日立の「開発環境クラウド提供サービス」で国内外のリモート開発環境を再構築
業務のデジタル化が加速するなか、外部環境に影響されず迅速な商品・サービス開発が継続できるバーチャル開発環境のニーズが高まっています。そこで三井住友海上プライマリー生命保険株式会社(以下、三井住友海上プライマリー生命保険)は、開発パートナーのIT環境をクラウド上に構築し、国内外からリモートでアクセスできる日立の「開発環境クラウド提供サービス」を導入。開発規模の柔軟な増減やパンデミック対応、IT/不動産コストの削減などをトータルに実現しました。
MS&ADインシュアランスグループにおいて国内生命保険事業の一翼を担う三井住友海上プライマリー生命保険。同社は、次世代への円滑な資産承継に向けた生前贈与・相続の手段として、また超高齢社会を支える資産形成の手段として、今後ますます需要が高まると予想される個人年金保険に特化した事業を展開する、業界のリーディングカンパニーです。
「当社は業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進しながら、多様化するお客さまニーズに応える商品・サービスの迅速な開発、健全で適正な業務運営に取り組んでいます」とIT推進部長 沖元 宏樹氏は語ります。
その競争力の源泉となるITシステムは、グループ全体の保険システムを開発・運用するMS&ADシステムズ株式会社(以下、MS&ADシステムズ)の指揮のもと、日立をはじめとする6社のベンダーが、データセンターのリソースを、都内ビル内に用意された開発オフィスからリモートで活用・開発する形となっています。
「この環境では以前からリモートデスクトップなどを利用した在宅化と、オフショア開発を行ってきました。しかし各社で開発環境が異なり、接続先も3つに分散していたため、環境ごとの契約・端末管理の工数やコストが大きな課題となっていたのです。リモート開発できる工程も、データセンターと開発オフィスの帯域制限から、内部設計や単体テストに限られていたため、総合テストまで行える一元的な環境をクラウドで再構築できないかと考えていました」とMS&ADシステムズ グループ長 上野 紀久氏は振り返ります。
構想検討は2017年に始まっていましたが、国内外からの一元的でセキュアなアクセス、開発環境の柔軟な増減、マルチベンダー対応といった要件に見合うクラウドがなかったため、プロジェクトが先送りされていました。その過程で2019年末に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生したため、リモート開発の急増に対処するべく、MS&ADシステムズは日立とともに総合テストまで行えるリモートデスクトップ環境を暫定整備し、急場をしのぎました。そして3年にわたる試行錯誤の末、すべての要件を満たすシステムとして日立が新たに開発・提供したのが日立の「開発環境クラウド提供サービス」でした。
「新型コロナ対応で作った基盤は事業継続に主眼を置いたため、拡張性やレスポンスに限界がありました。それを日立さんがブラッシュアップし、われわれが描いていたグランドデザインのもと、サービスという形で再構築してくださったのです」と、MS&ADシステムズ マネージャー 小林 猛氏は説明します。
MS&ADシステムズがファーストユーザーとなった日立開発クラウドサービスは、Microsoft Azure上に接続場所やデバイスを問わないセキュアな開発環境を用意。お客さまやパートナーベンダーは開発インフラを用意することなく、柔軟なリソースの増減、全体の運用管理、多要素認証によるセキュリティなどを、すべて日立がサービスとして提供します。
「日立さんのサービスは従来システムと比べて1VMあたりのコストが低く、費用対効果にも優れていました。また当社のIT基盤を熟知されており、オフショアや既存オンプレミス環境へのセキュアで透過的なアクセス、現行AD(Active Directory)サーバーのクラウド連携などでも綿密なフィージビリティスタディを行ってくださり、安心してお任せできると考えました」と小林氏は続けます。
2021年5月にキックオフした構築プロジェクトでは、安全な切り替えとコストメリットの最大化を図るため、6ベンダーを3つのフェーズで段階的に移行する手法を採用。新環境では、これまで各社でバラバラだった開発環境がクラウドに集約され、国内外からのリモート接続もDaaSであるAzure Virtual Desktopに一元化されました。
「提供していただいた環境は、われわれが求めていた要件を十分に満たすものでした。コロナ禍になり、当初見込んでいた以上にリモート開発が増えていますが、開発端末をVM化し、広帯域のVPN網を敷設したことで、システム開発の全工程をリモートでストレスなく実施できるようになりました」と小林氏は語ります。
共通の開発環境を利用することで、端末運用や管理業務が低減したほか、全開発者のロケーションフリー開発が可能となり、在宅開発率も向上。開発オフィスの賃貸料を半減する効果も生まれたといいます。
「IT運用コストが12%削減できただけでなく、開発オフィスの集約で不動産コストも47%減らすことができました。ロケーションフリーの利点を生かし、ベンダーさんの中にはエンジニア単価の安い地方に開発拠点を作る動きも出ており、今後も多くのメリットが期待できます。当社の要望を粘り強く検討し、今回の成果につなげてくださった日立さんには本当に感謝しています」と沖元氏は語ります。
上野氏も、「プロジェクトメンバーや金融デジタルイノベーション本部、営業の方々など、日立の皆さんに一丸となって取り組んでいただいたことで、当社が長年抱えていた課題を解決できたことが本当にうれしいですね」と振り返ります。
今後は、クラウド環境の機能拡充や、既存オンプレ環境のクラウドリフトなどに挑戦していきたいと語る皆さん。その取り組みと三井住友海上プライマリー生命保険の企業価値向上を、これからも日立は多様なクラウドサービスとソリューションで継続的に支援していきます。
[お客さまプロフィール] 三井住友海上プライマリー生命保険株式会社
[所在地]東京都中央区八重洲1-3-7
八重洲ファーストフィナンシャルビル
[設立]2001年9月7日
[資本金]657.95億円(資本準備金 247.35億円を含む)
[従業員数]390名(2021年3月31日現在)
[事業内容]生命保険業
[お客さまプロフィール] MS&ADシステムズ株式会社
[所在地]東京都新宿区大久保3-8-2
(住友不動産新宿ガーデンタワー15階〜19階)
[設立]1986年7月
[資本金]1億円
[従業員数]1,662名(2021年4月1日現在/出向者含む)
[事業内容]MS&ADインシュアランス グループ内の保険システム全般にわたる企画・設計・開発・運用