VMware vSANによるHCIソリューションで、スケールアウトの容易な仮想化基盤を構築。
導入時のリードタイムを短縮し、将来の増設への不安を払拭。
山形県のリーディングバンクとして地場の経済を支え続ける、株式会社 山形銀行。県内70店舗・県外11店舗*1を展開し、メインバンク取り引き社数*2で県内トップを誇ります。2013年、乱立していた物理サーバの運用効率化を図るため、日立の「かんたん仮想化モデル」で業務システムを仮想化集約した同行ですが、その後、間近に迫るリソース枯渇への対応が困難になるリスクが顕在化しました。その解消を目的として同行が日立から導入したのが、VMware vSAN™をベースにし、拡張性に優れた仮想化基盤、HCI (Hyper-Converged Infrastructure)でした。この新基盤は、2018年3月から一部システムを載せて稼働をスタート。導入時のリードタイム短縮を実現するとともに、同行が抱えていた将来の増設への不安を払拭するなど、さまざまな効果を発揮しています。
*1 2018年8月現在
*2 東京商工リサーチ調べ(2017年)
導入環境(日立のHCIソリューション)
株式会社 山形銀行
システム企画部 調査役
鈴木 哲也 氏
明治29年(1896年)に創立され、現在、山形県内70店舗・県外11店舗を展開している株式会社 山形銀行。メインバンクとして取り引きしている企業数で県内トップを誇る、山形のリーディングバンクです。県内の企業や個人預金者との取り引きのほか、近年は地場の経済活性化に向けて、研究開発型企業の集積地「インキュベーションパーク」の構築をはじめ、医療・介護、農業、環境の3分野への融資のほか、県外企業の誘致、創業支援などに積極的に取り組んでいます。
同行が日立製作所、日立ソリューションズ東日本から統合サーバを導入したのは2013年。現在、山形銀行システム企画部の調査役を務める鈴木哲也氏は当時をこう振り返ります。
「約150に及ぶ業務システムを使用していた当行では、乱立する物理サーバの運用効率化が喫緊の課題となっており、我々の身の丈に合ったコンパクトな仮想化のしくみを短期間・低コストに導入する必要がありました。そこで日立さんにご提案いただいたのが、『かんたん仮想化モデル』でした」。かんたん仮想化モデルとは、共有ストレージを用いてサーバを仮想化集約し分散系システムの一元管理を実現する基盤を、あらかじめ設計構築した状態でお届けするものです。
こうして2013年4月に仮想化基盤を導入し、当面の課題を解決した同行でしたが、導入から4年目の2017年、いずれ来る“リソースの枯渇”という新たな課題に直面していました。
「仮想化対象のシステムを年々増やしていったことでバックアップに時間がかかってしまい、ジョブが所定の時間に終わらず、朝の業務開始に間に合わないという事態が起きていました。日立さんにバックアップ方式を見直していただいたことでその問題は解決されましたが、ゆくゆくは大々的なリソースの増設が避けられなくなると感じていました。さらに、共有ストレージの保守期限が2019年に控えており、そのリプレースのコストもいずれかかってくる。不安の種は尽きませんでした」。
やがて鈴木氏は、仮想化基盤そのもののリプレースを視野に入れるようになります。「将来にわたり容易に拡張できる新たな仮想化基盤を、我々は必要としていました」。
そして、複数のSIerの提案のなかから最終的に選定されたのが、日立でした。
日立が山形銀行に提案したのは、HCI(Hyper-Converged Infrastructure)方式による仮想化基盤を、プライベートクラウドとして利用するという形態。共有ストレージ筐体を必要としないHCIは、各物理サーバの内蔵ストレージを仮想的な一つのストレージとして利用するしくみです。日立のHCIはVMware vSANをベースとしており、その最大の特長はシステム移行とリソース拡張の容易さにありました。
「日立さんは、10年後を見据えた提案をしてくれました」と、鈴木氏は選定に至った理由を語ります。「今後のサーバ増設やリプレースを柔軟に計画できるので、乱立するサーバをより仮想化集約しやすくなります。実は、他のSIerからはパブリッククラウドの提案もあったのですが、10年スパンで考えると当行で保有するプライベートクラウドのほうが低コストですし、セキュリティポリシーの面で我々の意図どおりにシステムを構築できる点も大きかったですね」。
