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みずほリースが3ヵ月で全社規模のデータ活用基盤を構築できた理由とは?
プロジェクトの裏側を振り返る

既存システムに影響を与えず、迅速にデータ活用基盤を構築。
日立がOracle製品に自信を持つワケ

リース会社としてみずほフィナンシャルグループ唯一の持分法適用関連会社である、みずほリース。リースや割賦といった「モノ」に関わるファイナンス事業を中心に発展し、現在は法人向け総合金融サービスグループとして国内外で事業を展開している。従来のリースのビジネスで培った金融サービスのノウハウを生かした、新たなビジネスの開発にも積極的だ。しかし今の時代、新しいビジネスにはIT・デジタル技術の活用が欠かせない。同社は、ビジネスの現場がデジタル技術を活用するための新たなデータ活用基盤を、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上に構築することを決めた。そして驚くべきことに、その基盤は日立製作所(以下、日立)の支援を受けわずか3ヵ月という短期間で実現された。

「全社規模のデータ活用基盤」構築を決意した理由とは

みずほリースは、これまでも必要な場面でデータの活用には取り組んできた。とはいえ、様々なシステムが稼働する状況下でデータを活用するためには、「ビジネス現場の人や情報システム部のメンバーが、手間をかけてデータが使えるように抽出・整形する必要がありました」と、同社のデジタル推進部 部長である宮谷伸也氏は話す。そのため、より少ない手間とリソースで全社員がデータを利用できる環境が求められていた。

加えて、様々なデータを統合するデータ基盤の構築も喫緊の課題であった。宮谷氏は、「以前から、基幹系コア業務のシステムから得られるデータを扱う情報系システムはありましたが、それら以外のデータも含め、データを一元的に集約し横断的に分析できる全社規模のデータ活用基盤はありませんでした」と当時を語る。


みずほリース株式会社 デジタル推進部 部長 宮谷伸也氏

なぜ、同社はこれほどデータ活用に課題意識を持っていたのか。それには、昨今の事業環境の変化が要因として存在する。

基幹事業であるリース事業をはじめ、不動産、環境エネルギー、航空機、投資など多様な事業領域を持つみずほリースは近年、総合金融サービスグループの強みを生かした新たな金融サービス・事業の展開に取り組んでいる。しかし、新たなビジネスにおいてはデジタル技術の活用が必須であり、それには有効なデータがなければ始まらないのだという。そのため、企業として新たな価値を創出するためには、統合的なデータ分析基盤がどうしても必要だったのだ。

データ活用の実現と並行して、ITインフラの全面刷新にも取り組んでいる。宮谷氏は、インフラに関するテクノロジートレンドとしてクラウド・ファーストを挙げ、「今後のITインフラはクラウドであることが基本になる」と将来を予測する。

テクノロジートレンドが急速に変化し続けるこれからの時代、企業が独自システムを保持したままその変化に追随していくことは、人材確保の面からも難しい。宮谷氏は、「当社くらいの規模の企業であれば、クラウドサービスをどんどん活用し、可能なところは共通化して効率化を図る。生き残るためには、そういった取り組みが必要です」と語る。

もちろん、クラウド移行にともなうセキュリティリスクの懸念などもあっただろう。しかし同氏は、20年以上にわたりIT業界でビジネスに携わってきた自身の経験から、セキュリティ面はむしろクラウドのほうが安全との見方をしている。そのため、新たなデータ活用基盤もクラウド上に構築していくこととなる。

既存システムに影響を与えず、迅速にデータ活用基盤を構築したい

データ活用基盤の構築プロジェクトは、2022年1月頃から始まった。別途、ITインフラの刷新が進められているため、新旧のシステムが混在する過渡期にあっても、これまでと同じように必要なデータを抽出し活用できる状況にすることが最初の要件だった。

次のステップでは、データを1ヵ所に集約しクロス検索なども容易にする。また、外部データなども取り込み、それらも合わせて柔軟に分析できる環境を構築する。加えて、宮谷氏は「ここ1年で生成AIが登場し、情報系システムの定義も変わったと考えています。今後、生成AIも活用していけるデータの蓄積場所を実現するのも、新たな要件です」と、近い将来の展望を語る。


みずほリースでは、営業系のリース契約や物件管理、会計系の基幹システムがオンプレミスで稼働している。それらの多くでは、データベースにOracle Databaseを採用しており、データベース・リンクやETLなどの機能を用い、システム間でかなり密に連携しているという。この構成では、一部で変更を施すと他システムに何らかの影響が生じる場合がある。

