更新日:2009年12月22日
ファイル交換ソフトを通じた情報漏えいに関する現状を明らかにするため、2007、2008年に引き続き、インターネットユーザのファイル交換ソフト利用状況や意識に関して調査を行いました。
調査期間:2009年9月24日〜9月30日
調査の方法:インターネットユーザに対するWEBアンケート方式
回答数:有効回答数 21,669人
2009年度の調査では、Cabos、BitComet・BitTorrentの利用が増加するなど、利用されているファイル交換ソフトの人気に変化が見られました。一方で、セキュリティ対策状況やウイルスの感染状況は、2008年度から大きな変化が見られず、依然として19歳以下および20代の若年層、女性の利用層に比較的情報漏えいリスクが大きいことがわかりました。
今回の調査から、ファイル交換ソフトの利用に起因する情報漏えいを防止するために、新たに利用が拡大しているファイル交換ソフトへの技術的な対応と、若年層および女性の利用層をターゲットとした啓発活動、および、これらの利用層でも使いやすい情報漏えい防止技術の開発が必要であると考えられます。
また、Winny・Winnypにおいて、ポート0設定または改造やパッチによるアップロード防止措置を講じているために、一般的なクローリング調査でカウントされていない利用者が一定数存在する可能性が明らかとなりました。ただし、実際に、ポート0設定および改造やパッチによるアップロード防止措置を講じている利用者が今回の調査結果ほどの割合を占めるかは不明であるため、このような利用者を含めたファイル交換ソフトの利用実態の正確な把握が今後の課題としてあげられます。
9.1%が現在ファイル交換ソフトを利用していると回答しており、2008年度10.3%から減少しました。
また、主に利用されているファイル交換ソフトは、Winny・Winnyp、Cabos、LimeWire、BitComet・BitTorrent、Share、WinMXの順となりました。Winny・Winnyp、Share、LimeWire、WinMXの利用は減少、若年層に人気があるCabosや海外でも普及しているファイル交換ソフトであるBitComet・BitTorrentの利用が増加し、ファイル交換ソフトの人気が変化している様子が伺えます。
ファイル交換ソフト利用時のセキュリティ対策について、「特に何もしていない」と答えている現在利用者が10.7%おり、情報漏えいにつながるような危険な状況でファイル交換ソフトを利用している利用者が依然として存在しています。このようなセキュリティ対策を行わずにファイル交換ソフトを利用する現在利用者の割合は20代男性に特に多く、また、全体的には男性よりも女性の方が割合が多い傾向にあります。
ファイル交換ソフトを介してウイルスをダウンロードした経験がある現在利用者は46.1%で、2008年度とほぼ同様の割合となりました。また、今回新たにウイルスをダウンロードした回数を確認したところ、「3回以上」との回答が47.5%となりました。これらの結果から、ファイル交換ソフトの利用を通じてウイルスに遭遇する可能性は高く、ファイル交換ソフトを介した情報漏えいのリスクは依然高いと考えられます。
ウイルスのダウンロード経験について年代別に見ると、「わからない」と答えている現在利用者が19歳以下および20代の若年層に多く、特に19歳以下では「ウイルスをダウンロードしたことがない」との回答が47.3%にのぼっています。また、全体的には男性よりも女性の方が「わからない」「ウイルスをダウンロードしたことがない」との回答の割合が多くなっています。これは、セキュリティ対策の状況において「何もセキュリティ対策をしていない」と回答の割合の傾向と相反しており、若年層および女性の利用層の潜在的なウイルス感染が懸念されます。
Winny・Winnypについて、ポート0設定またはパッチや改造などによるダウンロード専用設定状況の調査を行いました。その結果、42.5%がポート0設定またはパッチや改造などによるダウンロード専用設定を行っているとの結果になりました。
本調査はアンケート調査であるため、この調査結果が必ずしも実数に則しているものとは現在は判断できませんが、このような現在利用者が一定数存在していることが予想されます。
ファイル交換ソフトによって流出ファイルをダウンロード経験について、流出ファイルのダウンロード経験がある現在利用者の割合は19.9%となり、2008年度の24.1%から低下しました。また、共有経験者のうち、流出ファイルを現在アップロードしているとの回答の割合は1.7%となり、2008年度4.1%から低下しました。アップロード者数は減っているものの、流出ファイルの流通への影響は少ないと考えられ、今後とも、ファイル交換ソフトを通じた流出ファイルそのものを減少させていく必要があると思われます。
本調査は、総務省から委託を受けた「ネットワークを通じた情報流出の検知及び漏出情報の自動流通停止のための技術開発」の成果の一部です。また、本調査は社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の協力により実施しました。
寺田/HIRT、水野/セキュリティソリューション本部、大西/HIRT
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