電力自由化が進むなかで、電力事業者は、発電設備の高効率化と環境負荷低減の両立をはかることで競争力の向上をめざしています。社会インフラを支える発電事業では、安定的に電力を供給するため、定期点検工事や設備の高効率化に向けた新設・更新工事に係る発電休止期間を短くし、設備稼働率を上げることが経営面だけでなく社会的な使命としても重要です。日立は、発電設備の設計・建設・保守の豊富な実績を通じて蓄積してきた技術・ノウハウを活用し、発電事業者の課題解決に向けたソリューションを提供しています。
東京ガス株式会社と出光興産株式会社が共同出資する株式会社扇島パワーの扇島パワーステーション(横浜市鶴見区)は、二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスを燃料として、省エネルギー性に優れたガスタービンコンバインドサイクル発電を行い、200万世帯の年間消費量に相当する約122万KWの電力を供給しています。
扇島パワーでは、社会に向けて安定した電力供給を実現させるため、また発電所としての競争力を高めるため、設備のさらなる性能向上対策を検討していました。その一方で、当該地域の送電系統の容量には限界があることから、プラント新設は難しいという状況にありました。そこで発電設備を新設するのではなく、既設ガスタービンの高出力・高効率化によってプラントの出力・効率を増強してほしい。また、当該更新工事に伴う発電休止期間は極力少なくしたいとの要望がありました。その要望に応えるため、日立は、発電休止期間が最短となるように、定期点検工事の期間にガスタービン更新工事を並行して実施する工事計画を提案しました。
日立は扇島パワーステーションの1号機〜3号機のガスタービンコンバインドサイクル発電設備、およびその付帯設備の建設工事一式を納入し、その後も長期保守契約のもとで、部品在庫管理システムなどの包括的サービスを提供、発電所の効率的な運用と保守の最適化に貢献してきました。
今回のガスタービン更新工事では、1号機〜3号機のガスタービンの高温部品を高性能・長寿命の製品に交換することで、「高出力・高効率化」「高温部品の長寿命化による定期点検周期の大幅な延長」「低発熱量のシェールガスを含めた燃料・燃焼範囲の拡大」を実現すること、さらに工事に伴う発電休止期間を極力短くすることをミッションとしていましたが、この更新工事は、ガスタービン以外の機器にも影響が大きく、プラント全体の検討が必要となる難しい作業であり、また定期点検工事と並行して工事を進めることも初めての試みであったため、非常に難易度の高い工事となることが想定されました。
そこで日立は、これまでに培ったガスタービン設計・建設技術や長期保守作業の中で築き上げた現場運用などのノウハウを最大限に活かして、計画段階から細心の注意を払い、扇島パワーや海外サプライヤーと綿密な調整を行い、徹底した工事計画とプロジェクト管理体制を構築しました。さらに、日立と扇島パワーがそれぞれ数百名規模で参加する大規模な工事となるため、安全を最優先し、トラブルや効率面に万全を期したほか、工程管理を徹底しました。
通常、機器の更新工事は1か月以上発電を停止する必要があるなかで、発電設備の定期点検と更新工事を同時に行ったことで、定期点検期間+11日間で完了、計画通りの期間で無事故・無災害で達成しました。また発電出力・発電効率向上も計画を上回りました。
今回の更新工事により、高出力・高効率化とともに、高温部品の長寿命化で点検周期の大幅な延長を実現させ、性質の異なる幅広い天然ガスにも対応できるようになったことで、扇島パワーから高い評価を得ることができました。今後も、環境負荷が低く、効率と採算性の高い扇島パワーステーションの運用を支援していきます。また、Lumadaを活用したデジタル技術も提案することで、より良いサービスをめざしていきます。
発電事業者を取り巻くエネルギー業界の自由化は今後ますます進展することが予測され、高い競争力を維持していくことが求められるなかで、日立はこれまでに培った技術やノウハウを駆使し、その要望に応え、安定的かつ効率的な電力供給に貢献するとともに、低炭素社会の実現に貢献していきます。