また、同社はシステムごとに構築・運用のサポート体制が異なるマルチベンダーの状況でもあった。複雑なシステム間の構成をひも解き、一からクラウド上に新たなシステムを構成するには、相当の手間と時間がかかる。そのため、新たなデータ活用基盤は、オンプレミスとほぼ同じ構成をクラウドで実現する必要があった。「Oracle Databaseの複雑なシステム環境で、クラウドでもオンプレミスと同様の構成が実現できるとなれば、選択肢はOCIしかなかった」と宮谷氏は話す。

OCIでのデータ活用基盤構築プロジェクトにあたり、まずは既存システムを担当するベンダーに声をかけ、支援を依頼したという。依頼時の要件は、データ活用基盤の構築と同時に、既存システムの性能へ影響が出ないようにすること。よって、パフォーマンスに関連するパラメーターの変更などは不可とした。また、より新鮮なデータを活用するために日次でデータを更新したいが、そのための時間を夜間の5時間以内に収める必要があった。さらに、迅速な立ち上げとスモールスタートのために、小規模なPoC環境から始めて本番環境へスムーズに移行することとし、当然ながらアクセスコントロールなど必要なセキュリティを確保する必要もあった。

これらの要件を満たすには、OCIの環境に精通していること、そして基幹系システムの構成を理解し迅速にクラウド化できる技術・ノウハウを有していることの両方が必要だ。しかし、「OCI以外のクラウドのスキルなら有している。あるいは、構築のスピードを求めなければ可能だとの声はありましたが、両方の要件を満たせるところはありませんでした」と宮谷氏は振り返る。

なぜ日立を選んだのか、プロジェクトのスタートを振り返る

みずほリースでは当時、既存システムの開発・運用においては日立との関わりはなかった。しかし、OCIをはじめOracle製品に関するスキルや知見が豊富であるとのことから、相談してみることに。すると、短期間で実現できるとの回答があり、データ活用基盤の構築を日立に依頼することを決意した。


みずほリースのデータ活用基盤では、オンプレミスのOracle Database 11gベースの各システムから、データをOCIのマネージドサービスであるBase Database Serviceに同期する仕組みとした。日立は、既存システムに影響を与えずにデータを同期するために、いくつかの方法を比較・検討する。今回のプロジェクトでは、既に論理バックアップを取得していたことから、それを活用するOracle Data Pumpを用い同期する方法を検討。机上で検証し、夜間の5時間以内に転送し展開できることを確認した後で、みずほリースにこの方法を提案。採用が決定した。

宮谷氏は、「スピードとOracle製品への知見、そして既存システムを維持しながらのデータ基盤構築という要件に多くのベンダーが難色を示す中で、日立からはすぐに『実現可能』だという回答がありました。それだけではありません。過去の経験や蓄積したノウハウから、『これとこれと、それからこれをやればいけます』という具体的なアプローチのパターンを、最初からいくつも提案いただいたのです。これには驚きました」と、当時を振り返る。

長年Oracle製品を扱ってきた日立は、これまでの経験からOCIへのデータベース移行ノウハウをテンプレート化したスターターパックも有している。だからこそ、みずほリースの高度な要件にも即座に提案ができた。また、スターターパックは、従量課金でスモールスタートにも対応しやすいOCIのBase Database Serviceにも対応しており、あらかじめ外部からの不正アクセスを防ぐなどのセキュリティ対策も含まれている。

日立のノウハウをテンプレート化したスターターパック、OCIに関する膨大な知見、そしてOracle Databaseに対する深い理解や、クラウド移行時の注意点などが合わさり、みずほリースは3ヵ月という驚くべきスピードでデータ活用基盤を構築できたのである。

「3ヵ月という驚異的なスピードで構築できた上、その期間に問題は一切発生しませんでした。また、都度発生する細かい悩みや相談にも親身に寄り添っていただき、我々の譲れない要件を満たした上で実現可能な手法をいつも提案してくださいます。今回のプロジェクトだけでなく、みずほリースの変革に向けた今後の新たな取り組みでも、その豊富な知見と提案力でお力添えいただきたいと思っています」(宮谷氏)


