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ESG投資を促進するデジタルプラットフォーム「Sustainable Finance Platform / Engagement Support Service」において、IFRSサステナビリティ開示基準(IFRS S1・S2)対応テンプレートを国内で初めて提供
株式会社日立製作所
一般社団法人サステナブルファイナンスプラットフォーム運営協会(以下、SFPF運営協会)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、このたび、運用機関と上場企業をシームレスにつなぐことでESG投資を促進するデジタルプラットフォーム「Sustainable Finance Platform / Engagement Support Service(サステナブルファイナンスプラットフォーム / エンゲージメントサポートサービス)(以下、SFP-ESS)」において、国際サステナビリティ基準審議会(以下、ISSB)が策定する、IFRSサステナビリティ開示基準(IFRS S1・S2*1)に対応したテンプレート機能を国内で初めて提供開始します。
具体的には、日立がIFRS財団とのライセンス契約に基づき開発したSFP-ESSにおいて、SASB*2およびIFRS S1・S2に対応したテンプレート機能(以下、本テンプレート)を追加し、SFPF運営協会がサービス提供者として、運用機関と上場企業に展開します。
本テンプレートの提供開始により、日本の上場企業におけるIFRS S1・S2に沿った情報開示や、上場企業と運用機関とのコミュニケーションをサポートすることで、サステナビリティを意識した企業活動が海外を含めた機関投資家から適切にESGの観点で評価され、企業価値が向上することに貢献します。
なお、SFPF運営協会は、さまざまなステークホルダーをつなぎ、効果的・効率的なコミュニケーションを促進することでESGマーケットのさらなる発展へ貢献するための課題解決と事業検討を目的として、2023年7月に金融機関を中心としたMS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社、損害保険ジャパン株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、日本生命保険相互会社、株式会社日立製作所、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行の8社で設立した一般社団法人です。
- *1
- IFRS財団が2023年6月に公表した開示基準。IFRS S1号(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項)及びIFRS S2号(気候関連開示)で構成。
- *2
- Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)の略称。ESG要素に関する開示基準を設定した非営利団体。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が運営している。
SFP-ESSにおけるIFRS S1・S2対応開始の背景
近年、サステナビリティへの企業の取り組みに対する投資家の関心が高まっており、上場企業はサステナビリティに関する取り組みとその開示が進んでいます。しかし、開示にあたっては国内外でさまざまな開示基準が存在していることから、特にグローバルで事業活動を行う上場企業において、開示担当者はリソース不足に加え、参考にすべき基準を十分に把握できず、投資家の情報開示に対する期待値が判断できないといった課題があります。このような状態を解消するため、ISSBはサステナビリティ情報開示の国際的なベースラインとなる開示基準として、2023年6月にIFRS S1・S2を公表しました。
国内においては、サステナビリティ基準委員会(以下、SSBJ)が、日本におけるサステナビリティ開示基準として、IFRS S1・S2の全ての要求事項と整合性をとった日本版S1・S2(SSBJ基準)を策定し、2025年3月までに確定基準が公表される予定です。また、金融庁は、2023年3月期より有価証券報告書においてサステナビリティ情報の開示の適用を開始するとともに、2027年3月期以降、プライム市場上場企業に対して段階的にSSBJ基準を適用することを検討しています。そのため、上場企業は将来義務化される情報開示への対応と、自社の企業価値を高めるため、IFRS S1・S2に基づくサステナビリティ情報の収集・開示プロセスの整備などが急務となっています。
