「データマネジメントを実施したい」といってもすべてを一度に行うことは困難です。
まずは、早く効果が見えるところからの着手をお勧めしていますが、適用領域が異なると、実施目的や阻害要因すべてが異なってきます。
例えば、素材開発企業の経営企画部から、さらに加速した世の中の変化に追随するためにPDCAサイクルを早く回す必要があり、そのためには経営KPIを早く確認したい。さらにその仕組みづくりに時間をかけたくない。という依頼がありました。
お客さまの事業を確認させていただいたところ、現在は事業別や工場別にシステムが散在していて、どのシステムにどのデータがあるかが整理できていませんでした。
そこで、まず持っているデータの構造・整理を行い、その後KPIに必要な情報のみを吸い上げて加工することを提案しました。
各業務システムを一から作り直すのではなく、必要なデータを抽出しデータマネジメント基盤上でクレンジング・統合して可視化するという、アドオン型のデータレイクシステム構築により、短期間で必要なKPIの確認が可能となりました。
このお客さまからは、短期間で整理・全体像が見えて推進しやすくなったと言っていただけました。
また、カタログ通販から店舗、Webへと販路を広げていったお客さまから、「オムニチャネル時代の戦略を実現するためには、商品・お客さま情報の統合が必要で、お客さまのコンタクト履歴(Webで閲覧されてから店舗で購入されたなど)を一元管理して、販売促進キャンペーンへと繋げたい。」という要望がありました。このお客さまは販路を次々と広げていった経緯により、販路ごとにお客さまや商品の管理を別々に管理されていました。
こちらも、マーケティングツール、顧客管理DB、受注管理システムなど、販売に係るデータが散在していることから、販売プロセスや顧客ステータスに沿ってデータを整理し、その中から“個客”をキーとしてデータを抽出した結果、顧客データを統合し活用できる状態になり、売り上げアップに貢献できました。
このように適用領域によってデータマネジメントの目的、阻害要因と対策が異なってきます。
今回、経営、営業、製造、財務・調達、R&D、ITという6つの領域で、目的・それを実現するための阻害要因と対策を整理してみました。資料をダウンロード可能ですので、ご活用ください。
経営、営業、製造、財務・調達、R&D、ITという6つの領域における目的、それを実現するための阻害要因と対策を整理した資料をダウンロードできます。
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次回は、第二回:データマネジメント導入の入り口は3つある!について語っていきます。
第一回のコラムでは、データマネジメントを行う目的・阻害要因、そして対策を、業務領域別にご紹介しました。
では、実際にデータマネジメントを導入するにあたっては、どこから着手すればいいのでしょうか。
私の経験から、成果を実感でき、円滑にプロジェクトが遂行できたデータマネジメントには、始め方にいくつかのパターンがあることがわかりました。今回のコラムでは、そちらをお伝えしようと思います。
お客さまのご要望に応じて3つのパターンがあげられるのですが、
まず最初は、(1) サイロ化されたデータを横串でさして見たい、というケース。
この場合は、お客さまの経緯・背景・制約条件を考慮して、構想策定・要件定義に入ることで、データマネジメント基盤導入をスムーズに進めることができます。サイロ化された個別業務DBや目的別データを統合し、データ形式を標準化することで、ユーザー部門側でデータをすぐに利用できるようにします。これにより、データ分析による需要予測やサプライチェーンの最適化など、組織・業務領域・システムを跨ったデータ利活用によるDX推進が可能な状態となります。
2つ目は、(2) 古いデータアーキテクチャーのDWHを刷新したい、というケース。
古いデータアーキテクチャーのDWH(Data Warehouse)基盤を抱え、拡張性に欠ける情報系システムのままでは、DB逼迫やバッチ処理での遅延トラブルなどが日常的に発生し、ユーザー部門からの問い合わせや支援要請も増え、要員運用コストの高止まりも続いてしまいます。
このケースは、先ずシステム更改方針策定を行うのですが、現行処理・コストの調査から入り、課題の構造化、根本課題の抽出をふまえて施策検討、方針策定へと進めていきます。ある金融系のお客さまでは、システム更改のイニシャルコストやランニング費を抑えたいというご要望がありました。そこで、拡張性の高いDB製品を採用して機能集約を図るとともに、ETLツール、分析ツールの機能重複を解消し、分析業務部門向けのみにBIツール、統計解析ツールを再配置してライセンスコストを低減させました。また、ユーザーのスキルにあったツールの適正配置で問合せ対応頻度も減少し、情報システム部門・ユーザー部門ともに満足度を向上させ、更にコスト低減につなげることができました。