全社規模のデータ活用基盤を構築したみずほリース。宮谷氏は、次のステップに向けた日立との共創にも大きな期待を寄せる。

日立が期待に応えられた理由、それはOCIの知見だけではない

日立には、30年以上にわたりOracle製品を扱ってきた歴史がある。OCIの展開が始まった2019年には、国内でいち早くテクニカルサービスを提供し、Oracle DatabaseとOCI双方の豊富な経験・知識を蓄えてきた。さらに、日立にはもともと金融や公的機関などにおいてミッションクリティカルなシステムを構築・運用してきたSIの知見が豊富に備わっている。

OCI上のデータベースでは、レイテンシーがどれくらいになるかだけでなく、実際のミッションクリティカルなアプリケーション環境で、オンライントランザクションのレスポンスや、バッチ処理の性能がどうなるかが重要だ。日立はそういったところまでOracleと共同で検証し、実践的なノウハウを蓄積している。

また、日立は、OCIとMicrosoft Azureの環境における処理性能や可用性について両社で共同検証し、その結果を Qiita で公開している。このように、OCIはもちろんAzureやAWSなどもサポートし、マルチクラウドやハイブリッドクラウドに対応できるのも強みだ。たとえば、みずほリースの場合、クラウドのメイン利用がAzureであるため、OCIとAzureの組み合わせでどのようなことが実現できるのか、今後はそのあたりの技術的なアドバイスも日立には期待される。

これらの日立のノウハウを注ぎ込み、迅速かつ信頼性の高いクラウドへの移行を実現するスターターパックのテンプレートは、半年以上の時間をかけて設計・開発され、クラウドの進化に合わせて最新状況に対応できるよう、継続的に更新されて続けている。スターターパックでは、要件の確認から設定に落とし込み、それをもとに一連の処理がテンプレート化されている。たとえば、要件のヒアリングシートも標準化されており、それを使って得られた結果から、自動的にOCIのデータベースの最適なパラメーターなどが導き出せる。

ただ、それだけで短期間での構築は実現できない。一般的にミッションクリティカルな基幹系システムというのは、それが安定しているのであれば極力手を入れたくないものだ。とはいえクラウド化すれば、そこに新しいOCIの要素を取り込み最適化する必要も出てくる。OCIの技術的なトレンドを把握し、バージョンが古くても適用できるものを適宜選択する、柔軟な対応が必要だ。

OCIを利用する企業には、Oracle Databaseを基幹系システムで利用しているケースが多い。そのため、そこからデータを取り出し、クラウドに移して活用したいという要望も多い。これをスムーズに実現するためには、OCIだけでなく基幹系システムのOracle Databaseを熟知している必要があり、ここが外せないポイントとなる。

オンプレミスでの安定したミッションクリティカルシステムの構築と運用実績に加え、クラウドでのノウハウを活用し、迅速性や柔軟性といった特長をうまく組み合わせる。これら両方のノウハウが日立にあるからこそ、今回のような迅速な構築が成し遂げられた。もちろん裏側では、前述のOCIとAzureの共同検証のように、基幹系システムをどう最適にクラウドで動かせば良いかの検証を常に行っている。

基幹系システムのクラウド化では、顧客から細かい要件が出てこなくても取り入れるべきことがたくさんある。スターターパックは、それらを意識したヒアリングシートにもなっており、その上で運用を意識したところまで配慮がなされている。

みずほリースでは、情報系のシステムをOCIにオフロードできたことで、本番システムに影響を与えず、柔軟に複雑な分析処理などが可能な基盤が得られた。現状、同社はこのOCIのBase Databaseの環境に、Azure上のツールからアクセスし利用している。今後は、今回の基盤をベースに、データを一元的に分析できる環境、そして外部のデータも取り込める環境に進化させるという。その際には、OCIのAutonomous DatabaseやExadata Database Serviceなどの活用も考えられ、日立は要件に応じこれらを提案する。既にこれらもスターターパックに対応しているため、採用が決まれば迅速かつ信頼性の高い構築が可能だ。

また、みずほリースは生成AIの活用も視野に入れているが、これも新しいOracle Database 23aiの利用でスムーズに実現できるだろう。日立はOracle Database 23aiについても、AI機能の検証をいち早く行っている。今後は、このソリューションをどのように活用していけばよいか、日立社内のAIセンターなどとも協働して提案することになる。最新のOCIとOracle Databaseの良い部分に、日立はいち早く追随しているため、みずほリースに対しAI活用の面でもより良い提案が素早くできるはずだ。

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