キヤノンで開発した市場品質情報分析システムQITS(Quality Information Tracking System)は、2つのシステムから構成される。ひとつは、返品、着荷不良、修理などに関する情報を集約するデータウェアハウス・システムで、FITS(Field Information Tracking System)と呼ばれる。もうひとつは、コールセンターに寄せられる問い合わせ情報を統合するデータウェアハウスで、CATS(Call Analysis Tracking System)と呼ばれる。
システム構築が先行したのはFITSのほうで、2000年3月、米国の販売会社から市場品質情報を収集し分析する仕組みがスタートした。
「米国の販売会社への対応は、Visual Basicによるプログラム開発で作り上げました。しかし、開発する段階でわかったことは、これからグローバル展開していくためには、データの抽出、マージ/変換/集約、そしてデータウェアハウスへのロードを行ってくれるETL(Extraction、Transformation and Loading)ツールの導入が必要だということでした」と、システム・インテグレーションを担当したキヤノン販売株式会社(以下、キヤノン販売)ITサービス販売推進本部 林 佳伸氏は言う。
世界各地の販売会社で管理している品質情報はフォーマットが統一されていない。日付のデータ形式だけでも、国によって違う。修理項目の分類なども、製品ごと、国ごとに異なる場合がある。
データフォーマットの統一を行うETLツールに、さらにキヤノン販売が独自のデータのエラーチェック機能を組み込めば、各国の販売会社にシステムを作り直す負担をかけることなく、異なるフォーマットの情報をそのまま送信してもらうことができる。また、FITS構築後に販売会社がシステムを変更してデータフォーマットが変わった場合にも、柔軟に対応でき、結果として維持/保守コストの削減につながる。
各社の製品を比較検討した結果、日立の「DataStage」を選択した。評価ポイントは多岐にわたる。
第1に、機能が豊富で、きめ細かい要求もすべて満たしていた。
「米国のシステムのプログラムと同様の手続きも簡単に記述でき、変化する各種のコード体系にも柔軟に対応できます。またテーブル項目名も選択式で選べるなど使い勝手がよかった」と林氏は言う。
第2に、開発効率が高く、短期開発ができる。開発効率の高さには2つの意味がある。ひとつは、DataStageがGUIベースのツールであり、アイコンのドラッグ&ドロップの操作でプログラム開発ができるということだ。GUIの操作で作成したジョブから、高品質なデータ変換プログラムを自動生成するのである。また、アイコン操作が中心であるため記述ミスが減り、プログラミング経験の少ない人でも品質の高いプログラムを効率よく開発できる。
もうひとつは、作成したジョブが再利用しやすいことである。1つの国の販売会社のために開発したモジュールは、別の国のシステムに利用できる。また、複数の国のシステムをジョブ単位にまとめて、並行開発することもできた。
第3に、これだけ優れた機能を満載しているにもかかわらず、他社製品に比べて安価であった。
そして第4に、初めてのDataStage導入でも安心して実施できた。
「シェアが高く、安定したツールであることは評価していましたが、日立は個別講習会も実施してくれたうえで、開発中に問題が発生した場合の支援も約束してくれました」と林氏は語る。
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