IT企業に入社した新入社員のさいとうと、入社3年目だが、急な配置転換で畑違いの部署に異動になったすずき。
仮想化の知識ほぼゼロの2人が、情報システム部門に配属になり、仮想化環境を構築できるようになるまでの、汗と涙と感動のお話。
さいとう、すずき。今日からよろしくな。2人の指導係になった、てぐちだ。
すずきは、前の部署では、拡販系の仕事をしていたんだったな。急な異動で申し訳ないが、今、我々情報システム部門では、全社的な仮想化に向けて、人員を増強中なんだ。
畑違いとは思うが、宜しく頼むよ。
そして、さいとう。君は入社したばかりで、まだ会社に慣れることで精一杯かもしれないが、これからこの部署はどんどん忙しくなるから、頑張ってついてきてくれ。早く戦力になってくれることを期待しているよ。
よろしくお願いします。でも僕、本当に畑違いで、皆さんの足を引っ張らないか不安です。ところで、これから具体的に何をしていったらいんでしょう?仮想化は、言葉としては知ってるんですが、その、中身となると…
(やばい、俺は仮想化って言葉すら知らないよー!)
わ、わたしも仮想化って言葉くらいは当然知ってるんですけど…
(やべー、いきなり知ったかぶっちゃった!)
ふむ。では、まず君たちには仮想化とは何かを調査してもらおうか。最終的に私に説明できるようになってほしい。
調べ方はまかせる。自由にやってくれ!
は、はい。わかりました〜。
配属して、いきなり重い課題を振られてまった、さいとうとすずき。
2人はひとまず自分のデスクに戻った。
すずき先輩。てぐちさん、指導係だと言っといて、お題だけ振っていなくなってしまいましたけど。どうするんです?
うーん、「仮想化」について説明できるようにって言っていたね。
仮想化ってどういうものだと思う?
(えっと…)仮想化って言うとー、「ないものをあるように見立てて」ってイメージなんですけど…。
バーチャル的な感じですよね。
あーなるほど、例えばどんな感じ?
例えば…、最近のはやりのプロジェクションマッピングとか!
あっ、あれね!壁とか建物とかに映像を映すやつね!
それです!映し出す場所さえあれば、そこにはない空間を自由に映像で作り出すことができるじゃないですか。
うん、たしかに。最近いろんなイベントでこの技術は使われているよね。
ですからこれを使えば、例えば、実際に見せたい建物や部屋のつくりなども、まさにその空間に居るかのように映像で作り出せるので、実物を用意する手間が省けると思うんです。
なるほど、そこに実体はないんだけど、まるで実体があるかのように見立てているっていうことね。
そうです、これってまさに仮想化のイメージそのものかなぁって思うんですけど。
うんうん。それじゃあ、この仮想化は、ITだとどのような使われ方をしているか、調べてみない?
そうですね!ITでいう仮想化ってなんだろう。検索してみよう…。
−2人がインターネットで検索したページに書かれていることは次のような内容だった。
これが仮想化ですか…。
イメージしていたのとぜんぜん違うね…。
もっと、SF映画に出てくるような、キーボードやマウスがなくても指の動きだけで操作できる機能とか、モニタの代わりに空中に画面を投影するとかそういうのを期待してました。
まさにさっきのプロジェクションマッピングのようなイメージだね(笑)
はい!だから、これが仮想化と言われてもいまいちピンと来なくて。それにこのPC?はモニタが付いていませんね。
この箱はPCの動力部、車で言うエンジンみたいなものを指しているんだと思うよ。だから実際にはここにモニタやマウス、キーボードをつなげて使うんだね。
PCにもエンジンがあるんですね!モニタだけで動いているのかと思ってました…。
モニタは車で言うとタイヤにあたるのかな。
車もタイヤだけで動いているように見えるけど、実際はエンジンの働きでタイヤを動かしているのと同じだね。
じゃあマウスやキーボードは、ハンドルやペダルということですね。
だね。それで話を戻すけど、まずは何で仮想化って言うのか考えてみる?
仮想化のイメージはさっき「ないものをあるように見立てて」と言ったよね。そういう部分が実はあるのかも。
なるほど。
実はこの説明の「1台のPCで複数のOSを動かせる技術」っていう部分がよくわからなくて。なにかすごいのかなって。そもそもOSは何をするものなんですか?
OSは、Operating Systemの略で、直訳すると操作ソフトという名前の通り、ユーザーの操作をPCに伝えて実行するソフトウェアだよ。
ユーザーの操作というのは、例えばWebブラウザを立ち上げたり、キーボードから文字を入力したりってことね。
それはOSがないとできないんですか?
