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【ブロックチェーンは構想から実践へ】第2回 ブロックチェーンを、もっと安全に、もっと簡単に。

日立製作所
ソフトウェアCoE Blockchain推進部
梅田多一

日立製作所 ソフトウェアCoE Blockchain推進部
梅田多一

ブロックチェーンシステムを迅速に構築するために

B2Bビジネスでブロックチェーンを活用して、高信頼に資産や情報を移転したい。その時、コンソーシアム型の代表的なフレームワークであるHyperledger Fabricが、パブリック型にはないさまざまな機能で想いに応えてくれる。ただそのためには作り込みが必要であり、この新しい技術に馴染みがないシステムエンジニアにとっては骨の折れる仕事になる。

「日立は、ブロックチェーンの協創環境BC Squareが提供する多彩なサービスにより、お客さまのビジネスユースケースの創出からPoC*1までの期間を、従来の約3か月から約1か月に短縮しています。
次はいよいよ実サービスに向けたシステム化へとプロジェクトは進むわけですが、日立はこのフェーズにおいても工程がスピーディーに進むようなしくみを、きめ細かく用意しています。それがリファレンスモデルとライブラリです」と梅田多一は言う。

*1
POC:Proof of Concept

ユースケースのパターンに最適化された
リファレンスモデル

ユースケースのパターンに最適化されたリファレンスモデル

リファレンスモデルについては第1回でも紹介した。
日立は多種多様なブロックチェーンのユースケースを類型化し、ブロックチェーンパターンブックとして11個に整理。そして、パターンごとにHyperledger Fabricをすぐに利用できるテンプレートとして、リファレンスモデルのラインアップ化を進めている。
前回は、パターンに応じて検証環境をスピーディーに用意できるしくみとして紹介したリファレンスモデルだが、もちろん本番環境の構築においても威力を発揮する。

「リファレンスモデルにはすでに基本機能は備わっていて、そのままでも十分実サービスで利用可能なレベルです。お客さまはここに独自のサービス用に機能を追加するわけですが、スクラッチでゼロから作るよりも大幅にシステム化の工程を短縮できます」。

ユースケース共通で使える機能強化のためのライブラリ

さらに日立はブロックチェーンを強化する部品として、ライブラリを用意している。
「リファレンスモデルはユースケースに紐付いた業務テンプレートですが、一方ライブラリは、ユースケースを問わず共通して使える汎用的な部品です」。
つまりどんなユースケースであっても、扱うデータの信頼性を高めたいのであればセキュリティの強化が必要だし、厳密な取引を行いたいのであればトランザクションの一貫性を厳格化する必要がある。こうした機能強化のニーズに応えるのがライブラリだ。
「日立はHyperledger Fabricにすぐに組み込めるプログラムとして、要望の高いものからライブラリを順次開発しています。そのうち代表的なものをご紹介します」。

RAS*2フレームワーク

「障害を検知し代替ノード(Peer)に切り替えるなど、高い可用性を実現するRAS機能を提供。Hyperledger Fabricで提供されるFabric SDKをベースに日立が開発。日立が提供するブロックチェーンシステムには標準搭載され、信頼性を担保する。

*2
RAS:Reliability、Availability、Serviceability

PBI*3認証

生体情報による厳格な本人認証を実現。生体情報をもとに秘密鍵を生成し、使用後には必ず消すことで煩雑な秘密鍵の管理が不要となり、不正入力のリスクを大きく低減する。

*3
PBI:Public Biometric Infrastructure 公開型生体認証基盤

Hitachi Data Hub*4

大量かつ多様のセンサー情報の入力に対応するためのライブラリ。大量のデータを高速に集約、さらに形式を整えて台帳に入力。IoT分野のニーズに応える。

*4
単独で幅広い分野へ適用可能

EADS*5-Orderer

社会インフラで実績のある日立のEADS技術を採用し、不意のシステム障害に対しても、生成されるブロックの一貫性を保証。信頼性の高い取引を実現する。

*5
EADS:Hitachi Elastic Application Data Store

リファレンスモデルとライブラリ

代表的なリファレンスモデル、情報流通システムモデル

いま、お客さまから数多くの引き合いがあるリファレンスモデルが、「情報流通システムモデル」だ。
「これは、日立のブロックチェーンパターンブックの6番『PURPOSE CONTROL』に紐付けられています。
これは、適切なアクセス制御のもと、情報の目的外の使用を制限するユースケースで、具体的には例えば、組織横断的な研究の現場で、実験データを限られた関係者間だけで共有し、データの改ざんも絶対にさせたくない、というような利用シーンが想定されます」。

