SaaS型で提供される日立の環境情報管理サービス
「EcoAssist-Enterprise-Light」をAGCグループが導入
2010(平成22)年4月から本格的に施行された改正省エネ法(*1)に代表される、環境にかかわるさまざまな法規制や条例、そして環境経営への対応を図るため、多くの企業では、詳細なエネルギー使用量の把握と管理・報告といった業務負荷の増大に頭を悩ませています。
そこでガラス製造では世界最大手の旭硝子株式会社(以下、AGC旭硝子)を中核にグローバルな事業展開を続けるAGCグループは、国内事業所のエネルギー使用量の集計・管理業務の効率化、可視化を図るため、日立のSaaS(*2)型環境情報管理サービス「EcoAssist-Enterprise-Light(エコアシスト エンタープライズ ライト)」を導入しました。
改正省エネ法や温対法(*3)などの各種届出や環境報告書の作成効率向上を実現するとともに、全社レベルでのリアルタイムな環境情報の共有・活用により、環境経営サイクルを確立するための基盤構築に大きな一歩を踏み出しました。
*1 | エネルギーの使用の合理化に関する法律 |
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*2 | Software as a Service |
*3 | 地球温暖化対策の推進に関する法律 |
旭硝子株式会社 Webサイトを見る
[本社] |
東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル |
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[設立] |
1907年9月8日 |
[従業員数] |
6,330名(単体)、47,618名(連結)(2009年12月31日現在) |
[連結子会社] |
178社(うち海外141社、2009年12月31日現在) |
[業務内容] |
旭硝子株式会社を中核としたAGCグループは、日本・アジア・欧州・北米で事業を展開。ガラスやフッ素化学などのコア技術で世界トップクラスの技術力を誇る。ガラス事業、電子・ディスプレイ事業、化学品事業を中心に、安定性と成長性を兼ね備えたバランスの良い事業ポートフォリオを有している。 |
選ばれたポイント
Point1 改正省エネ法への対応を契機にシステム化を検討
板ガラス、自動車ガラス、ディスプレイ、電子関連製品、化学品などの事業を中心に、ワールドワイドにビジネスを展開しているAGCグループ。ガラスやフッ素化学などのコアビジネスでは世界トップクラスの技術力とシェアを誇り、中核企業であるAGC旭硝子をはじめ、グループ会社は200社以上にものぼります。2008年に策定した経営方針"Grow Beyond"の下、AGCグループは「ガラス技術立社」、「地球温暖化問題に技術力で貢献」、「第2のグローバリゼーション」を施策として省エネ効果の高い断熱複層ガラスや太陽電池の発電効率を上げることができるカバーガラスなどの開発・普及による地球温暖化防止策、幅広い環境保全やコンプライアンスなどのCSR(*4)活動においても積極的な取り組みを推進しています。
「われわれCSR室が担当している業務の中で、近年特に負荷が大きくなってきたのが環境情報の収集・管理です。これまでも環境報告書の作成や、さまざまな省エネ対策、業務改善策を実施するため、国内の100を超えるグループ拠点からExcel® ファイルをメールに添付する方法で情報収集を行ってきました。しかし、すでに施行された改正省エネ法や温対法への対応を図りつつ、環境情報のさらなる有効活用を実現していくには、集計業務の自動化や精度向上を図るためのシステム化が不可欠だと考えたのです」と語るのは、CSR室 環境安全保安統括グループ 統括主幹の五十嵐 則仁氏です。
*4 | Corporate Social Responsibility |
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Point2 SaaS型ならではのスピーディな立ち上げを評価
改正省エネ法により、エネルギー使用量を把握・管理する対象が、工場や事業場などの建物単位から企業全体へと拡大されました。また、事業者としての総量把握だけでなく、エネルギー使用量を削減するための管理基準を作成し、毎月のエネルギー使用量を記録・保管することや、原油換算した集計結果を定期報告する義務も生じてきます。
