株式会社日立コンサルティング
社会イノベーションドメイン
社会DXディビジョン
コンサルタント上田 和俊
日立の最適化ソリューションを支えるエキスパートを紹介するインタビューシリーズ。今回話を聞いたのは、日立コンサルティングの社会DXディビジョンで、テクノロジー戦略部をけん引している上田和俊。自らの役割を、お客さまの要望の代弁者であり実現者という上田に、これまで推進してきた取り組みや今後の展望について語ってもらいました。
学生時代は情報理工学を専攻、人手仕事のオートメーション化を研究し自動車産業への就職を思い描いていましたが、より幅広い分野の製造に携われる可能性に魅力を感じて日立製作所に入社しました。その後、所属部署とともに日立コンサルティングに転籍し、企業合併に伴うシステム統合やBPOの企画実行などを手がけました。2010年代に入りビジネスの源泉が“デジタル”にシフトするにつれて自らもデータアナリティクス、AI、数理最適化といったテクノロジーを追究。それらを活用して食品、航空・交通、通信、電力、自動車、流通、金融、公共といった業種、業界を問わずにお客さまのプロジェクトを推進し知識と知恵を蓄積しました。日立グループでは、各部門から各種テクノロジーと業界の有識者が集い、ビジネスアイデアを絞り出して実社会に展開しています。その最前線で、お客さまとともに新しいチャレンジに取り組み、その成果を実感できるのはエキスパートの醍醐味だと感じています。
コンサルタントとして、縦割りの組織構成、特定人財に頼った現場業務、ベテラン従業員の退職と困難な人財育成、労働人口減少、ディスラプターによる既存事業への脅威といった社会課題や市場変化による影響をお客さまの事業の問題として提起し、テクノロジーを活用した将来像を描くとともに、具体的な戦略と施策の立案、実証を担っています。その中でも主な担当領域は、企画・構想策定フェーズからPoCフェーズ(最適化モデルのプロトタイピングと実データを使った実証)、要件定義フェーズになりますが、主体を徐々にSEに移行しながら開発フェーズ、運用フェーズまで継続して支援しています。また、研究所のメンバーと連携することも多く、お客さまにとってより重要と思われる問題の提起と、適切な解決方法を常に探求しています。
コンサルティングのレイヤーで例を挙げると、調達、製造、販売という流れの中でも、お客さまそれぞれの担当領域によって調達する資材を早く決めたい、決まったスケジュールで製造したい、販売量の見極めに猶予を持たせたいというようにやりたいことが異なってきます。今までは、阿吽(あうん)の呼吸によってある程度の幅を持たせて業務をやり繰りしてきましたが、そこにはけっこうな手間と無駄も生じていました。それらを最適化で解消していくには、一つの解ではなく、条件に応じて段階的に確度を高めていく施策を提示する必要があります。ただし、そのためにはお客さま同士が立場の違いを越えて本音で話し合ってもらうことが必要です。そうした対話がいかに重要で経営にとって効果があること、現場にもメリットがあることを説明して、組織内の壁を取り払っていただく過程にはいつも難しさを感じています。
近年多いのは、業界を問わず労働人口不足による課題です。今までのような人海戦術がとれなくなると、小さな単位の作業までをも優秀な人たちがリレーして業務を成り立たせるということが難しくなります。そこをある程度デジタルに任せて、人の判断の部分を自動化できないかという要望が増えています。これまで人が一生懸命考えて蓄積してきた部分を自動化するのは簡単ではありませんが、私たちは可能だと考えています。ノウハウをひも解いて、最終目標(KGI/KPI)を明確に定義し、どのようなロジックや考え方から成り立っているかを説明して理解していただきます。その上で、数理最適化モデルに落とし込むことで今までと同じような結果を導き出してきました。案件によっては、従来業務とは異なる結果を立案することもありますが、そうした場合は「新たな気付き」のヒントかもしれないといった観点で精査して、新しい考え方としてお客さまに提案し、討議していきます。
コンサルティングにおいても、構想策定だけではなくPoCでは実際のデータを使った最適化モデルをプロトタイピング・検証し具体的な結果まで提示するところ、研究者やSEと連携してよりよい方策を常に議論しながら進めているところは強みの一つだと思います。例えば研究所のメンバーとは、新しいテクノロジーだけでなく、日立の経験や実績から秘伝のたれのように凝縮してきたノウハウを解決手法の要素に取り入れられないか。またSEとは、活用するテクノロジーが実運用に耐える仕組みとして構築可能か、お客さまのビジネスの将来像の中で何を担っていくべきかなどを幅広く議論しています。こうした一連のプロセスをコンサルタント、研究者、SEという立場の壁をつくらずにそれぞれが一定レベル以上の理解と技術力を持って、プロジェクトを推進していけるところが日立の強みだと考えています。
一つの企業やサプライチェーンで閉じるのではなく、地球規模での全体最適が求められる時代になってきているので、最適化によってその一翼を担っていけたらと思っています。例えば製造業でも、QCD(品質・コスト・納期)のみならず、働いている人たちの環境、製造のタイミングと資源やエネルギーの関係性、GHG排出量といったより多角的な観点のデータに基づいて最適解を導き出し、その妥当性を論拠説明できるようになると考えています。加えて消費する側にもその過程や結果を可視化し、アプリケーションなどを活用して伝えていくことで、より多くの人たちが環境や資源への意識を高めて行動することに貢献できると考えています。壮大な目標ではありますが、データやテクノロジーを駆使してファクトに基づいた価値提供を行い、その意義が社会に波及していけば、きっと私が思い描く世界が実現し、人々の幸福度の向上につながると信じています。
2004年日立製作所入社
2006年日立コンサルティング転籍
BPO/ITOなどアウトソーシングビジネスの立ち上げ、企業統合における企業間システム統合・データ連携を手がけ、2010年頃からデータアナリティクス・AI・数理最適化などテクノロジーを活用したプロジェクトを多数推進
経営・事業分析から、改革手法整理、新規事業企画など構想・企画のみならず、実現・定着まで推進
顧客がこれまでできなかった課題解決や目標達成に対し、さまざまなテクノロジーとビジネスアイデアを具体的に組み合わせた新しい施策に取り組んでいる
日立コンサルティング社会DXディビジョンで、テクノロジー戦略部をけん引