このような課題を受けて、SFPF運営協会は、これまで運用機関や上場会社など100社以上と意見交換を行い、上場企業の開示担当者の負担を軽減しESG投資を促進するため、SFP-ESSを2023年10月からベータ版として提供し、価値検証をおこなってきました。そして今回、本テンプレートの適用によるIFRS S1・S2対応を開始することで、上場企業におけるESG情報の開示への円滑な対応の支援と、企業価値向上への貢献をめざします。
SFP-ESSの概要
SFP-ESSは、ESG投資を行う運用機関と上場企業がシームレスにつながり、相互理解を深めるツーサイドプラットフォームです。運用機関が上場企業に期待するESG情報開示ニーズをSASBスタンダードに沿って提示し、上場企業は登録された情報を参照することで、運用機関のニーズを把握して自社の開示方針の策定に活用することが可能です。
上場企業は、テンプレートの開示項目に沿って自社の公開データを、コメント情報とあわせて入力・送信することで、閲覧する運用機関は上場企業のデータを横比較しやすく、かつデータの詳細も含めて把握することができます。
IFRS S1・S2に対応する本テンプレートの特長
IFRSS1・S2は、開示基準そのものを説明したドキュメントとIFRSサステナビリティ開示タクソノミー*3、そしてISSB基準の自主適用時のガイドなど支援資料も公開されています。しかし、日本語ドキュメントは限定的であり、開示すべき情報をどのように統合報告書などに反映するかは、各企業の判断に委ねられています。本テンプレートは、こうした上場企業の実務支援に向けて、タクソノミーの定義に従ってデジタルデータとしてプラットフォームに保存できるよう、日本語に対応した入力インターフェースを備えています。具体的には、以下の3つの特長を通じて、上場企業のIFRS S1・S2の理解と対応を支援します。
- *3
- IFRSサステナビリティ開示タクソノミーは、サステナビリティ関連の財務開示をデジタル形式でタグ付けするために設計されたフレームワーク。情報のデジタル化を促進し、投資家や利害関係者が企業のサステナビリティパフォーマンスを比較・評価しやすくすることを目的としている。
- 開示項目を3階層(大・中・小分類)に分類
IFRSサステナビリティ開示タクソノミー情報は、4つのコア・コンテンツ(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標および目標)で詳細な分類が行われていますが、項目毎に階層構造が異なっています。そのため、上場企業の開示担当者における情報入力の効率性を考慮し、情報を大・中・小分類に区分化することで、情報の階層構造を可視化しています。これにより、企業の開示担当者の、IFRS S1・S2の定義内容に沿った情報収集の円滑な理解に寄与します。 - テンプレート上で開示項目ごとのIFRS財団提供の補足情報を掲載
テンプレート上にIFRS財団から提供されている「リファレンス内容」やテンプレート入力時に考慮してほしい「ワンポイントアドバイス*4」などの補足情報を開示項目ごとに掲載することで、IFRS S1・S2基準に沿った上場企業側での適切なデータ入力を支援します。 - 開示に必要な情報が直感的に理解可能な表スタイルや選択肢を提供
開示項目ごとに必要な情報を直感的に理解し、入力できるよう、項目ごとに最適な表スタイルを提供しています。例えば、「はい・いいえ」での二択の回答が可能な項目については、それに対応した回答欄を設けています。また、リスクの記載が求められる項目においては、そのリスクの回答欄に加えて、リスク種類(物理リスク・移行リスク)や時間軸(短期・中期・長期)の選択形式を導入することで、入力情報の漏れや不足を防止することが可能です。
- *4
- ワンポイントアドバイスに関する詳細内容については検討中
(テンプレートメインシートの例)
今後の展開
SFPF運営協会と日立は今後、本テンプレートを適用したSFP-ESSを広く上場企業に展開し、先行してIFRS S1・S2の準備にかかる複数の上場企業との議論を通じて、利便性向上のための意見や要望を採り入れ、IFRS S1・S2対応に向けた、より有用なテンプレートに発展させていきます。
 また、テンプレートの発展に加えてSFP-ESSの機能向上にも取り組んでいきます。具体的には、運用機関と上場企業との情報開示・対話およびエンゲージメントを推進するうえで必要となるサービス機能の提供に向けて、運用機関の開示ニーズの登録機能などの検討・開発を進め、順次リリースします。あわせて、SSBJ基準への対応として、2025年3月までにSSBJより公表される確定基準の取り込みを予定しています。
詳細はPDFをご覧ください。