日立 インダストリアルビジネスユニット デジタルソリューション事業統括本部 ソリューション&サービス事業部 産業第1ソリューション本部 産業第1ソリューション部 テクニカルマネージャの山田敏広氏
製造管理業務の革新でまず取り組んだのが、紙ベースの作業記録がどのようなものかを把握することだった。日立 インダストリアルビジネスユニット デジタルソリューション事業統括本部 ソリューション&サービス事業部 産業第1ソリューション本部 産業第1ソリューション部 テクニカルマネージャの山田敏広氏は「各設備の担当者が個人的な判断で記入しているのもあれば、設備から取得したデータをわざわざ転記しているだけのものもあり、情報が活用されていないという実態が明らかになりました。この問題意識を全員で共有することで、『取得すべき情報を製品視点で整理し直し、設備の稼働情報と人の作業とひも付ける』という基本方針に向けた合意が形成されました」と説明する。
紙ベースの作業記録を精査する中で、他の課題も洗い出された。「記録提出のフィードバックは24時間後なので良いことにも悪いことにも対応が遅れること。化学プラントのオペレーターは設備の稼働状況を注視するが製品に対する視点がないこと。製造現場には職人的な気質が残っており、ベテランは経験に裏付けられた正確な判断ができるが中堅や若手との間で判断や記録内容にバラつきが生じることなど、解決すべき点が多数ありました」(倉田氏)
基本方針が定まったとはいえ、取り組みが一気に進んだわけではない。「当初は『日立が必要なシステムを作ってくれる』という受け身の姿勢でいたため、プロジェクトは停滞していました」(倉田氏)。そうではなく「自分たちが何をしたいのかをまず考える必要がある」(同氏)と気付いたことで物事は動き始めたという。
倉田氏は「FactRiSMを100%使って自分たちの業務を合わせればよいと考えていましたが、必ずしもそうする必要はなかったのです。当社にはデジタル技術者を独自に育成するダイキン情報技術大学という制度があります。その出身者が別のアプリで独自に情報の可視化に取り組んでいる姿を目の当たりにして刺激を受け、FactRiSMは情報を取得するためのプラットフォームとして活用する方向にかじを切り替えました。FactRiSMに全てを依存するのではなく『最大限に使い込む』という考え方を重視したことが奏功しました」と述べる。
鹿島製作所の製造管理業務の革新は、大きな成果が出始めている。氷室氏は「IPCが管轄するプラントの生産効率を15%向上させています」と強調する。
日立 インダストリアルビジネスユニット デジタルソリューション事業統括本部 ソリューション&サービス事業部 産業第1ソリューション本部 産業第1ソリューション部 主任技師の前田信太郎氏
ダイキン 化学事業部は、鹿島製作所で構築した仕組みを横展開しようとしている。小川氏は「2024年度からグローバルレベルでのさらなる情報活用を進めます」と意欲を示す。
日立 インダストリアルビジネスユニット デジタルソリューション事業統括本部 ソリューション&サービス事業部 産業第1ソリューション本部 産業第1ソリューション部 主任技師の前田信太郎氏も「これまでは生産能力の向上やコスト削減など、課題ありきでその解決に注力してきました。今後は品質のさらなる安定化やカーボンニュートラルをはじめとする環境対応など、サプライチェーン全体や社会に対する責任を果たすための取り組みも重視しなければなりません。日立は、構想・企画段階からお客さまのデジタル化を支援し、より良いモノづくりに貢献していきます」と語り、ダイキンとの協創を一段上のレベルに高めていく考えだ。
転載元:MONOist
MONOist 2024年5月13日掲載記事より転載
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