わる部分以外の業務を、本部に集約することで、全体を効率化させる取り組みを進めている。手形・小切手決済の紙から電子化へのシフトは、全国銀行協会の方針に沿うものであるが、事務省力化により生じたリソースを顧客接点の強化に振り向けるといった一連の施策の1つとして位置付けている。

ソーターレス業務により
コスト削減と効率化を実現

松岡 宏明 氏
千葉銀行
事務企画部 調査役
鈴木 慎一 氏

福嶋 望 氏
千葉銀行
事務企画部 主任調査役
福嶋 望 氏

全国銀行協会は、2022年11月に手形・小切手の「現物を交換する全国の手形交換所」を廃止し、「画像イメージデータを交換する電子交換所」へ移行することを決定した。千葉銀行は、2020年3月に、移行に伴い必要となるシステム対応に関するプロジェクトを始動。千葉銀行 事務企画部 調査役の鈴木慎一氏は、「デジタル化が進むなか、手形・小切手という商慣習は縮小傾向にあり、そこにコストをかけたくないというのが大前提でした」と振り返る。

電子交換所に対応した新システムの導入において、コスト削減・事務効率化の観点で重要なポイントとなるのがソーター機器だ。従来、紙の現物による交換業務では、MICR(磁気インク文字認識)から手形の金額などを読み取るソーター機器が必須だった。従来のソーター機器の活用について、千葉銀行 事務企画部 主任調査役の福嶋望氏は説明する。

「従来は、交換持出と持帰の両方でソーターを使っていました。電子交換になると手形現物の持帰がなくなり、持出金融機関が作成したイメージデータで持帰処理を行うので、ソーターを持帰で使うことがなくなります。また、交換期日前にお客さまから預かった手形の期日管理にもソーターを使用していたのですが、電子交換は交換期日前にも交換持出処理が可能であり、ソーターを使用した期日管理が必要なくなります。その前提で考えると、ソーターのメリットは少なく、そこに高額の投資を行う必要性はないと判断しました」

福嶋氏は現場に出向いて気づいたことがあるという。「交換持出時にMICR印字がなく、ソーターで金額を読み取れない株式配当金領収証や定額小為替証書などの処理が4割を占めていたのです。手作業で対応している状況を見ると、今のやり方を踏襲する意味はないと思いました」。

電子交換へのシステム対応では、当初既存のソーター機器ベンダーと、千葉銀行の営業店システムや基幹システムを担っている日立の2社で検討。千葉銀行は電子手形交換をきっかけに、ソーターレス業務を実現するべく日立の提案を選択した。電子交換において、既存の営業店システムを活用することによる初期投資の抑制もポイントになった。手形・小切手の電子交換という新たな試みを期限内にやりとげるうえで、これまでの実績に基づく日立に対する信頼感が協創のベースとなっている。

千葉銀行が提示する事務要件を
日立のテクノロジーが実装

電子手形交換は国内金融機関にとって初の試みだ。地域金融機関トップクラスの資産規模・収益力を有し、地域金融をけん引する千葉銀行と、高精度のAI-OCRやクラウド活用など日立の技術力がコラボレーションし、成功モデルを提示する。めざすのは、全国の金融機関に向けて交換業務の標準化、事務平準化を実現するASPサービス「電子手形交換サービス」だ。千葉銀行は、手形・小切手決済のノウハウを提供し、事務要件と電子交換で必要となる機能などを日立に提示。日立はそれをテクノロジーで形にしていく。まさに二人三脚のプロジェクトとなった。

営業店システムにおいて日立のイメージデータ処理に関する技術力は評価していたと福嶋氏は話し、こう付け加える。「一緒に検討していくなかで、『こうしたい』という要望をうまく汲み取ってくれたと思っています。例えばOCRを上手に活用することで、チェックなどの作業を効率化するといったことです」。

鈴木氏も続けて説明する。「電子交換では、手形などをスキャンしてイメージデータを作成、センターで金額や持帰金融機関など必要な情報を登録して電子交換所に渡し、交換・決済などを完結するのが基本フローです。電子交換所では、AI-OCRにより持帰金融機関や金額の読み取りが可能となるので、持帰金融機関や金額などの情報を登録する方法に加え、それらの登録作業を省略して、イメージデータをそのまま電子交換所に上げる仕組みも導入しました。株式配当金領収証などにはAI-OCRで読み取れるQRコードが付与されることになりましたので、負荷が大きかった手作業を無くすこともできます。電子交換所には高精度のAI-OCRがあるので、それを活用し営業店とセンターの事務効率化を図ることが狙いです」。

電子交換所と銀行はデジタルのやり取りになる。増えるのは電子交換所から届く通知だ。「例えば不渡りがあった場合、従来は現物(手形)が返ってきました。電子交換になると、『決済ができませんでした』と通知が来るだけです。通知を見逃さないように管理できる機能も作ってもらいました。管理画面で処理していない通知はどれか、ポップアップなどにより一目で分かる工夫を施しました」(福嶋氏)。

金融機関で導入するため、セキュリティの確保は基本となる。日立の電子手形交換サービスは、パブリッククラウドサービスのAWSを利用。電子交換所もAWSを利用しているという事実からも、金融機関が求める信頼性やセキュリティをクリアしていることが分かる。そのうえで千葉銀行のセキュリティポリシーにマッチしているか、セキュリティ部門や情報システム部門に入ってもらい精査したという。

