私たちの未来を形作るエネルギー。持続可能なエネルギーの未来に向けた展望と、グローバルな連
携のもとで進められている原子力の技術開発についてご紹介します。
日本は、エネルギーの安定供給と経済成長を両立させながら、2050年のカーボンニュートラル実現をめざしています。この目標を達成するには、経済活動を維持しつつ、あらゆる分野で二酸化炭素の排出を減らしていくことが求められます。しかし近年、電力需給のひっ迫やエネルギー価格の高騰などによってエネルギー需給構造のぜい弱性が明らかになっており、国民生活や経済活動を支える安価で安定的な電力供給の確保が最優先課題となっています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『2040年度におけるエネルギー需給の見通し (関連資料)』をもとに加工して作成
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルの実現に向けた需要側の取組』より引用
こうした現状を踏まえて、再生可能エネルギーを主力電源として導入しながらも、特定の電源や燃料源に過度に頼らないバランスのとれた電源構成をめざすことが大切です。化石燃料への依存を減らし、省エネルギーを徹底するとともに、エネルギー安全保障にも役立つ再生可能エネルギーや原子力などを最大限に生かすことが重要といわれています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁サイト『「エネこれ」 「カーボンニュートラル」って何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?』より引用
今後はDX(デジタルトランスフォーメーション)※1やGX(グリーントランスフォーメーション)※2が進展することで、電力需要の増加が見込まれます。経済成長や産業競争力を維持しながら十分な脱炭素電源を確保するためには、水素やアンモニア、合成メタン(e-メタン)、CCUS※3など、さまざまな技術の導入も検討すべきでしょう。ただし、どの発電方法にも長所と短所があるため、一つの選択肢に偏るのは現実的ではありません。
日本の第7次エネルギー基本計画では、日本を取り巻く情勢変化も踏まえ、再生可能エネルギーを主力電源として原子力発電を最大限導入する基本方針が打ち出されています。このように、多様な技術と発電方法を上手に組み合わせる柔軟な視点が必要です。
エネルギー問題の解決は、政府や企業だけの責任ではありません。電気がどのように生み出され、どのように運ばれ、どのように使われるのかを理解することも大切です。一人ひとりが発電方法について正しい知識を持ち、日常生活で省エネや環境に配慮した行動を心がけることが、持続可能な未来へとつながります。そして、その意識を持ち続けることが、次世代へ豊かな暮らしをつなぐ大きな一歩となります。未来のために、今日からできることを始めてみませんか?
プラズマ真空容器の内部 (写真提供:核融合科学研究所)
核融合は、原子核同士を融合させて太陽内部と同じ反応を人工的に起こし、大量のエネルギーを得る技術です。核融合の実用化は、かつて夢物語と思われていた時代もありましたが、高レベル放射性廃棄物の発生が少なく、事故リスクを低減できる可能性があることから、クリーンエネルギーの有力候補として世界的に注目されています。
核融合科学研究所(大型ヘリカル装置)
その大規模な挑戦の場が、フランス南部で進む国際熱核融合実験炉(ITER)計画です。日本や欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドなどが連携し、トカマク型装置で融合反応を起こし、新たなエネルギー源となり得るかを検証しています。開発には巨額の投資と長い年月が必要ですが、地球温暖化対策や化石燃料の枯渇を見据えた未来エネルギーの重要な一歩といえるでしょう。
「加速器」は、電子や陽子などの粒子を光の速さに近い速度まで加速し、物質を構成する最小単位である素粒子を解明するための装置です。この技術は、宇宙の成り立ちや物質の根源を探る手がかりを提供し、基礎科学の発展に欠かせない存在となっています。
大強度陽子加速器施設J-PARC 加速器 MR
(シンクロトロン、30GeV)
シンガポール国立がんセンター 陽子線がん治療システム
加速器はもともと原子核の構造や反応を調べる目的で開発されました。現在では、医療や産業など、私たちの生活に寄与する多様な分野にも応用されています。日本はこの領域で世界最先端の成果をあげており、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、宇宙誕生直後の環境を再現し、素粒子の性質や相互作用を徹底的に探究するプロジェクトが進められています。