図解した資料をダウンロード
最後のケースは (3) PoCから発展させたい、というケースです。
「データマネジメント基盤を導入する前に、データ利活用の効果を確認できませんか?」という声が多いのですが、データ利活用を試行する小さい環境から始め、成果を実感しながらPoC(Proof of Concept)後の本番運用に合わせて、環境を拡張していくことをおすすめしています。例えば、販売業務システムからトライアル(手動でデータを取得)を開始し、効果が確認できたら、自動でデータを取得する環境を生成する本番運用に入り、次のステップで物流業務システムのPoCを実施してカバー対象を広げていくイメージです。
あるプロジェクトでは、データマネジメント専用ベンダによる高価なツールの導入計画がもともとはあったのですが、まずはメガクラウドベンダのサービスを組合せてデータマネジメント機能を作り上げ、機能の過不足、効果を検証するPoCを実施し、その後、必要に応じて段階的な機能拡張や新たなツール導入など検討していくという方針に切り替えたことで、自分たちに必要なデータマネジメント機能と、ツール導入の効果を把握でき良かった、とご評価いただいたお客さまもいらっしゃいます。
図解した資料をダウンロード
今回はデータマネジメント導入の入り口として、3つの進め方のパターンをご紹介しました。
詳細を図解した資料をダウンロード可能ですので、ご活用ください。
次回は、第三回:データ活用におけるよくある課題と原因、対策について語っていきます。
今回は、私が数々のプロジェクト経験の中でお客さまから伺ってきた、よくある課題と原因、そして解決策をお伝えしたいと思います。
まず具体的な事例として、組立製造業のお客さまの例をお話します。こちらの会社では、これまでも設計開発情報、品質検査結果、保守情報、センサー情報など、多領域のデータを新機種の開発などに活用してきましたが、各領域のデータシステムがサイロ化されており、データ分析やアプリケーション開発部門は、その都度個別に各データを管理している部門にデータ提供を依頼しなければなりませんでした。
その課題を改善するために、データマネジメント基盤を導入し、いつでも一元的にデータを参照・分析できる環境を構築しました。日立はデータマネジメントの統制をおこなうサービス管理の部分に参画し、データ統制ルール策定やデータ設計に加え、利用部門からの要望を実現するためのデータを取り込む機能や、基盤機能の拡充を容易にするためのアーキテクチャ見直し、データソースアプリケーション管理部門との調整など、さまざまな支援を実施してきました。
この結果、データ提供者からは、「個別にデータを提供することもなくなり楽になった。」また利用者側も「データが一元管理されているので利便性向上はもちろんですが、多岐にわたる分析環境も揃っているので役に立っている。」などのコメントをいただいております。
以上は私の経験の一例となりますが、私がこれまで接してきましたお客さまの抱える課題には、次のような5つのパターンがみられます。
そして、こうした状況に陥っている原因には、下記の点をあてはめることができます。
例えば、(2)の「データ活用場面で手作業や個別対応が多い」という課題に対しては、(a)データそのものが揃っていない、(b)データの所在やデータの作成経緯、品質などがわからない、(c)データを加工するための環境が整備されていない、という原因があてはまるため、該当するそれぞれの課題を取り除くための解決方針を立てることが必要になります。
今回ご紹介しました、原因、課題の一つ一つを改善するための解決方針、そして日立がめざすデータ管理について、詳細を説明し図解した資料を作成しました。
こちらからダウンロードできますので、是非ご活用ください。
よくあるお客さまの課題と主な原因、その解決方針と、日立がめざすデータ管理について整理した資料をダウンロードできます。
資料のダウンロードには個人情報の入力が必要です。
次回は、最終回:データ活用ステップ毎の課題と解決について語っていきます。
データ活用にあたっては、事前調査から使用したデータの保管・再利用の段階まで、各ステップで課題が発生します。
最終回となる今回は、各ステップで発生する課題をピックアップし、解決方針についてお伝えしたいと思います。
図解したリーフレットとともにコラムをお読みいただけるとより分かり易いと思いますので、是非、あらかじめ資料をダウンロードいただければと思います。
よくあるお客さまの課題と主な原因、その解決方針について整理した資料をダウンロードできます。
