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日立が、建設・保全の作業効率化を実現する「原子力メタバースプラットフォーム」を開発
データに基づく最適な投資計画立案やプラント保全などを実現する「データドリブン発電所」の基盤とし、電力事業者の課題解決に貢献
- 日立グループにおける原子力事業の知見とデジタル技術を融合し、メタバースとAIを活用したプラットフォームを開発
- 高精度なメタバース空間上に原子力発電所を再現したデジタルツインのプラットフォームにより、現場の状態を電力事業者、工事施工会社などのパートナー間で共有することで、建設・保全における設計、施工から資産管理までの作業効率化を実現
原子力メタバースプラットフォームで再現される現場空間および関連機能のイメージ
株式会社日立製作所(以下、日立)は、このたび、メタバースとAI活用により原子力発電所の安全対策工事や、今後の新規建設・保全・廃止措置における設計、現場施工から資産管理までの作業効率化を実現する「原子力メタバースプラットフォーム」を開発しました。高精度な点群データと3D CADデータを元にメタバース空間上に原子力発電所を再現したもので、電力事業者や工事施工会社などのパートナーとの活用により、ステークホルダー間での情報共有・工程調整・資産管理における生産性向上をめざします。
また、本プラットフォームは、設備の信頼性向上とワークマネジメントの改善、それに伴う稼働率の向上といった電力事業者が抱えるさまざまなニーズや課題に対して、データを活用した価値提供・課題解決を行うことを目的に当社が構築をめざす「データドリブン発電所」の基盤となるものです。日立のドメインナレッジとAIを用いてデータを価値に変換し、お客さまや社会の課題解決に取り組むLumada 3.0を体現するものであり、当社が半世紀にわたる原子力事業で培ってきた知見と日立グループのデジタル技術を活用し、GlobalLogicと共にOne Hitachiで開発しました。 原子力メタバースプラットフォーム上で現場のデータを収集・集約・評価することで、データに基づく最適な投資計画立案やプラント保全などの実現をめざします。
開発の背景
原子力発電所の新規設備導入や改造においては、最短の工事期間で現場作業を終わらせるため、精度の高い工事計画と確実な実行が求められます。一方、原子力発電所は、現場への立ち入りが法令などにより制限されるため、現場調査を行える期間や回数が限られるほか、運転中の原子力発電所の場合、立ち入ることができない場所もあります。そのため、工事においては現場状況に合わせてさまざまなステークホルダー間の調整が発生し、電力事業者を中心にそれらの情報共有と作業計画の見直しが必要となります。さらに、東日本大震災以降、国内の多くの原子力発電所が稼働を停止していた間に、高度な技術や知識をもつ熟練者の定年退職が進んだことや、原子力発電所の新規建設におけるOJT機会の減少、少子高齢化に伴う労働人口の減少などを背景に、技術伝承や生産性向上が原子力業界全体の課題となっています。
そこで、当社は、最新の現場状況の正確な把握とステークホルダー間での共有を容易にすることで、手戻り作業の削減やリアルタイムでの工程調整などを実現し生産性向上を図ることを目的に、原子力メタバースプラットフォームを開発しました。
原子力メタバースプラットフォームの特徴
(1) 高精細点群+3D CADの重畳表示
高精度・高密度な点群データ*1と3D CAD*2データを重ねて表示することで、メタバース空間に原子力発電所を再現。メタバース空間上での現場状況の精緻な確認や、干渉物をはじめとした図面と現場状況の相違点把握などを可能にします。
(2) AI検索
AIを活用した自然文による設計図書の全文・類語検索機能を搭載しています。メタバース上の位置や指定設備の情報を活用することで検索の高精度化を図っています。
(3) マルチユーザー協働空間
複数ユーザーによるメタバース空間への同時アクセスが可能です。拠点によらないステークホルダー間でのコミュニケーションや、設備などの追設・寸法のリアルタイムでの共有を実現、迅速な意思決定を支援します。
(4) エンジニアリング支援
メタバース空間上でのセンチメートル単位での高精度な寸法測定や、オンライン会議の開催、特定の設備・エリアへのメモ・ファイルの添付、機器の配置検索、資産情報紐づけなどの機能により、エンジニアリング業務を支援します。
(5) セキュリティ
アクセス許可を得たユーザーのみログイン可能とするほか、メタバース空間上のやり取りはすべて暗号化されるため、情報セキュリティを確保したコミュニケーションが可能です。
- *1
- 3Dスキャナーやカメラなどで取得した点の集合体で、空間や対象物の形状を高密度の点で3次元に表現したもの
- *2
- Computer Aided Design: コンピューター上で設計や製図を行うツール
原子力メタバースプラットフォームの今後の展開
原子力メタバースプラットフォームをベースに、設備状態などの現場データを収集・集約し、故障の事前検知や設備状態の将来予測を行うことで最適な投資計画やプラント保全計画の立案を支援するなど、データに基づく意思決定を実現するデータドリブン発電所を構築します。これにより、設備の信頼性向上とワークマネジメントの改善、それに伴う稼働率の向上といった、電力事業者が抱えるさまざまなニーズや課題に対して、データを活用した価値提供・課題解決を行うことをめざします。
データドリブン発電所のイメージ
原子力メタバースプラットフォームに関するウェブサイト
Hitachi Social Innovation Forum 2025 JAPAN, OSAKAでの紹介について
原子力メタバースプラットフォームの概要は、日立が2025年7月17日(木)に開催する「Hitachi Social Innovation Forum 2025 JAPAN, OSAKA」において、ご覧いただけます。7月17日(木)11 : 50から開催する「BS01-03: エネルギーとデジタル融合による持続可能な未来への取り組み」および展示会場の「EX01-04: 日立のメタバースを活用した原子力業界の次世代の働き方」にてご紹介する予定です。
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。