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Casestudy
(PDF版:257KB)
日本航空株式会社
グループ全体の基幹システムをSAP(R) R/3(R)で再構築
膨大な数のジョブ運用をJP1によって自動化
2002年10月、日本航空株式会社(以下、JAL)と株式会社日本エアシステム(以下、JAS)の株式会社日本航空システム設立のもとでの経営統合による新「JALグループ」が誕生。ここでは2000年から“企業のあらゆる側面をe化する”という目標を掲げ、「e-JAL」と呼ばれるプロジェクトが進められてきた。その一環として基幹系システムもSAP(R) R/3(R)で再構築、グループ全体を支える業務基盤が確立されている。このシステムのジョブ運用基盤として利用されているのが日立の統合システム運用管理ミドルウェア「JP1」である。SAP(R) R/3(R)上のジョブ運用を自動化するのはもちろんのこと、メインフレームとのジョブ連携も実現。柔軟性の高いシステム基盤を実現する上で、重要な役割を果たしているのである。
ビジネスの全面的なe化をめざし
業務基盤をSAP(R) R/3(R)で再構築
企業グループ全体のリソース活用をいかにして最適化していくか。これはある程度の規模を持つ企業グループにとって、極めて重要な経営課題のひとつだといえる。企業グループが大きくなれば利用可能なリソースの総量が大きくなる一方で、企業間の壁が情報の流れを妨げ、組織全体を見通すことが難しくなっていく。これによってリソースの利用効率が下がるリスクが生じ、グループ全体の競争力を低下させる可能性もある。
この課題に対応するための手段として、IT活用を積極化しているのがJALグループである。“企業グループのあらゆる側面をe化する”ことを目指し、2000年から「e-JAL」と呼ばれるプロジェクトを進めているのだ。
まずは一般社員のワークスタイルをITで支援する「e-Workstyle」と呼ばれるシステムを構築、電子メールや社員ディレクトリ、情報の電子化・共有化、Webをベースにしたeラーニング、意思決定ワークフローなどを立ち上げていく。
その一方で基幹業務システムに関しても、従来は個々の企業毎に構築されていたものをグループ全体で統合されたものへと移行。
標準的なユーザー・インタフェースと統合データベースをERPによって実現したシステムを、2002年4月から本番稼働している。ERPパッケージとしてはSAP(R) R/3(R)を採用。財務会計(FI)、管理会計(CO)、在庫/購買管理(MM)、人事管理(HR)、連結(ECCS)、電子購買(EBP)、データウェアハウス(BW)といったモジュールを利用し、1インスタンスでマルチカンパニーをサポートしている。
さらにこの上には「e-Office」と呼ばれる業務アプリケーションが構築され、サプライサイドにはe-CSM、カスタマサイドにはe-CRMが置かれている。これによって調達から顧客サービスに至るまで一貫したプロセス最適化を実現。企業間の壁を取り除くと同時に、従来は各企業が行ってきたシステム・メンテナンスの負担の軽減にも成功しているのだ。
SAP(R) R/3(R)で構築された業務基盤は、グループ全体の業務を支える存在であるため、極めて高い信頼性が必要であることは言うまでもない。求められたサービスレベルは24時間365日の連続稼働。これは航空会社の生命線ともいえる予約システムや運行システムと同等レベルなのである。
ジョブ運用の自動化をJP1で実現
決め手はメインフレームとの連携
「このサービスレベルを実現するには、当然ながらシステム運用に関しても高いレベルが求められます」というのは、JAL ITセンターマネジャー安達靖人氏だ。
例えば、ファシリティに関してはメインフレームと同じ機械室に設置することが前提となり、専用ラックや電源の二重化も求められた。また保守に関してもベンダーの保守員が常駐し、性能監視や変更管理、セキュリティ、バックアップなども統合管理ツールによって自動的かつ確実に行われる必要があったという。
メインフレームと同等の運用を実現するには、ジョブ運用をどうするかも重要な課題になる。基幹系システムを効率的に動かし続けるには膨大な数のバッチ処理を行う必要があるが、これを人手で行っていたのでは運用コストがかかり、ヒューマンエラーが発生する危険性も高くなるからだ。ジョブ運用を自動化し、その稼働状況を監視するメカニズムも欠かすことができないのである。
このジョブ運用のニーズに応えているのがJP1である。JP1が採用された理由について、安達氏は「SAP(R) R/3(R)とメインフレームとを連動させたジョブ運用を容易に実現できることが最大のポイント」と説明する。JALグループではSAP(R) R/3(R)による基幹システムが動き出した後も既存のメインフレームが稼働しており、SAP(R) R/3(R)とメインフレームを連動させたジョブ運用は必須条件だったのだ。