資料のダウンロードには個人情報の入力が必要です。
まず、データ活用のための事前調査のステップでは、必要なデータがどこにあるのかわからない、また、過去に作成した資料があっても、その際どのようなデータ加工や処理をしたか記録が残っていないなどの、データ管理上の課題が多くみられます。利用データが特定され、データの取得・整形のステップでは、データ利活用といった点で、業務部門など実際の活用部門にはデータ加工の知識がなく、IT部門にその都度依頼をし、データ範囲・項目の見直しにより、データの取得依頼が多発するなど、IT部門の負荷の増大や、手戻りが多く発生しています。業務部門側で入手したデータを自力で加工し、求めるデータを作成できたとしても、手作業による品質に関する問題の発生も懸念されます。
また、データの保管、再利用のステップでは、使用したデータとその加工方法や注意事項を系統的に保管・管理する仕組みとルールがないと、知見やノウハウが共有されずその場限りのデータ活用にとどまるため、常に迅速な意思決定や戦略の変更などへと繋げることができず、スピーディなDX推進を行うことはできません。
日立は、こういったデータ活用における各ステップの課題に対して、幾つかの解決方針を用意しており、
それぞれ、データレイクシステムやデータカタログシステムの構築、データガバナンスの導入支援、データ分析施行環境の構築といったサービスを用意しております。
こちらはインフラ系事業者でのデータマネジメント基盤の構築事例となりますが、各部門で独自に業務システムを導入してきた結果、各システムごとにデータがサイロ化して各所に散在しており、社内のどこにどんなデータがあるのか把握できていないため、データの利活用が進まないという実態がありました。これに対し、各種業務データを収集蓄積して一元管理するデータレイクシステムを構築しました。また、収集蓄積したデータに関する情報の整備の一環として、ユーザーの自由分析に必要となるデータカタログシステムの構築を行い、データを業務の言葉で説明するビジネスメタデータをデータカタログに登録しました。
このデータ蓄積基盤とデータカタログシステムの構築には、データレイクやメタデータの運用管理など最新かつ高度な知見を必要としますが、日立の経験豊富なコンサルタント・データエンジニア・標準WBS (work breakdown structure)活用により、効率的に進めることができました。
この結果、設備機器の保守点検データなどをデータマネジメント基盤へ一元的に集約し、データを素早く集計・可視化・分析ができるようになりました。
今回のダウンロードリーフレットでは、課題解決の方針や日立のデータマネジメントサービスの全体像を図解した資料をご用意しましたのでご活用ください。
図解した資料をダウンロード
これまで4回にわたり、私の経験からデータマネジメントの勘所をご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
今後とも、皆さまがデータを活用したDX型の企業として進化していくためのお手伝いができれば幸いです。
岩渕 史彦(いわぶち ふみひこ)
株式会社 日立製作所 クラウドサービスプラットフォーム事業本部
マネージドサービス事業部 デジタルサービス本部
デリバリ&プラットフォーム部 主管技師
はじめまして。岩渕と申します。ITコンサルタントを約30年間、特にデータマネジメントを約23年間担当し、その中で、約40件程のプロジェクトを支援して参りました。4回にわたりご紹介するコラムの中で、これまでに得た成功/失敗の経験を、皆さまにお伝えすることでお役立ちできればと思っています。よろしくお願いいたします。
ビジネスのスピードが一段と早くなってきた昨今、DX型の企業として、お客さまの持っているデータを活用しビジネスに役立てることをめざして、私は日々お客さまへの対応や講演などをおこなっています。
最初のお悩みで一番多いのはデータマネジメントを行うための組織作り、体制、役割分担・ルール作りなのですが、こちらは、「データマネジメントを一歩進めるための勘所とは?〜解説資料〜(PDF形式)」をご覧いただければと思います。
今回の連載コラムでは、さまざまなプロジェクトの中で感じたお客さまのお悩みをふまえて、いくつかの切り口に分けてお話していきたいと思います。
データマネジメントサービス
データ基盤の構築・データマネジメントプロセスの導入をトータルに支援します
更に加速化するデータマネジメント基盤の導入〜経営情報統合基盤の構築事例でみる課題解決とデータ活用最前線〜(YouTube)
個別対応からの脱却!成功事例にもとづくデータモデルとサービスプラットフォームで利活用を迅速化(Youtube)