地理空間情報の技術で収穫物と圃場をひも付けし、各作業段階で共有。収穫時のムダを排除し、作業効率を引き上げる。
かねてより高齢化が著しい日本の農業。担い手のリタイアにより、農家の規模拡大が進み、大規模化への対応が急がれています。 生産に関わる各作業工程の機械化や省力化、農作業機械の利用効率向上など、大規模化へ対応するためには農業ICTの活用が不可欠です。
いち早く農業ICTを導入した北海道十勝平野のJA士幌町(士幌町農業協同組合)では、小麦の収穫作業においてさらなる生産性向上に取り組んでいます。
JA士幌町農産部農産課課長の仲野貴之氏は語ります。
「小麦の収穫は、コンバインによる収穫→トラックによる運搬→荷受け施設における受け入れという一連の作業で完結します。JA士幌町では、コンバインを組合員間で共有し、収穫や運搬を共同で実施する形態を採っています」。
その一連の作業において、いくつかのムダが生じていたと仲野氏は続けます。
「収穫した小麦をコンバインからトラック、さらに荷受け施設へと受け渡す際に、生産者や品質に関する情報について人手による伝票記入作業を行っていました。人手なのでどうしても誤記入が発生していましたし、荷受け施設の入り口にトラックの列ができてしまい、圃場での収穫作業が滞ってしまうケースも起きていました。ただでさえ小麦は7月下旬から8月上旬の雨が降らない数日間に収穫作業が集中してしまうため、そういった時間のロスは致命傷になりかねません」。
そこで着目したのが、GIS(地理情報システム)とGPSを活用した日立の営農支援ソリューションでした。
日立はまず、JA士幌町の本部にサーバーを設置し、全コンバインのオペレーターにタブレット(スマートフォン)用のクライアントアプリを配布。タブレット画面には、サーバーから送られた衛星画像による成熟度マップと自分の現在位置が表示されるため、的確に収穫作業を進めることができます。収穫後は、トラックの運転手に持たせたNFC* カードをタブレットにタッチするだけで、圃場番号や生産者名、作付作物、作付品種といった情報がタブレットからNFCカードに自動で書き込まれます。さらに、トラックがNFCカードを荷受け施設に提出すれば、情報を間違いなくしかも効率的に受け渡すことができます。この間、JA本部では町内全体のコンバインの位置や収穫作業の進捗をリアルタイムで把握できるため、各オペレーターに収穫や圃場間移動などの的確な指示を出すことが可能です。ソリューション導入後の変化を、仲野氏はこう振り返ります。
「誤記入のリスクを撲滅できたのはもちろん、収穫、運搬、荷受けがとても迅速に行われるようになりました。さらに、全コンバインの現在位置や移動状況の把握が可能になったことで、収穫場所を間違えることにより生産者ごとの出荷実績がおかしくなったり、異なる品種が混入したりするなどの重大な金銭的被害のリスクが低減できました。また、作業のトラブルや遅れをいち早く発見できるので、応援の指示を的確に出せるようになりました。」
「収穫時期の約10日間でトラックが約3,000往復しています。そのたびに収穫時の伝票記入や荷受け時の受付処理の時間を要していましたが、ソリューションを導入したことでコンバインとトラック、そして、トラックと荷受け施設の受け渡し時間が大幅に短縮でき、収穫作業の効率が格段に向上しました。さらに効率化を進めることで、コンバインの保有台数の削減を見込んでいます。そうすれば、さらなるコスト削減が可能になります」と、仲野氏はソリューション導入の手応えを語ります。
今後は全てのコンバインとトラックの挙動、そしてコンバインオペレーターのスキルなどをAIが解析し、最適な収穫ルートを提案することで、作業効率をより高い水準に引き上げることも可能になるでしょう。さらに日立は、AIによる自動運転農機の制御も視野に入れ、ソリューションの改良を進めています。農業のさらなる進化を、日立は「Lumada」で支えます。
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