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Casestudy
(PDF版:241KB)
肥後銀行
メインフレームの勘定系DBとオープンシステム上のスケーラブルデータベース「HiRDB」をほぼリアルタイムに連携。信頼性と先進性を兼ね備えたシステム構築に成功。
肥後銀行では、信頼性と先進性という2つのニーズを両立させるシステムを、メインフレーム上の勘定系DBとオープンシステム上のDBをAPJ(アプリケーション・ジャーナル)連携することによって実現した。中核となるRDBは、信頼性の高い日立のスケーラブルデータベース
「HiRDB」
を採用。24時間オンラインサービスを継続しながら、そのデータを利用した全件検索などのバッチ処理にも対応できる、21世紀のミッション・クリティカル・システム構築に成功したのである。
メインフレームの信頼性と高度な情報活用ニーズの両立へ
「銀行のシステムで一番大切なのは信頼性です。HiRDBを利用したAPJ連携システムによって、高度な信頼性を確保しながら、21世紀の要求に応えることのできるシステムを構築することができました」と、肥後銀行 システム部 調査役補 友枝 善穂氏は強調した。
熊本県最大の地方銀行である肥後銀行は、安定した自己資本比率を維持し続けてきたことで定評がある。米国の有力格付け会社S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が2000年11月に発表した長期格付けでは「Aマイナス」であり、全国邦銀の4位に相当する高い評価を受けている。
勘定系オンライン業務は、日立のメインフレームを採用して、信頼性の高いサービスを実現してきた。しかし、金融ビッグバンの進展によって、業務や金利の自由化が進み、24時間対応まで視野に入れたシステム構築が必要になってきたのである。
信頼性と先進性とを兼ね備えたシステムをどのように構築するか。そこで注目したのが、勘定系DB更新ログであるアプリケーション・ジャーナルを使って、逐次データレプリケーションするAPJ連携だ。
「メインフレーム上に作成するオンライン元帳は、表形式ではないため全件データの分析などには適していません。情報活用や24時間対応を図るには、オンラインデータをできるだけリアルタイムに近い形でオープンシステム上のRDBに持ってくることが不可欠であり、これを実現するのがAPJ連携でした」と友枝氏は説明する。
肥後銀行 システム部調査役補 友枝 善穂 氏
メインフレームとオープンシステムのほぼリアルタイムなデータ連携を実現
APJ連携には、3つの大きなメリットがある。
第1は、信頼性の高いメインフレーム上のオンラインシステムをゼロから作り直すことなく、リアルタイムなデータを使った高度な情報活用のできる環境を構築できること。
メインフレームのデータを夜間バッチ処理でファイル転送するやりかたでは、1日遅れのデータ活用になってしまい、これからの24時間サービス時代に対応できるシステムとは言えない。APJ連携なら、その瞬間瞬間の勘定系DBの更新結果を反映しながら、しかも情報活用が容易にできるような副元帳を、RDB上に作ることができる。
第2に、RDB上に構築した副元帳データベースは随時集計などの処理を行うことができる。
「これまでは、オンライン処理を停止してからデータ集計やバックアップなどのバッチ業務を行っていました。しかし、インターネットバンキングなど24時間対応となれば、オンラインサービスを継続したままで、バッチ処理ができるシステムにしておかなければなりません。1日単位でバッチ処理を行うのではなく、逐次バッチ処理のできるシステムをRDB上に構築したかったのです」と友枝氏は言う。
第3に、RDBなら表の更新や検索がSQLのみでスピーディーにできる。
「累積顧客数は300万件にのぼっており、CRM戦略を立てるときには、これらの膨大なデータを店舗単位、時間単位で分類・集計し直す必要が出て来ます。こうした処理も、SQLなら簡潔な記述で済みますから、プログラム開発に比べて大きく生産性を上げることができます」と、肥後銀行 システム部 システム開発課 村田 誠治氏は説明する。
システム設計を行った1994〜1995年当時、勘定系に近いシステムをプログラムレスで開発する発想は先進的で、思い切った決断だったと言えるだろう。
肥後銀行 システム部システム開発課 村田 誠治 氏
ミッション・クリティカルなシステムだから「HiRDB」を選択
RDBとして、日立の「HiRDB」を選んだ最大の理由は、信頼性が高いことだ。
「トラブル時のリカバリ、ハードウェア障害への対応、ロールバック機能など、最も信頼性の高いデータベースと評価しました」と友枝氏は「信頼性」という言葉に力を込めて語る。