今回のシステムではSAP(R) R/3(R)用のサーバにJ P 1エージェント、メインフレームにはJP1/OJE
*
を導入し、両者の間のジョブ連携を実現している。またデータのやりとりに関しては、日立のディスクアレイサブシステム「SANRISE」を介することでデータ連携を行えるようにしている。これらの他にも関連会社向けのシステムや、社員の情報活用を支援するe-WorkstyleにJP1エージェントが導入されており、これらのシステムとの間でもジョブ連携が可能になっている。
複数のシステム上で稼働するジョブが混在するジョブネットも、ビジュアル化された画面によって一目で把握できる。そのためジョブ連携の設計も容易になっているという。
*JP1/Open Job Entry
日本航空株式会社 ITセンター マネジャー 安達 靖人 氏
強力なスケジュール機能や
使い勝手の良さも高く評価
その一方で「他の運用管理製品に比べてジョブスケジュール機能が強く、ユーザー・インタフェースも使い勝手がいい」と安達氏は指摘する。
「JALでは以前から、ジョブ運用にJP1を利用していますが、これまでの実績も高く評価しています。また国内の運用管理製品としてデファクトスタンダードになっていることも、安心して使える理由になっています」
ジョブ運用の管理はJP1ビューで集中化されており、開始日時指定による起動、先行ジョブの終了を確認しての起動、ファイル作成や更新などのイベントを検出しての起動、オペレーションによる起動が可能になっている。ジョブが開始されるとJP1内部で“Information”レベルのメッセージが生成され、正常終了した場合にも同様のメッセージが生成される。
なお個々のジョブ内部の進行状況は、各業務サーバのログに蓄積される。
システムの稼働状況を監視する機能はTivoliによって実現されているが、JP1のジョブ運用機能はこのTivoliとも連動するようになっている。ジョブが異常終了した場合には、Tivoliにメッセージが通知されるのである。オペレータによる即時対応が必要な異常終了に関しては“Critical”レベルの通知が行われ、その内容がコンソールにも表示される。一方、即時対応が不必要なものに関しては“Warning”レベルの通知でコンソールには表示されない。ジョブがタイムアウトした場合には影響度の大きさによって“Critical”または“Warning”としてTivoliに通知されるようになっている。
膨大なジョブを安定的に運用
JASとの統合にも威力を発揮
システム全体で動いているジョブの総数は1万8,000余り。1日あたり平均で5,000件、ピーク時には8,000件ものジョブ実行が発生するが、極めて安定して動いているという。これが可能なのはジョブの同時実行数をコントロールする機能がJP1に装備されているからだ。
JALは2002年10月にJASとの経営統合を果たしており、システム面での統合も着々と進みつつある。2003年春頃には経営の基盤となる会計システムの統合が予定されており、これによって新たに8,000余りのジョブが追加され、ジョブ総数は2万7,000近くにまで増えると見込まれている。
しかしJP1は安定性が高いため、ジョブが増大することに対する不安はないという。
「ERPの運用を支えるシステムとしてJP1を選択したことは正解だったと感じています」と安達氏。これによって経営の変化にも柔軟に対応できる基盤を確立できたという。「今後もさらにJP1をうまく活用し、経営リソースの有効活用を推進していきたいと考えています」
USER PROFILE
日本航空株式会社
本社
東京都品川区東品川2-4-11 JALビル
創業
1951年8月
資本金
1,885億5,033万円
従業員数
16,486名(2002年5月末現在)
事業概要
2002年10月2日、日本航空株式会社と株式会社日本エアシステムの株式会社日本航空システム設立のもとでの経営統合による新「JALグループ」が誕生。「総合力ある航空輸送グループとして、お客さま、文化、そしてこころを結び、日本と世界の平和と繁栄に貢献する」という企業理念のもと、国内線利用者利便の一層の向上と国際競争力強化を目指す。
URL
http://www.jal.jp/
この記事は、「日経コンピュータ」2003年2月10日号に掲載されたものです。
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JP1
の詳細は,製品ホームページでご覧ください。
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SAP、SAP R/3は、SAP AGのドイツおよびその他の国における登録商標または商標です。
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その他、会社名,製品名は,各社の商標もしくは登録商標です。
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