クラウドを活用したASPサービスを使うメリットについて福嶋氏は言及する。「まずは機器導入が不要です。手形・小切手の処理枚数は減少傾向にあります。そのなかでクラウドなら柔軟に対応できるため、コストの最適化が図れます」。

細部にわたるこだわりが
現場での使いやすさを生む

日立の技術支援のもと、接続試験はもとより事務センターにおける運用の訓練も実施。2022年11月、千葉銀行は期日通りに電子手形交換サービスを本稼働させた。交換業務に関わる重要システムとして安定稼働を続けている。導入効果について松岡氏は話す。

「高額のソーター機器を更改することなく撤去し、夜間に手形交換所に持ち出すための事務処理要員の人件費や、手形交換所への手形・小切手の輸送費も削減できました。営業店のさらなる効率化により、お客さま中心のビジネスモデルに向けてリソースの再配分も可能です。また、地域トップバンク10行による国内最大規模の広域連携の枠組み『TSUBASAアライアンス』参加行や、千葉県内の他銀行などでも利用可能です。よいものを多くの銀行でシェアすることで、コストを抑制しつつ、電子交換時代に迅速かつスムーズに対応できます」

TSUBASAアライアンスは2015年10月に発足。地域トップバンクである10の銀行が参加する国内最大規模の広域連携の枠組みとして、独立性を堅持しながらも、各銀行の知見を集約し連携・共同化を深化させている
TSUBASAアライアンスは2015年10月に発足。
地域トップバンクである10の銀行が参加する国内最大規模の広域連携の枠組みとして、
独立性を堅持しながらも、各銀行の知見を集約し連携・共同化を深化させている

システムが変わると使い方も変わる。「電子手形交換サービスを使用するためには、事務手続き、センター運用手順の準備が必須となります。それらのドキュメント類を作成する際、当行単独では見落としや期限に間に合わないリスクもあったので、TSUBASAアライアンス参加行と協業し事務手続きなどを準備しました。互いに協力し合うことでコスト削減や効率化の効果を高められました」(福嶋氏)。

電子手形交換サービスは全国200を超える金融機関が利用する。日立が千葉銀行と作り上げた細部にわたるこだわりが、現場での使いやすさにつながっている。「要件定義では、制度開始後に大きく変わる銀行事務の堅確性と効率化の両方を実現すべく、例えば、AI-OCRで読み取らない手形期日のチェック機能のような堅確性機能、また、金額入力レスでの交換持出のような効率化機能を事務要件で提示し、電子手形交換サービスに実装するようお願いしました。日立は当行の意図を理解し、当初の予定回数を超えた打ち合わせにもとことん付き合ってくれました。現場視点で作られたサービスだから、多くの金融機関に広がったと思います」(鈴木氏)。

電子手形交換サービスの導入は、新制度対応だけでなくクラウド化の足掛かりとなる。「今回AWS上で基盤を作ったという意義は大きい。これをきっかけに他のシステムをAWSに乗せやすくなりました。DXも加速すると思います」(鈴木氏)。

本プロジェクトの意義について松岡氏は話す。「銀行だけでは新たな価値を生み出すことはできません。今回、日立と協創することで、地域金融機関が利用できる付加価値の高いサービスを創出できました。今後もお客さまに喜んでいただけるサービスを提供するために、日立の技術力や知見を生かした提案やソリューションを期待しています」。

日立とともに、地域金融の未来を開く。お客さま中心のビジネスモデルへ、千葉銀行は変革の歩みをさらに進める。

電子手形交換サービス

電子交換所の設立決定に伴い、紙による交換業務からイメージデータによる交換業務への移行が必須となった。電子化に伴い、システム対応が必要となる全国の金融機関に向けて、交換業務の効率化・業務平準化を目的としたASPサービスが「電子手形交換サービス」だ。


電子手形交換サービスの概要

全国の金融機関に対しASPサービスとして同一のアプリケーションをクラウドサービスとして提供することで、各金融機関の要望を取り込んだ安価かつ柔軟なサービスを実現。地域金融機関/信用金庫/信用組合を中心とした全国200を超える金融機関がすでに導入している。導入が進むのには理由がある。

○4つのポイント

1.新規サービス利用の障壁が低く、導入が容易

ASPサービスのため、金融機関で機器の導入やソフトウエアの準備が不要。また1年ごとの更新やオプション機能の要否など、柔軟な契約体系により金融機関の状況に合わせて利用できる。

2.ソーターレスによりコスト削減、事務平準化を実現

紙現物による交換業務では、手形を支払い期日ごとに期限まで保管するソーター機器が必要だった。イメージデータによる期日管理機能によりソーターレス業務を実現。ソーター機器を不要とすることでコストを削減し、繁忙期の事務平準化を図る。

3.金融機関の事務負担軽減

多くの金融機関の運用方法とノウハウを生かすことで、150を超える個別機能の利用可否をパラメータとしてチューニングが可能。各金融機関のニーズに合わせ、手形業務の効率化や要員リソースの最適化を容易に実現できる。

4.クラウドサービスを活用した高信頼性・高拡張性システムの実現

クラウドサービスとしてAWSを活用することで、手形特有の取引量に応じた柔軟な拡張性はもとより、マルチAZ(データセンター群)による高信頼性、FISC(金融情報システムセンター)への準拠など、金融機関が求めるセキュテリィレベルを実現している。

電子手形交換サービス 詳しくはこちら

  • AWS、Amazon Web Servicesは、Amazon.com, Inc.の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
  • QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
  • その他、記載の製品名、会社名は、各社の商標または登録商標です。

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