日立のOT
「モノづくり技術」から始まった日立のOT。
そして、OTとITをシームレスにつなぎ、
最適解を現場へ。
ここではOT(Operational Technology)を、
物理的な装置や工程を監視・制御するハードウェアやソフトウェア技術と定義しています。
電力・鉄道・鉄鋼・水といった社会インフラや産業プラントの運用に必要な設備や
システムを最適に動かすための「制御・運用技術」を意味します。
日立におけるOTの歴史は古く、1910年の日立製作所創業まもない1914年ごろから電動機制御装置や配電盤の製作が始まっている。制御システムの黎明期は製鉄所の圧延機制御から始まり、続くトランジスタ時代には電力系統保護制御装置が制御技術の発展をけん引した。さらにデジタル化時代には、制御用デジタル計算機の登場により、発電制御や系統制御などの電力分野や列車運行管理などの交通分野へ制御範囲が拡大していった。その後、電力、交通、産業、上下水道といったさまざまな分野で、統合化や自律分散など、制御システムのアーキテクチャが確立され、さらにスマート化時代、IoT時代、DX時代と、情報制御システムとして進化を続けている。
制御システム(OTシステム)を情報システム(ITシステム)と比較してみると、ITシステムの処理対象が情報なのに対し、OTシステムの処理対象は設備や機器の物理的な現象となる。また、ITシステムはSORやSOE・SOIといったシステム設計概念ごとに優先されるシステム要件が異なるのに対し、OTシステムは機械事故により人命が危険にさらされることがあるため、システム要件は常に安全性が優先され、リアルタイム処理では遅延が許されない。さらに、OTシステムには長期稼働が求められ、稼働し続けながら、拡張・増設・改造を繰り返すための保守性・拡張性も重視される。
また、ITシステムではクラウド、ビッグデータ、AIなどの技術進歩が速く標準化も進んでいるが、OTシステムでは制御対象ごとにネイティブな技術や運用ノウハウが必要となる。OTシステム運用を現場データ分析・活用して高度化するためには、各分野のOT専門知識と先進ITを使いこなす実践力が求められる。
SOR:System of Record
SOE:System of Engagement
SOI:System of Insight
日立製作所の大みか事業所は、1969年創業以来、電力・鉄道・上下水・鉄鋼などの社会インフラ分野向けに、制御装置と各種システムを総合した情報制御システムを提供している。
大みか事業所が提供する社会インフラ向け情報制御システムには、社会基盤や生産プラントの中枢となり、24時間連続運転、長期稼働を実現する絶対品質として、多様性(一品一様)、信頼性・安全性、可用性・拡張性、保守性、事業継続性、といったシステム要件のもと、それらを支えるモノづくりが求められる。
大みか事業所は、ドメインナレッジに長けた制御システム技術者を数多く擁し、制御に求められる機能・性能・仕様を実現するため、制御コンポーネント(計算機やコントローラなど)をはじめとした制御盤の開発・製造、制御対象の分析・モデル化など最適な制御方式のソフトウェア開発、シミュレーションなどの検証技術を駆使した品質保証や運用保守支援など、情報制御システムのトータルサポートを行っている。
このように、社会インフラ情報制御システムの安定供給・安定稼働に向けた取り組みを推進している大みか事業所は、制御技術(OT)と情報技術(IT)の融合実践工場として、2020年1月世界経済フォーラム(WEF)より、日本企業として初めて世界の先進工場「Lighthouse」に選出された。
OTとITをシームレスに繋ぎ
ダイナミックケイパビリティを具現化
制御システムは従来より、24時間連続運転のためのハードウェア・ソフトウェアの絶対品質や、長期稼働のための保守性・拡張性を担保してきた。
近年のIoT化の進展で、ITシステムの利用価値がSORからSOE/SOIへシフト。個別最適化からより広い範囲での全体最適化で仮説立案や改善提案が可能となった。OT領域で物理現象をセンシングによりデータ化し、収集したデータをIT領域で分析、結果をフィードバックするSense-Think-Actのデータ分析ループで情報制御システムの運用最適化を実現してきた。
これからの不確実性の時代では、短いサイクルで継続的に世の中の変化を捕捉・分析することで最適解を導き出し、現場へ自動反映する変革が企業やシステムに求められている。日立はそれらを実現するために、OTとITをソフトウェアやデジタルでシームレスにつなぐミッションクリティカルIoTシステムで、不確実性時代の社会課題・経営課題にすばやく適応し、社会・産業インフラシステムの持続可能な発展に寄与していく。