6番『PURPOSE CONTROL』

6番『PURPOSE CONTROL』

ブロックチェーンはもともと耐改ざん性に優れており、この特徴はそのまま実験データなどの改ざん防止に生かすことができる。
さらにHyperledger Fabricには、B2Bビジネスに対応するために情報の共有範囲を制限するためにさまざまな機能が用意されている。そして「情報流通システムモデル」には、これらの機能がユーザー認証、秘匿化、アクセス制御など実サービスで利用できる形で落とし込まれている。具体的には以下のようなサービスを実現できる。

情報流通システムモデル

・概要

組織間のデータ利活用のために、複数の組織およびコンソーシアム運営組織でブロックチェーンを構成し、データを共有。参加者で共有するのはハッシュ値だから改ざんのチェックは行えるが、データの内容は別組織からは秘匿できる。データ閲覧希望者は申請/承認により見ることができる。

  1. 組織Aの閲覧希望者は、ブロックチェーンに登録された検索用メタデータ(例えば実験名、評価結果、日付など)を利用して、見たい組織Bのデータを容易に発見。
  2. 閲覧希望者にアクセス権があれば、コンソーシアム運営組織にある組織Bのデータを閲覧。各組織は提供可能なデータを運営組織とだけ共有している。
  3. アクセス権がない場合、閲覧希望者はアクセス権申請のワークフローに申請を出し、コンソーシアム運営組織と組織Bの承認を得て、運営組織にある組織Bのデータを閲覧。

「一連のワークフローもブロックチェーンのスマートコントラクトで作られていて、その承認履歴に基づいて自動でアクセス許可を出すなどの動きがすでに実現されています。
また検索用メタデータも、お客さまの取り扱うデータに応じて変更が可能です。情報流通システムモデルは、いくつかのカスタマイズを行っていただくだけで、すぐにご利用いただけます」。

「信頼ある自由なデータ流通」へ

情報流通システムモデルはブロックチェーンの特徴を生かし、情報のオープンな流通、データの改ざん防止、アクセス承認の追跡などを実現し、データ共有と厳格な管理が同時に必要なユースケースでの活用が見込まれる。

「先ほど例にあげた組織横断型の研究現場では、関係者が改ざんのない高信頼な実験データをシームレスに活用しながら、部外者からはデータをしっかり守ることができます。
他にも企業間の調達業務において、改ざんのない仕様データをもとに証跡をしっかりと残しながら適正な取り引きを行えますし、あるいは、さまざまな規格の認証組織が、改ざんのない高信頼なデータをもとに厳格な認証を行うことができます。
お客さまのさまざまな使い方の中で、さらに厳格さを求めるのであれば、ライブラリの『PBI認証』を適用することでデータの登録の際などに、成りすましを防ぐことができますし、社会インフラのニーズに対しては、やはりライブラリの『RASフレームワーク』が高い可用性を支えます」。
このようにリファレンスモデルとライブラリを組み合わせることで、ユースケースに適切なシステムを迅速に構築することができるのだ。

アクセス権申請画面とアクセス権承認履歴の追跡画面(サンプル)

いま経済産業省は、「信頼ある自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)」を提唱し、より豊かな未来づくりに向けてデータの国際的な流動性を高めることの重要性を強調している。ブロックチェーンの「情報流通システムモデル」はこの動きにも応えるものだ。

「データの自由な流通は社会を進化させます。しかしその一方で、企業や市民の利益を守るために厳格な管理が必要です。このジレンマを突破する技術がブロックチェーンです。
『信頼ある自由なデータ流通』を実現したエコシステムの商品やサービスは、快適かつより安全・安心に利用することができ、おそらく市場で大きな強みを手にするでしょう。そのためには、ユースケースの一日も早いビジネス実装が重要になります。
日立がリファレンスモデルとライブラリで実サービスに向けた迅速なシステム化をお手伝いいたします」。

ユースケースの一日も早いビジネス実装を

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