日立の機敏なサポートも信頼性の下支えとなっている。
「実は、別システムで海外製品を使ったところ、1つのトラブルを解決するのに2ヵ月もかかって辟易したことがありました。日立の場合は、何か問題が起きると、電話1本でHiRDBの開発担当者にまで情報が伝わり、すばやく対応してもらえました」と、株式会社肥銀コンピュータサービス システム部システム開発課 佐々木 淳一郎氏は人間系のサポートの重要性を指摘する。
株式会社肥銀コンピュータサービス システム部システム開発課 佐々木 淳一郎 氏
オンラインサービスを継続しながらRDB上でバッチ処理
APJ連携システムは、2段階に分けてカットオーバーしていった。
まず、1998年5月には、メインフレーム上のオンライン元帳をHiRDBにバッチ処理でローディングするシステムを稼働開始。翌99年5月に、逐次データ更新を行うAPJ連携システムがサービスを開始した。
APJ連携システム構築を機に、勘定系オンラインシステムも、日立の最新のエンタープライズサーバ「MP5600シリーズ」に置き換えた。MP5600/200上で処理されたオンラインシステムの取引ログは、データ連携用のMP5600/200に送られ、さらにUNIXサーバ上のHiRDB Datareplicatorによってレプリケーションされ、HiRDB上の副元帳が更新される。
つまり、勘定系メインフレーム上のオンライン元帳と、HiRDB上の副元帳とは、最大2分程度のディレイで、ほぼリアルタイムな同期を取っている。
副元帳データベース、日次の取引履歴を蓄積したログデータベースなど、複数のデータベースに対してバッチ処理を行い、目的別データベースや帳票出力用データを作成する仕組みは、日立の統合システム運用管理ミドルウェア「JP1」によって自動化している。なお、帳票出力は、データ連携用のMP5600シリーズにデータを戻して、メインフレーム専用の高速プリンターを使っている。
1日400万件のトランザクションを24分割したDBで高速に並列処理
HiRDB上に構築したデータベースは約300種類。月次の累積ログは2ヵ月分で3千万件もあり、1日のトランザクションはピーク時には400万件にものぼる。これに対応するため、データベースは24分割したうえで、UNIXサーバ8台に分散配置した。膨大な数のデータ更新や検索は、HiRDB/Parallel Serverにより24分割したデータに対して並列処理されるため、極めて高速に処理できるのである。
APJ連携システム構築の最大の成果は、オンラインサービスの高い信頼性を維持しながら、バッチ処理や参照処理の充実を図ることができたことだ。24時間サービスも可能になった。営業店のWebシステム化にも対応できる。また、SQLを採用したことによって、開発効率も大幅に向上した。
クライアントPCから自在にアクセスして、非定型的な問い合わせや分析を行うこともできる。
個別の残高照会や、通帳を紛失したといった突発的な事故に、オンラインサービス中でも即応できるようになった。
「店別実績が当月目標のどこまで達しているかを把握したり、お客さまの最新残高を検索してから外回りに出掛けるなど、機敏なデータ活用ができるようになりました」と友枝氏はにっこりする。
2003年1月、肥後銀行、みちのく銀行、山陰合同銀行の3行は、オンラインシステムを統合。ソフトウェア開発を共同化して、さらに開発コスト低減と期間短縮を図っていく計画だ。その際のバッチシステムのインフラとしても、今回のAPJ連携システムが採用される。
信頼性の高いHiRDBを中核に据えたAPJ連携によって、肥後銀行は21世紀に飛躍するミッション・クリティカル・システムを手に入れたのである。
USER PROFILE
肥後銀行
本店
熊本市練兵町1
創立
大正14年7月25日
資本金
181億円(2000年3月31日現在)
従業員数
2,578人(同上)
預金残高
2兆8,108億円(同上)
事業概要
熊本県トップの地方銀行。自己資本比率10.75%と、安定した財務内容を維持してきた。「げんき、ゆうき、のんき」をコーポレート・キャッチフレーズとして、地元産業の安定的な発展を支え、自然環境まで視野に入れた「生活自然体 肥後銀行」として21世紀にチャレンジしようとしている。
URL
http://www.higobank.co.jp/
この記事は、「日経コンピュータ」2001年1月29日号に掲載されたものです。
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HiRDB
の詳細は,製品ホームページでご覧ください。
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