さらに一歩進んだ企業では、こうした法規制対応を契機に、現在そして将来のエネルギー使用量の「見える化」を図り、PDCA(*5)に沿った全社的な環境経営サイクルを確立させていくことも志向しています。そのためには、自社やグループ企業の環境関連データを迅速かつ正確に収集・蓄積し、多面的に分析・評価するためのデータベースシステムが不可欠となります。
「そうした数々の要件に合致したソリューションとして選定したのがEcoAssist-Enterprise-Lightでした。同様のシステムを自社構築しようとすれば、どうしても多大なコストと長期の構築期間を覚悟しなければなりません。しかしSaaS型のEcoAssist-Enterprise-Lightなら、新たなハードウェア導入や構築コストもかからず、非常に短期間で本稼働させることができます。環境情報管理システムで長年の実績を持つ日立さんのサービスなら信頼性にも不安はなく、安心して使えると判断しました」(五十嵐氏)。
*5 | Plan-Do-Check-Action |
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Point3 環境パフォーマンス情報をWeb経由で収集・集計
日立のEcoAssist-Enterprise-Lightは、パッケージソフトで実績のあるEcoAssist-Enterpriseの機能とコンテンツを、スピーディかつ低コストに導入できるSaaS型サービスとして提供するもので、複数の事業所・拠点などから入力された電力使用量やガス使用量などの環境パフォーマンス情報をWeb経由で収集・集計し、本格的なデータベースシステムで一元管理することができるソリューションです。
入力された情報の集計結果や拠点ごとの目標値などは、経営者や管理部門がWeb画面でいつでも確認できるほか、CO2排出量なども自動計算されるため、改正省エネ法や各種法規制への対応で必要となる定期報告書用のデータ抽出も容易に行うことが可能です。
企業全体の環境データを網羅的に管理できるシステムにより、全社レベルでの「見える化」を実現し、お客さま企業のさらなる省エネ化の推進と「環境経営」への取り組みも支援していくのがEcoAssist-Enterprise-Lightの大きなコンセプトとなっています。
Point4 使いなれたExcel®入力方式でのサービス導入を実現
AGCグループではサービス導入にあたり、従来どおりのExcel®入力方式を採用しました。
「当初、SaaSというサービス形態では、お仕着せの入力方式しか選べないのではという懸念がありました。しかし話を聞いてみると、EcoAssist-Enterprise-LightではWeb入力方式のほか、Excel®による入力もサポートしていることを知り、安心しました」と振り返る五十嵐氏。AGCガラスカンパニー 日本・アジア事業本部 CSR室 環境安全グループ 主席の武政 康史氏も、「エンドユーザーの立場からすると、これまでと同じExcel®ベースで入力作業を行えるのは非常に大きなメリットです。今回は選定からわずか2か月ほどでの本稼働となりましたが、現場に混乱を与えることなく、スムーズに導入できたことが何よりもうれしいですね」と語ります。
EcoAssist-Enterprise-Lightでは、多くのお客さまが使いなれたExcel®シートからWeb経由でのデータ登録や集計を実現しています。各拠点の担当者は、Excel®シートに直接エネルギー消費量などの数値を入力するだけで、インターネットを介して日立が管理するデータセンター内のデータベースに環境情報が入力・蓄積されます。入力/出力シート双方で、日立が提供する標準シートがそのまま使えるだけでなく、業界あるいは企業特有の入力/出力項目を追加するといった、お客さま独自のカスタマイズも可能。このため、既存業務との親和性を確保しながら導入と運用を容易に実現することができます。
「AGCグループでは従来から、1つのExcel®シート上でエネルギーと温暖化ガスをまとめて入力・集計する方法を採用していました。そこで今回も、改正省エネ法や温対法で要求される、CO2やメタンなどの温室効果ガスの数値を一緒に書き込めるようにカスタマイズしていただきました。SaaSという形式にもかかわらず、これまでの使い勝手を変えたくないというニーズにも応えていただいたことに感謝しています」(五十嵐氏)。
