ガスタービン発電とは、燃料(灯油、軽油、LNG(液化天然ガス)など)を燃やした燃焼ガスでタービン(羽根車)を高速回転させて発電する方式です。小型で高出力、省スペース化に貢献でき、しかも始動が早いという特色があり、発電所だけでなく工場やビル、病院などの分散型電源・非常用電源として普及し、ライフラインとしての役割が高まっています。
しかし、タービンに使用される高温部品は1500℃もの高温にさらされるため、毀損(きそん)のリスクが高く、それを防ぐために数千個の部品それぞれに使用時間の上限が設定されています。ガスタービンの保守業務では、高温部品それぞれの管理寿命を把握し、適正な管理を行うことが鍵になります。
京浜臨海部で製油所と発電所を運営するエネルギー会社である出光興産グループの東亜石油株式会社水江発電所(神奈川県川崎市)では、自主メンテナンスおよび日立製作所との長期保守契約により設備管理を行ってきました。しかし、自主メンテナンスと同社の既存の管理システムだけでは管理が困難であり、その反面、日立との契約へ依存度が高まれば、ノウハウの継承が進まないことを課題としてとらえていました。そこで、将来に向けた構造的コスト削減と設備信頼性の向上を実現するため、ガスタービンの部品供給を含めた運用・保守(O&M)のイノベーションが求められていました。
東亜石油水江発電所は東亜石油京浜製油所の敷地内に立地し、石油精製の過程で発生する副生ガスや残渣油を利用して汽力発電(発電容量約19.5万kW)とガスタービン発電(同約7.9万kW)を行い、出光興産株式会社の受託発電と東京電力エナジーパートナーへの電力供給を行っています。
水江発電所の運転開始以来、16年間にわたり、日立はガスタービンの保守を担当してきましたが、2019年9月、東亜石油と締結したガスタービン長期高温部品供給契約を機に、単に部品の供給だけでなく、水江発電所が蓄積してきたO&Mに関わる点検計画と点検結果、資材情報などの膨大なデータを共有・活用することで保守作業を支援する「ガスタービン長期高温部品管理プラットフォーム」の導入を提案しました。これは東亜石油のガスタービンの運用・保守に関するノウハウをベースに、日立がエネルギー事業で培ってきた経験や技術と、デジタルイノベーションを加速するソューション「Lumada」を用いて、高温部品に関する各種情報をクラウド上のデータベースで一元管理するものです。
これにより、メンテナンスに携わる水江発電所のエンジニアと、部品供給を担う日立の双方が常に設備情報を閲覧できるようになり、高温部品の管理が強化されて設備の信頼性の向上や運用コスト低減につながることが期待できます。さらに、これまで蓄積されてきた自主メンテナンスのO&M技術とノウハウの次世代への共有・継承に加え、新たなノウハウの積み上げにも貢献することができるようになります。
「ガスタービン高温部品管理プラットフォーム」は、2020年1月の運用開始を予定しています。今後も日立は「点検・保守状況の見える化」「高温部品の性能評価」「予兆診断による故障予知・予測」などのサービスをはじめ、人工知能(AI)を活用した「売電支援サービス」などのソリューションを提案し、さらなるO&Mのサポート、経営の効率化を支援していきたいと考えています。
同時にお客さまとの協創による社会イノベーション事業を通じて、持続的な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。