電子カルテシステムの基盤に
日立ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)ソリューションを採用
デジタル化が進む医療機関では、複雑化するITシステムの運用負荷増大や、システム拡張時のダウンタイム最小化などが大きな課題となっています。そこで地方独立行政法人 岐阜県立多治見病院(以下、県立多治見病院)は、電子カルテシステムの更新に合わせてITインフラに「日立HCIソリューション for Nutanix」を採用。ミッションクリティカルシステムに求められる可用性と信頼性、運用・設備コストの低減をトータルに実現しました。
1939年開設の県立多治見病院は東濃・可児地域の基幹病院として高度先進医療、急性期医療、政策医療などを提供。救命救急センターやNICU(新生児集中治療室)、周産期母子医療センター、緩和ケア病棟などを次々と拡充。2010年4月に地方独立行政法人となって以降も、地域医療のさらなる充実に貢献しています。
県立多治見病院は2019年5月、院内ITシステムの中核となる医療総合情報システム(電子カルテ)を刷新。株式会社ソフトウェア・サービス(以下、SSI)が開発した「新版e-カルテ®」(電子カルテシステム)と「NEWTONS2」(オーダリングシステム)を新たに導入しました。
理事長兼病院長 近藤 泰三氏はその背景を「今回の電子カルテシステムの更新では、われわれ医療従事者と患者さま双方に、より利便性の高い医療環境を提供することを念頭に置きました。 既存ベンダーも含めた複数候補の中からSSIのシステムを選んだのは、ひとつは医療の標準化とチーム医療に役立つクリティカル・パスシステム*がとても使いやすかったからです。患者さまにとっても新システムに移行することで、入院から退院に至るまでの治療・検査・処置・指導などの過程が分かりやすくなると考えました。 もうひとつは、部門システムの統合メリットがあることです。一般的な電子カルテシステムは、他ベンダーも含めた多くの部門システムと連携させるため、システム構造が複雑になり運用コストもかさむ傾向にありました。しかしSSIは自社製の部門システムを多数用意しており、電子カルテとシームレスに連携できます。データベースも一元化されているため、構造がシンプルで運用負担が低減できる点も評価しました」と説明します。
電子カルテシステムは24時間365日稼働のミッションクリティカル性に加え、データ量の増加にも柔軟に対応することが求められます。県立多治見病院ではすでに仮想化環境を導入していましたが、物理サーバも数多く残されており、ハードウェアの一元管理が困難なほか、障害時の切り替えやストレージを追加する際などに数時間のダウンタイムが生じることが課題になっていました。
そこでSSIは、サーバ、ストレージ、SANスイッチを集約したシンプルな構成で、運用性と可用性の向上を実現するHCIの導入を県立多治見病院に提案。同院は数あるベンダーの中から、IAサーバ「HA8000Vシリーズ」とNutanix製のHCIソフトを検証済みの構成として提供する「日立HCIソリューション for Nutanix」を採用しました。
今回HCIの提案、導入、運用から保守までを日立システムズがワンストップで担当。同ソリューションは、システムを止めない冗長性と性能ボトルネックの分散データの冗長化を実現するNutanixの特長に加え、ハイパーバイザーや仮想マシンの管理を容易にする専用運用管理ツール「Prism」を標準添付。ハードウェアやソフトウェアにまたがる複合的な問題にも迅速な復旧をサポートする「日立サポート360」など、日立ならではの手厚いサービスを合わせて提供しています。
日立はSSIと連携した電子カルテシステム導入プロジェクトの中で、規模や業務要件に合わせたITインフラ全体のデザインと構築を支援しました。最も重要な電子カルテシステムの基盤にはHCIを導入しましたが、一部の部門システムにはOracleのライセンスコストという課題がありました。Oracleのライセンスは、Oracle製品が稼働する物理サーバの全CPUがライセンス課金対象となります。
部門システムをHCIに統合した場合、HCI基盤を構成する全てのCPUが課金対象となりコストが跳ね上がってしまいます。そのため、一部の部門システムの基盤はミッドレンジストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform(VSP)」を用いた仮想化基盤構成を適用することで、コストの最適化を図りました。
地方独立行政法人 岐阜県立多治見病院
近藤 泰三 氏、金子 浩久 氏
このシステム環境に対して、県立多治見病院のITシステムを管理する管理課 システム管理担当 課長補佐 金子 浩久氏は、「電子カルテの基盤がHCIになったことで、信頼性と可用性が大幅に高まるものと期待しています。また部門システムの統合で、サーバのメンテナンス負担もかなり軽減できると思います。さらに以前は6ラックあったシステムが2ラックに収まり、予想以上の省スペース化と省電力化も実現することができました」と評価します。
現在、県立多治見病院では2022年度中の開設をめざした新中央診療棟建設プロジェクトが進行中です。新棟には高度急性期、急性期医療の機能が集約されるほか、ハイブリッド手術室や、手術支援ロボットに対応した手術室など、先端医療が可能な12の手術室も新設される予定です。医療の効率性と安全性を高め、チーム医療をさらに推進するため、電子カルテシステムとその基盤となるHCIの重要性も一段と高まることが予想されます。
これからも日立はSSIとの協創で、医療現場を支えるITインフラを継続的にサポートしていきます。
所在地 岐阜県多治見市前畑町5丁目161番地
開設 1939年9月8日
病床数 計575床
診療科 内科、腎臓内科、血液内科、内分泌内科、リウマチ科、精神科、
神経内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、小児科、
新生児内科、外科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、整形外科など
全30診療科
所在地 大阪府大阪市淀川区西宮原2-6-1
創業 1969年4月
資本金 847百万円
従業員数 1,361名(2019年4月30日現在)
事業内容 医療機関向けに「新版e-カルテ®」(電子カルテシステム)、「NEWTONS2」(オーダエントリー
システム)を中心とした医療情報システムの開発・販売・ 導入・保守など