Point5 多様な切り口で情報分析が行えるEcoAssist-Enterprise-Light
EcoAssist-Enterprise-Lightの導入により、AGCグループでは国内拠点におけるエネルギー使用量の把握と集計をスピーディに実現できる環境を、わずか2か月で整備することに成功。同グループは、グローバル規模での自律的かつ迅速な事業運営体制を確立するため、「ガラス」「電子」「化学品」に分かれたカンパニー制を導入しており、それぞれに属する多種多様な企業や組織を対象としたエネルギー使用状況の集計・分析についても、高度なデータベース機能の活用で、さまざまな切り口で迅速に「見える化」できるようになりました。このため、改正省エネ法と温対法への対応で求められる複雑な管理業務や各種届出の負荷軽減はもちろんのこと、社内外のステークホルダーに向けたグループ単位、会社単位での環境報告書の作成、情報公開のスピードアップにも貢献するものと期待されています。
「これまで特定の組織や製品ごとの環境負荷を算出するには、細かな手作業に頼るしかありませんでした。しかし今後は、カンパニーや組織、製品、さらには生産ライン別といった視点から各ステージでの環境負荷がリアルタイムに可視化できるようになり、管理精度の向上に大きく寄与するものと考えています」と語るのは、AGCガラスカンパニー 日本・アジア事業本部 CSR室 環境安全グループ 主幹の工藤 透氏。続けて武政氏も「CSR室では、環境負荷軽減に向けた各組織の目標設定や実績を数か月単位でウォッチしながら実活動へフィードバックさせてきました。今後はその進ちょく状況が、より短いタームで確認できるので、従来以上にタイムリーな支援が行えるものと思います。また自動車ガラスを例にすれば、現在はカーメーカーさまでも、そのクルマ1台を作るのにCO2をどれだけ排出したかといった情報を各企業で集計する作業が本格化しています。そうしたお客さまニーズに迅速、的確に応える情報提供を実現できるという意味でも付加価値の高いツールとなります」と笑顔を見せます。
Point6 製品ライフサイクルの評価・改善にも活用
AGCグループは経営方針"Grow Beyond"の中で、生産プロセス、環境商品開発の推進による地球温暖化問題への技術力での貢献を宣言しています。そこでは、複層ガラスの中空層側に熱放射を遮断する特殊金属膜をコーティングすることで、通常の複層ガラスよりも断熱性能を高めた「エコガラス」や、太陽電池の発電効率を上げることができる「太陽電池用カバーガラス」などに代表される高度な技術力の継続的な進化が重要なカギを握ることになります。
「EcoAssist-Enterprise-Lightのデータベースや分析機能を活用することで、こうした製品ライフサイクルの環境負荷をさらに精査し、軽減目標の定量的な評価や改善策に活かしていくことが次なる目標です。LCA(*6)の観点からも幅広いデータを網羅的に管理・活用できるシステムは、カーボンニュートラルをめざす企業にとって不可欠な基盤になると考えられます。そのため今後は、海外拠点のデータもシームレスに取り込め、一元管理できるような機能強化を日立さんにお願いしたいと思います」(工藤氏)。
ガラスと化学の技術融合による高付加価値製品や素材の開発・提供を通し、グローバルな視野での地球温暖化防止に貢献するAGCグループ。持続可能な社会の発展をめざす同グループの躍進を、これからも日立はEcoAssist-Enterprise-Lightのさらなる機能強化と関連ソリューションの拡充によって、力強くサポートしていきます。
*6 | Life Cycle Assessment |
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導入したサービス
SaaS型環境情報管理サービス「EcoAssist-Enterprise-Light」
企業のエネルギー管理や、法対応を支援し、環境負荷を見える化、法定報告書作成や企業の省エネ推進、さらには、エネルギーだけでなく環境情報を一元管理し、企業の環境マネジメントも支援します。また、昨今の電力不足や電気代の値上げがあり、多拠点のデマンドデータを収集・一元管理し、企業全体の集計、削減効果の見える化により、企業の省エネ・省コストをサポートします。
* | お客さまの導入時期によりサービス内容が異なる場合があります。 |
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