この仮想化基盤には、日立の統合バックアップ管理ソフトウェア、JP1/VERITAS NetBackupを採用。初回のフルバックアップと日々の増分バックアップだけで済むNetBackup Accelerator機能により、バックアップ時間を大幅に短縮できます。さらに鈴木氏は「ネットワーク経由でバックアップを行うVMware vSANにサードパーティーのバックアップソフトウェアを組み合わせることで、ネットワーク負荷を高めることなく安全にバックアップできています」と高く評価します。
「当行のITシステムを熟知し、急な不具合にも迅速に対応してくれた日立さんには、もともと厚い信頼を寄せていました。それに加え、日立さんとヴイエムウェアさんは長年にわたる協業関係にあり、その安心感も選定の決め手になりました」と鈴木氏。こうして2017年10月、HCI方式の新たな仮想化基盤の導入プロジェクトがスタートしました。
新基盤導入プロジェクトの始動後、日立の「基本と正道」に基づいた基本設計、詳細設計、構築・テスト、移行といった工程を経て、山形銀行の一部のシステムが新基盤で稼働を始めたのは、2018年3月のことでした。
「もともと、債権業務に使う新しいシステムを3月から稼働させることが決まっていたので、2月中には新基盤の導入を間に合わせる必要がありました。キックオフから実質5か月というタイトなスケジュールにもかかわらず、無事3月に稼働させることができ、ほっとしています。新たなストレージ筐体を必要としないHCIである点も大きかったですし、なにより、当行のシステムを知り尽くした日立さんだからこそできたことだと思います」と、鈴木氏は振り返ります。
この仮想化基盤は、VMware vSphere®が提供するVMware vSphere® High AvailabilityやVMware vSphere® vMotion®といった機能によって高度な可用性を確保するとともに、ワンストップサービス「日立サポート360」で安定稼働を支援し、障害からの迅速な復旧を実現するもの。同行では、2018年5月時点で3つの業務システムが新基盤上で稼働しており、2019年度中までに20システムの移行が予定されています。完全移行後に向け、鈴木氏は声を弾ませます。
「移行前はストレージと仮想化環境の管理ツールが異なっていたため、運用効率の低下を招いていました。しかし、VMware vSANを用いた新基盤では管理ツールがVMware vCenter Server®だけになったことで、管理の負荷が格段に軽くなりました。また、日立さんに新基盤のバックアップ性能テストをしてもらったところ、移行前と比べてバックアップ取得時間を最大1/40に短縮できていることがわかりました。これは大きな改善です。さらに、リソースを増設する際のリードタイム短縮も見込めますから、導入前に抱えていたリソース不足に伴う設計負担の心配からも解放されます。この先、いつ増設することになるのか、楽しみにすら思えます。日立さんに任せていれば安心ですね」。
山形銀行では、2018年4月にシステム企画部が誕生。オープンAPIやFintechへの対応を視野に入れた、新分野へのシステム投資の動きが加速しようとしています。「当行は、新たなICT技術を積極的に取り入れることで、お客さまの手続きや事務手続きを簡素化し、お客さまのニーズを迅速に満たすサービスを、さまざまなチャネルから提供しようとしています。その土台となるのがシステム基盤です。新たなリスクや脅威に対応し、安定したシステム稼働を継続するために、これからも日立さんからの斬新な提案をお願いしたいですね」と、鈴木氏は大きな期待を日立に寄せています。
県内70店舗・県外11店舗を展開。 2018年4月から3か年に及ぶ「第19次長期経営計画」では、収益力の強化、お客さま本位の営業強化に加え、地方創生への取り組み強化を重点課題に指定。「県内GDP2,000億円」「新規雇用2.7万人の創出」を目標に、研究開発型企業の集積地「インキュベーションパーク」の構築をはじめ、医療・介護、農業、環境の既存成長3分野への融資のほか、県外企業の誘致、創業支援などに積極的に取り組んでいる。
所在地:山形県山形市七日町三丁目1番2号
創立:明治29年4月14日
従業員数:1,303名(2018年3月末現在)