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    徳永 和朗

    (株)日立製作所 Lumada Data Science Lab.

    担当部長

    半導体技術者としてキャリアをスタートし、LSIの設計開発など日立の次世代モノづくりに携わる。2013年よりAI・ビッグデータを活用したデータサイエンス領域を担当。さまざまな分野のデータサイエンスプロジェクトを多数経験。また、自身のモノづくり現場の経験を活かし、現場へのデータ サイエンス、AI 適用が進められるデータサイ エンティストの育成にも関わる。

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    野宮 正嗣

    (株)日立製作所 Lumada Data Science Lab.

    技師

    システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、金融機関初の生体認証導入など先端技術/AIなどを活用したサービス企画・開発に携わる。業界の異なる多数の組織・企業と共にサービス開発に取り組んだ経験を活かし、顧客協創による社会課題の解決や新たな価値創造に取り組む。

    オープンイノベーションの鍵は“ハブ”機能。
    インテルとのAIハッカソンで見えてきたLDSLの未来とは

    「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)を「CROSS LDSL」の視点から紐解いていくインタビューシリーズ。今回話を聞いたのは、インテルと共同で行ったAIハッカソンの運営の中心を担ったLDSL担当部長の徳永和朗とLDSLエキシビジョンチームを率いた技師の野宮正嗣です。ハッカソンの成果やオープンイノベーション*、LDSLの可能性について語ってもらいました。

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    オープンイノベーション:企業間のコンソーシアムや、産学連携、企業の共同開発を通じて、社会的なインパクトを生むこと

    LDSL×AIハッカソンが拓いたオープンイノベーションの可能性

    ―― LDSLがオープンイノベーションに取り組んでいる理由を教えてください。

    徳永:1つはスピードを重視しているからです。今までの日立は自社の技術やプロダクトを磨き上げて高い信頼を得てきましたが、AIの開発においてはOSS(Open Source Software)を使いこなし、世の中のスピードに合わせていくことも大切なポイントです。もう1つの理由は、特定のドメインでは社外の方が知見や技術を持っているケースがあるため、自社のリソースにこだわらずに外部のパートナーと組むことで価値創出の可能性が高まるからです。

    インテルとは、2020年8月くらいから担当レベルで双方の技術やプロダクトについて意見交換をする中で、お互いの強みを活かしてAIを開発していくと優位性が高められるのではないかとの意見が一致しました。その取り組みの第一弾として、お互いのプロダクト、技術力を活用したハッカソンを開催してみようという話に発展していきました。

    AIを民主化するプロダクトをハックせよ AI Hackathon AIを民主化するプロダクトをハックせよ AI Hackathon AIを民主化するプロダクトをハックせよ AI Hackathon AIを民主化するプロダクトをハックせよ AI Hackathon

    日立 x インテル | AI Hackathon

    2021年6月にオープンイノベーションの創出を目的としたハッカソンを日立製作所Lumada Data Science Lab.とインテルが実施しました。

    ―― AIハッカソンを開催した狙いを教えてください。

    徳永:LDSLがオープンイノベーションに積極的に取り組んでいることを広く知ってもらいたいという思いが根本にあります。AIを実装するためのOSS、プロダクトを提供しているインテルとの組み合わせはAIハッカソンの実施するために一番いい組み合わせだと考えました。日立からはインテルのプロセッサを搭載したIoTゲートウェイやエッジコンピュータ、インテルからはOpenVINO™ ツールキットやインテル® RealSense™ テクノロジーという深度を計測できるデプスカメラを提供いただきました。コンセプトは「AIを民主化するプロダクトをハックせよ」です。

    ―― ハッカソンには日立とインテルで作ったエキシビジョンチームも参加していますが、どのようなプロダクトを開発したのでしょうか?

    野宮:視覚障がい者の方をサポートするユースケースを作りました。コンセプトは「みんなの経験を覚えて、あなたの日常生活を声でサポートする」。具体的なユースケースとしては2つ作りました。1つ目は初めての場所でも音声でサポートできるものです。例えば、初めて行ったところでトイレの場所が分からない方に対して、「ここですよ」と教えてくれるAIを作りました。過去に同じ場所に行ったことのある方や他の場所に行った方の経験をAIに蓄積しておいて、その情報を元に道案内のサポートをする仕組みです。