正確にはOSがなくてもできるけど、すごく大変かな。
例えば、人間で言うと、文字を書こうと思った時に、“あ”という字は書くにはまず横線を引いて、次に縦線を引いて、最後に…とは考えないよね。“あ”を書こうと思えば書けるよね。そういう風にやりたいことを無意識に実現してくれる部分がOS。
だからOSがないとまず横線を引いて、って行わないといけない。
じゃあ「通常、1台のPCでは1つのOSしか実行できません」というのは?
さっきの例えで言うと、文字を書こうって言うときに、OSによって登録されている書き順や書体が違うと、どちらを選べばいいのかわからなくなってしまうからだね。
なるほど。あれ、じゃあ1台のPCで複数のOSを動かす意味ってなんですか?1つでいいですよね?
そこは多分なんだけど、例えば、右手と左手では同時に別の文章を書く、みたいな全く別の動きをさせることはできないよね。でも、もしそれができたら作業の効率が2倍に上がるよね。それと同じで、OSも複数の全く別の動きを並列して行うことができれば何かいいことあるんじゃないかな?
そういうものですかね。仮想化がどういうものであるかはなんとなくわかりました。でも最初に言った、「ないものをあるように見立てる」の部分が解決しないですね。
あ、わかったかも!1台のPCで複数のOSを動かせないっていうのはさっき説明したよね。じゃあ複数のOSを動かしたい場合にどうすればいいんだと思う?
え、1台のPCで、ですか?
ううん、そういうの関係なく複数のOSを動かしたい場合に。
それならPCが複数あって、それぞれでOSを動かせばいいですよね。
そう、そうなんだよ!仮想化は、1台のPC上に複数台のPCがあるかのように見立てる技術なんじゃないかな。
あ。なるほど!それなら最初のイメージと一致しますね。
仮想化についてはわかりましたけど、この仮想化はどんな業務に使うんでしょうね?
あー、なんだろう…。OSって一種類だけじゃなくて何種類もあるから、それを使い分けたいときとか?例えば複数OS対応ソフトウェアの動作テストをする場合はそれぞれのOS上で動かす必要があるからそういうときに使えそう。
1台のPCに乗せた複数のOSを切り替えて利用できるようにするってことですか。
そう。そうしたら、今までOSの数だけ用意していたPCが1台で済むよね。僕は家でリンスインシャンプー使ってるんだけど、元々複数必要なものが一つで済むって意外なほど便利なんだよね。
なるほど。でもリンスインシャンプーの例えはちょっと違う気がします(笑)
考えたんですけど、さっきの全く違う動作を並列で行うってことに関してなんですが、すずきさん職場でPC使っていますよね。俺も使ってますし、1人1台PCが配られてますよね。
そうだね。
さっきの原理を利用すれば、複数人で1台のPCが使えるんじゃないかなって思ったんですけど…。
どういうこと?
1人で複数のOSを自由に使えたり切り替えたりできるということは、そのOSたちを複数の人にそれぞれ割り当てて使うこともできるんじゃないかと思って…説明しづらいので絵に描いてみますね!
あ!そういうことか。うん、できると思う。
ですよね!
仮想化の利用法として2つ挙がりましたが、どのようなメリットがありますか?
そうだな。どちらにも共通して言えることは、PCが1台で済んでいるということだね。
あっ、これってタクシーのイメージですよね。タクシーは1人で乗っても4人で乗っても料金は同じだから、4人で利用したほうが一人当たりの料金が安くなります。
うん、まさにその通りだね。
では、答えを聞かせてもらおうかな。さいとう、すずき、ITで言う仮想化とは何だ?
はい。仮想化とは、「1台のPCで複数のOSやアプリケーションを動作させる技術」です。
これは、1台のPC上に複数台のPCがあるかのように見立てることで実現します
仮想化を業務に取り入れることで、1台のPCで複数のOSを使う、複数人で1台のPCを使うということができるようになります。
それによりPCの台数を少なくできるので、PCの設置場所の削減やコスト面、利便性の面でメリットがあります。
そうだな。1台のPCで複数のOSやアプリケーションを動作させるのも仮想化の技術の一つだ。
実際には1台のPCしかないのに、複数のPCがあるように利用できる。
つまり、1台の物理的なPCを、仮想化した論理的な複数のPCとして使えるということだ。
それを実現しているのが仮想化の技術ってことだな。
よし、仮想化について理解できたところで早速仕事があるんだが、頼んだぞ!
(ええ〜。)