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日本証券業協会殿

JASDAQ(ジャスダック)マーケットメイクシステム

背景

日本証券業協会殿は、店頭登録株の流動性を向上させるために、1998年12月よりマーケットメーカー制度を株式店頭市場に導入しました。マーケットメーカー制度とは、マーケットメーカー(*1)が、「売り気配(*2)」・「買い気配(*3)」を常時提示したうえで自らが投資家の取引相手となり、機動的に売買注文に応じる制度です。

日本証券業協会殿では、マーケットメーカーや証券会社の事務処理を効率化するために、「JASDAQ(*4) マーケットメイクシステム」を構築し、2000年3月27日に本番稼動しました。

概要

本システムは、1991年から既に稼動している店頭株売買システム「JASDAQ システム」のサブシステムで、マーケットメイク銘柄の値付けと約定処理の自動化を実現しています。

マーケットメーカーや投資家の注文を受けた証券会社は、既存の JASDAQ 端末から気配情報(気配値段、数量など)や注文情報を入力します。本システムは、これらの情報を受け付け順に集中管理し、最良価格を提示した証券会社間で自動的に約定処理をおこないます。また、気配情報や約定成立後の売買価格・売買株数などの情報を情報ベンダや新聞社に送信し、一般に公表しています。

[イメージ]JASDAQマーケットメイクシステムの取引
【図】JASDAQマーケットメイクシステムの取引イメージ

特徴と効果

特徴

UNIXサーバでの株式売買システムの構築

市場動向が目まぐるしく変化する昨今の環境下では、市場ニーズに柔軟かつ迅速に対応する必要があり、迅速なシステム対応が求められます。そこで、本システムにはUNIXサーバをベースとしたクライアント/サーバシステムを採用し、汎用性・拡張性の高いシステム構築を実現しました。また、本システムは株式取引のためのシステムであり、社会的・経済的影響が非常に大きく、一刻たりとも止まることが許されません。そのため、システムの二重化、データベースのミラーリングなどにより高信頼性も確保しました。なお、株式売買システムにUNIXサーバを導入するのは、国内では初めての事例です。

約定処理全面自動化に伴うメッセージ機能

本システムでは約定処理を全面自動化しているため、マーケットメーカーが全数約定したことに気づかず、新たな気配情報を提示するのが遅れる可能性があります。マーケットメーカーには常時気配の提示が義務づけられているため、気配情報の提示が遅れると市場の健全性が保たれません。本システムではこれを防ぐために、全数約定した時点で、マーケットメーカーにその旨の連絡メッセージを自動送信し、気配情報の再提示をうながします。

効果

市場参加者へのサービス向上

本システムでは、気配情報や注文情報をJASDAQ端末から入力するだけで自動的に約定処理をおこないます。そのため、証券会社の事務作業が大幅に軽減し、売買スピードが飛躍的に向上しました。一方、投資家にとっても最良の価格で売買する機会が増えるため、取引が一段と透明化しました。

株式店頭市場の活性化

本システム稼動当初のマーケットメイク銘柄数は約90銘柄、1銘柄あたりのマーケットメーカーは平均4.5社でした。しかし、本システム稼動から6ヶ月を経過した2000年10月には、マーケットメイク銘柄数が約200銘柄、1銘柄あたりのマーケットメーカーが平均5.6社にまで増えています。このように、本システムは、株式店頭市場の活性化に大きく貢献しており、企業や投資家にとって、よりよい市場環境を提供しています。

企画者・開発者へのインタビュー

開発にあたって

[写真]小林氏
日本証券業協会
業務部
小林 繁治 氏

[写真]中野氏
日本証券業協会
システム部
中野 雅博 氏

私ども日本証券業協会は、投資家保護と株式市場の健全な発展を目的に、常に積極的に市場改革やグローバル化策を打ち出してきました。特に1998年12月の証券取引法改正時には、いち早くマーケットメーカー制度を株式店頭市場に導入し、投資家に、売りたいとき、買いたいときに安心して売買できる環境を提供しました。これにより、株式の流動性が飛躍的に向上しました。

当初は、投資家の注文をうけた証券会社とマーケットメーカーが電話で交渉し、約定成立後の売買価格・売買株数の報告をその都度 JASDAQ 端末から手入力していました。どの証券会社でも、限られた人員で取引しており、事務作業の効率化とスピードアップ、それに伴う値付けや取引数の向上が大きな課題となっていました。また、電話が混み合って通じないなどの問題も発生し、株式取引に求められるリアルタイム性が損なわれる恐れもでてきました。そこで、一連の作業をシステム化することにし、1999年より開発に着手しました。

システムの構築にあたっては、今後の市場変動にも柔軟に対応できる汎用性と拡張性を確保し、一刻たりともとまることが許されない高信頼性の実現を最優先課題としました。また、現行の JASDAQ システム利用者が新たなシステムを導入する必要がないように、現行 JASDAQ システムの資源を利用することにしました。

今回のシステム化では、マーケットメーカーから、担当者の事務作業が大幅に軽減し、売買スピードや信頼性が今まで以上に高まったと評価いただいています。また、これまで自前の値付け業務システムを持てなかった中堅証券会社からも、今後はマーケットメイク業務に参入しやすくなるという声がでています。さらに、投資家にとっても、最良気配で売買できる機会が増え、取引の透明性、信頼化が一段と向上しました。

今後は、システム機能を一段と強化するとともに、市場参加者のニーズにこたえる価格形成機能を提供してまいります。

[お客さまプロフィール] 日本証券業協会

(2000年10月17日現在)

日本証券業協会
名称日本証券業協会
本社〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町1-5-8
会長名奥本 英一朗
設立昭和24年5月
協会員種類会員(証券会社および外国証券会社)、特別会員(登録金融機関)
協会会員数539社
会員数290社(うち外国証券会社55社)
特別会員数249機関
事業内容自主規制業務、店頭市場管理業務、証券市場に関する調査研究・意見表明、証券知識の普及・啓蒙など
*1
マーケットメーカー:値付けしようとする銘柄を届け出た証券会社のことを指します。
*2
売り気配:この価格なら責任をもって売るという意思表示のことをいいます。
*3
買い気配:この価格なら責任をもって買うという意思表示のことをいいます。
*4
JASDAQ:Japan Securities Dealers Association Quotation