    もう1つが「あなたの移動を声でサポートする」というもので、危険を知らせることができます。視覚障がいの方が点字ブロックの上を歩いているときに、白杖だけでは人や障害物を認知できずにぶつかってしまうことがあります。そのような場面で「前に人がいるので危ないですよ」と音声で教えてくれるAIを開発しました。こちらも、他の方が過去に経験した「点字ブロック上に人がいてぶつかった」などの情報をAIに記録しておくことで、視覚障がい者の方の移動を声でサポートできるようにしています。

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    あなたの移動を声でサポートする

    日立のIoTゲートウェイやエッジコンピュータとインテルさまのOpen VINOやRealSenseを組み合わせた道案内サポートデバイス。

    ―― 今回のハッカソンで得た知見が今後、他社とのオープンイノベーションの取り組みにも活かせそうでしょうか?

    野宮:エキシビジョンチームでの活動を通じて、あらためて複数社の得意な部分をうまく合わせることが、新たな課題に対する解決策を作っていくために重要だと実感しました。私は以前からオープンイノベーションで他社とプロジェクトを組んで仕事をしていますが、その方向性は間違っていないと確信できましたね。

    インテルのような技術を提供する側の会社とコラボレーションできたのはいい経験になりました。デプスカメラを拝見させていただいたときに、小型かつ高性能なことが分かったので、これは頭につけられるなとイメージできたことがエキシビジョンチームのアイディアの基礎になっています。

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    ―― 今回のハッカソンはすべてオンラインで完結したと聞いています。各チームのプロダクトについてはどのように感じましたか?

    徳永:参加者の方々のレベルが高く、オープンイノベーションの精神を学ばされる場面も多かったですね。今回は100%オンラインでプロジェクトを進め、参加者同士も実際に顔を合わせていません。参加者は日本全国に散らばっていたので、もしリアルな場で開催していたら今回のメンバーは集まらなかったかもしれませんね。全く面識がなく、お互いの技術力が分からないメンバーが信頼をベースにオンライン上でアジャイル開発をしている姿に可能性を感じました。

    また、今年度に学会で発表された最新の内容を活用して、まだ世の中にないソフトウェアを自分たちで短期間に作ったチームもありました。情報としては私たちも把握していましたが、まさかそれをもとにわずか2週間で動くようにしてしまうとは思いませんでした。また、エッジコンピュータという限られたマシンパワーの中で問題なく実装してしまう技術力、発想力には驚かされました。

    ―― ハッカソンを通じてオープンイノベーションの可能性が広がったと感じますか?

    徳永:日立社内での評判も上々でした。「プロダクトにしてみたい」といった評価をもらったチームもあり、実際のビジネスや新たな発想につながりそうです。

    また、外部の皆さまに日立のプロダクト、技術レベルの高さを評価いただいたことで、私たち自身の強みを再認識できました。また、インテルのプロダクトについても、あらたな使い方を知るなどさまざまな発見がありました。オープンイノベーションによって外部からの視点を取り入れると、多くの気付きが得られます。

    ―― わずか2週間で完成度の高いプロダクトができた要因をどのように分析していますか?

    徳永:日立が持っているAI技術だけではなく、インテルが持っているライブラリやソフトウェアを使うと、今までは自分たちで作っていたところが省力化できることも発見の一つです。通常でしたら開発に相当な期間がかかるものが今回、2週間で形にできたので、オープンイノベーションの可能性をあらためて感じました。

    また、日立が提供したハードが安定した品質を保てたことも大きかったと思います。ハッカソン中にトラブルはありませんでしたし、ライブラリやソフトウェアについてもインテルと連携しているのでトラブルなく各プロジェクトがスムーズに立ち上がりました。

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    日立がハブになってオープンイノベーションを推進

    ―― オープンイノベーションで他社とコラボレーションする際に、日立が果たす役割について教えてください。

    野宮:技術面だけではなく、プロジェクトマネジメントの観点でも日立には強みがあります。複数社でオープンイノベーションを行う場合、それぞれの得意なところを組み合わせるだけでは、プロジェクトのためのリソースが足りなくなります。組み合わせると必ず "隙間" ができるんです。

    例えば、技術が得意な会社同士で組む場合、実フィールドに適用するときに隙間が発生します。その部分を埋める役割が必要になってきます。協創の場である「Lumada Innovation Hub Tokyo」(以下、LIHT)もその機能を果たしています。

