2018-01-26
日本有数の総合デベロッパーとして知られる三井不動産株式会社(以下、三井不動産)は「その先の、オフィスへ」というコンセプトのもと、既成の概念にとらわれない革新的なオフィス空間やサービスの創造に取り組んでいます。その発想と実践を加速するため、三井不動産 関西支社は、日立の価値協創手法「Exアプローチ」を採用。関係者全員のアイデアや想いを効果的に引き出し、将来に向けたサービスの方向性を導き出すことに成功しました。
三井不動産にとって、オフィスビル事業は創業以来のコアビジネスです。三井不動産では働く人、テナント企業、地域をつなぐ場としてのオフィスビルに新しい価値を提供するべく、「その先の、オフィスへ」というコンセプトのもと、全社を挙げた先進的かつ革新的な次世代オフィスの創造に取り組んでいます。
関西圏において中之島三井ビルディング、淀屋橋三井ビルディングなどのオフィスビル事業を展開している関西支社では、次世代に求められる新たなサービス創出を加速させるため、日立のExアプローチを採用しました。
その理由を関西支社事業二部 事業グループ長の山下 寛氏は「今までにない新しいサービスを生み出していくのは想像以上に難しい作業です。メンバーどうしでいくら話し合っても、アイデアの発端は浮かぶものの考え抜く時間がない、突き抜けるようなアイデアが出てこない ―プロジェクトを担当する同僚から、そんな悩みを聞いて思い浮かんだのが日立のExアプローチでした。というのも、私は関西に異動する前、千葉県『柏の葉スマートシティ』の賃貸住宅に入居されるお客さま向けの新サービスを立ち上げた経験があります。そこで当初、社内だけではアイデアがまとまらずに悩んでいた状況を打開し、さまざまな課題の抽出とサービスの具現化を手助けしてくれたのがExアプローチだったのです。“Exアプローチのワークショップ(WS)に参加すれば必ず成果が出ます”と上司に訴え、今回も日立さんの支援をいただくことにしました」と説明します。
「その先の、オフィスへ」の新サービス創出に向けたExアプローチによる協創プロジェクトは2017年7月からスタートしました。「せっかくの機会なので若手に経験を積ませ、刺激を与えたい。サービス提供者以外のお客さま目線からも広くアイデアを募りたい」という三井不動産側の判断から、参加メンバーはオフィスビル事業の担当者だけでなく、総務、用地取得、商業施設の担当者、そしてオフィスビルの運営管理を行う三井不動産ビルマネジメント株式会社の社員からも、若手を中心にさまざまな人財が選抜されました。
日立からは、多くの協創事例で実績を積んだファシリテーター役のデザイナーとコンサルタント、次世代サービスの創出に欠かせないIoTやAI*1 分析の知見を持つデータアナリティクスマイスターが参加し、WS形式による協創を推進。第1回から3回までは「オフィスワーカー」「テナント企業」「地域や社会(関西圏)」へのサービス提供をテーマにWSが開催されました。
その過程では、ペルソナ(仮想のユーザー像)を元にした今後の働き方やオフィスビルに対するニーズと課題の抽出、ある企業のオフィス移転プロジェクトを題材とした総務/経営企画/人事部門という立場からのサービスの発想、大阪都市計画区域マスタープランなどを元にした産業界/学校/官公庁/民間の立場からのサービス検討などが行われ、トータルで110個ものサービスアイデアが創出されました。そして4回目のWSでは、それまでのアイデアの中からIoTやAI活用で実現できる3つのサービスを具体化し、参加メンバーが実際に取り組んでみたい最終的なサービスアイデアの絞り込みが行われました。
WSでは、参加メンバーそれぞれが胸に秘めていたアイデアを積極的に出し合い、毎回熱のこもった議論が展開されました。その想いと情熱は回を重ねるごとに高まり、新サービスの創出という目標の達成だけでなく、将来に向けて自分はいま何をすべきか、どのようにユーザーの気持ちに応えていくべきかという、“社員一人ひとりの仕事に対する取り組み方の意識変革にもつながっていった”と、語った参加者もいました。
三井不動産ビルマネジメント株式会社関西支店長の米持 徹氏は「日常の会議ですと、アイデアを持っている人が主導権を握って話をしてしまいがちですが、今回は議論すべき課題やポイントを日立の方々がバランスよく整理してくださったので、全員が自分の意見を出しきることができました」と高く評価。また事業二部 事業グループの吉岡 良氏は「お客さまの立場に立ってサービスを考えるペルソナ手法が斬新でした。議論の最中にそれぞれの発言が発散しないよう、付せんに書き留めてビジュアルに整理する手法もすばらしく、こうした方法は社内だけでは絶対にできないと思いました」と語ります。
一方、事業二部 事業グループ 主事の佐々木 彬氏は「ふだんの打ち合わせではITの知識がないため空論で終わってしまうようなアイデアも、今回のWSではどの部分でAIが活用できるのか、データ分析でどのような価値をお客さまに提供できるのかという、一歩先の議論が行えたのがうれしかったですね。最終的に有望なサービス案がまとまり、その実行にまで近づけたのは非常に大きな成果だったと思います」と笑顔を見せます。
約3か月にわたったExアプローチによる協創プロジェクトを振り返り、山下氏は「日立チームの皆さんには、それぞれに専門性を持つプロフェッショナルの見地から、各回のWSを通じて、有用な情報提供も合わせて議論の方向性をリードしていただき、皆の想いをしっかりと出しきる場を用意していただけました。これは前回の柏の葉スマートシティのプロジェクトでも感じたことですが、やはり日立のExアプローチでなければ絶対にできないことだと思います。その結果“これは自分たちで作ったんだ”と自信を持って言える、今後の仕事を進めていくうえでのよりどころとなるバイブルを創り上げることができた― 私はそう感じています」と語ります。
現在、三井不動産 関西支社と日立は、一連のWSで得た有望なサービスアイデアについて、三井不動産が保有する各種データを使ってその実効性を分析・検証する、PoC*2(概念実証)の実施に取り組みはじめています。関西発で描いたサービスアイデアを、将来的には全社的なデジタルソリューションとして育て上げていきたいという関西支社の想いを、これからも日立は多様なサービスとITソリューションで力強く支援していきます。
山下 寛 氏
関西支社事業二部 事業 グループ長
佐々木 彬 氏
三井不動産株式会社
事業二部 事業グループ 主事
吉岡 良 氏
事業二部 事業グループ
米持 徹 氏
三井不動産
ビルマネジメント株式会社 関西支店長