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事例紹介

Casestudy
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キヤノン株式会社
 
データ統合基盤「DataStage」で市場品質分析システムを構築。世界中の販売会社から収集/集約した情報を駆使して市場品質向上を達成
 
キヤノン株式会社(以下、キヤノン)では、世界中の販売会社から修理やコールセンターの情報を収集し、テキストマイニングによって自動分類したうえで、多次元分析を行うことのできる市場品質分析システムを開発した。販売会社ごとに異なるデータフォーマットを変換/集約し、データウェアハウスへ高速にロードするツールとしては、日立のデータ統合のための情報資産管理基盤「DataStage」を採用。プログラムを作るのに比べて開発/保守の効率が非常によく、効果的なデータウェアハウスを短期間で構築/運用することに成功した。
 

これからのメーカーは品質管理が差別化ポイント

 

キヤノンが、カメラ、デジタルカメラ、バブルジェットプリンタ、スキャナなど、コンシューマー製品を対象に、さらなる市場品質向上を目指した改革に着手したのは1998年のことだ。

「それまでは事業部単位で品質管理を行っており、品質の定義も事業部単位で異なっていました」と、キヤノン 品質本部 品質企画センター 副部長 高橋 昌雄氏は言う。

しかし、プリンタなどの情報機器はもちろん、デジタルカメラやビデオもネットワークに接続されるようになり、製品間の垣根がなくなってきた。また、販売会社は世界各国に存在し、ビジネスがますますグローバル化している。「『グローバル・エクセレントカンパニー』を標榜するキヤノンにとって、事業部の壁を超えて品質管理基準を一元化/標準化したうえで、グローバル市場の品質に関する情報をよりスピーディに収集し、把握・分析して次の品質向上へ活かしていくことが不可欠になってきたのです」(高橋氏)。

プロジェクトは1999年にスタート。出荷後の市場故障率を3分の1に削減し、また製品を開梱したときに不具合があったり、付属品が足りないなどの着荷時不良を2分の1に削減するなどの目標を立てた。これらの目標は、日本国内はもとより、米国、オーストラリア、欧州、アジアという全世界に共通する、キヤノンのグローバルな改革目標である。

これを達成するためには、世界各地から市場品質に関する情報を収集し、一元的に管理できるデータウェアハウス・システムと、データ分析と現場へのフィードバックを効率よく行うBI(Business Intelligence)ツールの導入が必要であった。

高橋 昌雄 氏の写真
 
キヤノン株式会社
品質本部
品質企画センター
副部長
高橋 昌雄 氏
 
 

短期開発して早く効果を出すために「DataStage」を採用

 

キヤノンで開発した市場品質情報分析システムQITS(Quality Information Tracking System)は、2つのシステムから構成される。ひとつは、返品、着荷不良、修理などに関する情報を集約するデータウェアハウス・システムで、FITS(Field Information Tracking System)と呼ばれる。もうひとつは、コールセンターに寄せられる問い合わせ情報を統合するデータウェアハウスで、CATS(Call Analysis Tracking System)と呼ばれる。

システム構築が先行したのはFITSのほうで、2000年3月、米国の販売会社から市場品質情報を収集し分析する仕組みがスタートした。

「米国の販売会社への対応は、Visual Basicによるプログラム開発で作り上げました。しかし、開発する段階でわかったことは、これからグローバル展開していくためには、データの抽出、マージ/変換/集約、そしてデータウェアハウスへのロードを行ってくれるETL(Extraction、Transformation and Loading)ツールの導入が必要だということでした」と、システム・インテグレーションを担当したキヤノン販売株式会社(以下、キヤノン販売)ITサービス販売推進本部 林 佳伸氏は言う。

世界各地の販売会社で管理している品質情報はフォーマットが統一されていない。日付のデータ形式だけでも、国によって違う。修理項目の分類なども、製品ごと、国ごとに異なる場合がある。

データフォーマットの統一を行うETLツールに、さらにキヤノン販売が独自のデータのエラーチェック機能を組み込めば、各国の販売会社にシステムを作り直す負担をかけることなく、異なるフォーマットの情報をそのまま送信してもらうことができる。また、FITS構築後に販売会社がシステムを変更してデータフォーマットが変わった場合にも、柔軟に対応でき、結果として維持/保守コストの削減につながる。

各社の製品を比較検討した結果、日立の「DataStage」を選択した。評価ポイントは多岐にわたる。

第1に、機能が豊富で、きめ細かい要求もすべて満たしていた。

「米国のシステムのプログラムと同様の手続きも簡単に記述でき、変化する各種のコード体系にも柔軟に対応できます。またテーブル項目名も選択式で選べるなど使い勝手がよかった」と林氏は言う。