    徳永:「Lumadaアライアンスプログラム」もオープンイノベーションの推進に大きな役割を果たしています。「技術・ノウハウ・アイデアを相互に活用し、データから新たな価値を創出することで、人々のQOL(Quality of Life)の向上と社会・経済の持続的な発展に貢献する。その価値を循環させ、ともに成長していく」というビジョンに賛同したパートナーに参画してもらい、社会課題に取り組んでいます。そこでデータ分析を活用しDX(Digital Transformation)を推進しているのがLDSLです。今回のハッカソンでその役割の一部分を具現化できたので、今後もハッカソンは続けていって、LIHTも活かしながらパートナーと価値を創出していきたいですね。

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    LDSLができること

    「OT*の知見や業務ノウハウ」と「AI・アナリティクスの先端技術」を掛け合わせることで今までにないデジタルイノベーションを実現します。LDSLではデータサイエンスのエキスパートがシームレスに連携することでビジネスへの新たな価値提供が可能です。

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    OT : Operational Technology

    ―― オープンイノベーションで活かせる日立の強みを教えてください。

    徳永:Lumadaにはお客さまの課題を解くためのソリューション群があります。例えば、製造業では予兆検知や要因分析をしますが、医療などまったく異なる分野や異業種とも組み合わせていきたいです。オープンになっているソリューション事例を使ってハードを組み合わせてもいいですし、業種のドメイン知識を混ぜてもいいかもしれません。

    野宮:新しい価値を作るためにいろんな企業が合わさっていく上で、日立は“ハブ”になれると思っています。2つの企業をハブになってくっつけようとした時に、私たちの対象としている領域は広いので、双方の技術的な観点や、業務的なドメイン知識を活かせます。新しい価値を生み出すための基盤が整っているので、ハブの機能をさらに強化したいですね。

    ―― ハブになるための人財も揃っているのでしょうか?

    徳永:データサイエンティストはもちろんいますし、DXのコーディネーターやお客さまの課題に対して業務をデザインするデザインシンカーという人財もいます。LIHTはそのような人材を集めて課題を解くための拠点にしています。人財の豊富さも日立の強みの一つですね。

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    ―― ハブの機能がポイントになりそうですね。

    野宮:ハブに集まった技術や知見の隙間を埋めることが大切です。今回のハッカソンの例でいうと、AI技術とハードウェアはあっても、実際の利用シーンを想定した環境を構築すること、ユーザーが実際に利用可能な形で稼働させ動作検証を行うためには工夫が必要でした。そういった細かいところを埋めていくことにこだわりたいです。

    徳永:個々がバラバラに持っているために埋もれてしまっているアイディアや技術、プロダクトも、ハブがあれば試しにつないでみることができます。今までは課題が先にあってそれを解きにいっていましたが、まず先に組んでしまうと解ける課題があると考えています。そうすることで、現在の延長線上ではない形で技術開発が進みます。そういった意味でハブの機能は重要で、LDSLが果たせる役割は大きいですね。

    ―― 今後、挑戦したいことについて教えてください。

    野宮:今あるさまざまな技術をフィールドに出していくことに取り組んでいきたいと思っています。過去20年間、グローバルで標準化が進み、それが正しいということをベースに多くの物事が進んできたと考えています。しかし、日本独自の強烈な個性や技術、そこから生まれるものを外に出していくことも必要です。そういう意味でも、皆さんがお持ちの技術をうまく組み合わせてフィールドに提供していくときのハブの役割を果たしていきたいですね。

    そのために、日立はお客さまの課題を正確につかんでいかないといけません。ハブとしていろんな方の協力を得て、それをうまく組み合わせてマネジメントしていくことで課題が解決できると考えています。

    ―― 徳永さんが挑戦したいことも教えてください。

    徳永:挑戦したいのは、社会課題を解くことです。物作りや環境問題などに関心があります。CO2削減をしながらビジネスを継続させることが求められる時代で、SDGsに関連する内容の相談を私たちにいただくことが増えています。

    私は元々半導体の製造をやっていたので、物作りにこだわりがあります。日本の物作りはまだまだ負けていません。日本、そして日立の原点にある物作りノウハウ、知見を活かし、さらにOT知識とAIの掛け算で、既存技術をDXすることで強め、事業環境の変化があってもお客さまのビジネスを一緒に成長させ続けたいです。

    信頼関係をもとに、1つの物をみんなで努力して作っていくことが大好きです。日本が持っている物作りに関するデータ、知見を活用して、産業界を支えていきたいです。今回のハッカソンを通じて、外部のパートナーと組む重要性を再認識しました。今後もオープンイノベーションを推進し、社会課題を解決していきたいですね。

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