第2に、開発効率が高く、短期開発ができる。開発効率の高さには2つの意味がある。ひとつは、DataStageがGUIベースのツールであり、アイコンのドラッグ&ドロップの操作でプログラム開発ができるということだ。GUIの操作で作成したジョブから、高品質なデータ変換プログラムを自動生成するのである。また、アイコン操作が中心であるため記述ミスが減り、プログラミング経験の少ない人でも品質の高いプログラムを効率よく開発できる。

もうひとつは、作成したジョブが再利用しやすいことである。1つの国の販売会社のために開発したモジュールは、別の国のシステムに利用できる。また、複数の国のシステムをジョブ単位にまとめて、並行開発することもできた。

第3に、これだけ優れた機能を満載しているにもかかわらず、他社製品に比べて安価であった。

そして第4に、初めてのDataStage導入でも安心して実施できた。

「シェアが高く、安定したツールであることは評価していましたが、日立は個別講習会も実施してくれたうえで、開発中に問題が発生した場合の支援も約束してくれました」と林氏は語る。

林 佳伸 氏の写真
 
キヤノン販売株式会社
ITサービス販売推進本部
林 佳伸 氏
 
 

世界各地の情報収集/分析が毎月たった1日でできる

 

短期に開発して、少しでも早く効果を出したいというキヤノンの思いを、DataStageは強力に支援した。FITSのグローバル展開は順調に進み、現在では、年間100万件にのぼる世界各地の市場品質情報が、イントラネット経由で収集される。

FITSで収集する市場品質情報のほとんどは、サービスマンが書いた修理報告などの生情報である。これをExcelファイルで送信してもらい、いったんファイルサーバに格納。DataStageでデータをクレンジングし、データウェアハウスへロードする。

事業部ごとに効率よくデータ分析を行うためのデータマートはRed Brick Warehouseで構築、BIツールとしては、Brio Intelligenceを導入した。また、自然語で書かれた修理レポートに対してテキストマイニングを行い自動分類をするシステムも導入し、キヤノンが開発した英語から日本語への機械翻訳システムとともに、キヤノン販売がシステム・インテグレーションを行った。

FITSの完成によって、市場品質に関する情報は、製品別、カテゴリー別、国別、生産工場別など、必要に応じてきめ細かく分類することができるようになった。特に、故障、返品、着荷不良などに関する現象トップ5と、処置内容トップ5を自動的に分析できるようにしたため、これを重点的に解消することによって、短期間で大きな成果をあげることができる。しかも、事象発生から分析に基づいて次のアクションを起こすまでの時間が圧倒的に短くなった。

従来は、品質管理の担当者が何か仮説を立てて検証しようとすると、まず世界各地の販売店に依頼して元データを送ってもらうところから始めなければならなかった。さらにExcelの表を作って分析したりしているとかなりの時間がかかってしまう。ところがFITSでは、DataStageによるデータ収集を行った翌日には、トップ5などの集計が完了している。さらに、新しい切り口で情報を見たいときには、システム部門に依頼しなくてもBIツールを使って、自由な視点で分析ができる。オンデマンドな分析体制が実現したのである。

「世界中のさまざまな部門で、市場品質情報が共有でき、品質向上への対策を自発的に講じることのできる環境が出来上がりました」と高橋氏。DataStageの活用によって、品質向上の目標を達成できる環境が整ったのである。

今後の課題としては、別系統として構築したコール情報分析システムのCATSと、FITSとの融合がある。また、分析情報を活用することによって、問題が発生する前にアラームを出すことができる市場品質変化点予測システムの開発も目指している。

「品質向上はメーカーとして当然の責任であると同時に、差別化の重要なポイントです。日立には、テキストマイニングに関する技術支援をはじめ、市場品質をより向上させるための総合的なバックアップを期待しています」と高橋氏は結んだ。

 
キャノンの市場品質分析システム(FITS)概要の説明図
 
 

USER PROFILE

キヤノン株式会社
創業 1937年
設立 1947年
本社 東京都大田区下丸子3-30-2
資本金 1,652億8,700万円(2001年度末)
売上高 連結2兆9,075億7,300万円、
単独1兆7,074億5,900万円(2001年度)
従業員数 連結9万3,620人、
単独2万1,313人(2001年度末)
事業概要 複写機、コンピュータ周辺機器、情報・通信機器、カメラ、光学機器およびその他。

 
 

PARTNER PROFILE

キヤノン販売株式会社
設立 1968年
本社 三田本社 東京都港区三田3-11-28
幕張本社 千葉県千葉市美浜区中瀬1-7-2
資本金 733億308万円(2001年度末)
売上高 7,868億2,700万円(2001年度)
従業員数 7,336名(2001年度末)
事業概要 キヤノン製品の販売とそれに関連する業務全般を担当。近年はアライアンスの充実とグループシナジーの発揮に力を入れており、システム・インテグレーションを中心としたソリューションビジネスに豊富な実績とノウハウを蓄積している。

 


 
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