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企業情報ニュースリリース

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2017年9月14日

高温や放射線に強い炭化ケイ素(SiC)を用いたCMOS集積回路技術を開発

センサーと組合せ、過酷環境下におけるエッジコンピューティングの実現に貢献

[画像]SiC-CMOS製集積回路(オペアンプ)試作品の外観
SiC-CMOS製集積回路(オペアンプ)試作品の外観

  株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、高温および放射線耐性に優れた炭化ケイ素(SiC)を用いたCMOS*1(SiC-CMOS)集積回路技術を開発しました。本技術により、自動車・産業機器を始め、原子力発電や航空宇宙といった産業において、過酷環境下におけるセンシングデータの高精度な信号処理が可能となります。今後、日立は本技術とセンサーを組合せ、あらゆる環境で安定的に動作する高信頼なエッジコンピューティングの実現に貢献します。

  IoT*2社会では、さまざまな環境でセンシングしたデータを高精度に処理し、各システムと連携することが求められます。また、原子力発電や航空宇宙産業においては、IoTによるさらなる機器のメンテナンス品質の向上や安全性向上が期待されています。現在、センシングデータの信号処理には、主にシリコンを用いたCMOS集積回路が使われていますが、高温・放射線の影響を受けやすく、高温や強い放射線にさらされる過酷環境下での安定動作が課題でした。そのため、集積回路を過酷環境から離して設置したり、高温・放射線を遮蔽する仕組みを追加するなどの対策が必要となり、長距離転送に伴うデータの劣化や設置環境の制限といった問題がありました。

  そこで日立は、高温および放射線耐性に優れたSiCを用いて、過酷環境下での安定的な信号処理を可能とするSiC-CMOS集積回路技術を開発しました。集積回路の基本要素であるCMOSはn型MOS*3とp型MOS*4から構成されますが、SiCを用いたp型MOSについては、n型MOSと比較してデータ処理性能が低いなどの理由から開発が進められていませんでした。今回、日立はパワー半導体事業で培ったSiCへの不純物注入や熱処理の加工技術を活用することで、データ処理性能が高いp型MOSを開発し、信号処理集積回路に適用しました。また、放射線への耐性を向上させるため、集積回路を電気的に保護する絶縁膜の中に、放射線の影響を緩和する保護電極を挿入したデバイス構造を採用し、高温・放射線の影響を受ける過酷環境下におけるSiC-CMOS集積回路の安定動作を実現しました。本技術を用いて、センサーからの信号を増幅処理するオペアンプ*5をSiC-CMOSで試作したところ、要求される信号処理性能を維持しつつ30kGy(キログレイ)*6まで正常動作する放射線耐性を確認しました。これは、従来使用されているシリコン製オペアンプの100倍にあたる性能に相当し、原子力発電や航空宇宙産業での利用が期待できます。

  今後、日立は高温や高放射線場などの過酷環境に対応したエッジコンピューティングシステムを構築し、社会インフラシステムの高信頼化に貢献していきます。

  なお、本成果は、2017年9月17日〜22日に米国ワシントンDCで開催される国際会議ICSCRM(International Conference on Silicon Carbide and Related Materials)にて発表する予定です。

*1
CMOS: Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)
*2
IoT: Internet of Things
*3
n型MOS: 電流を電子が運ぶ金属酸化膜半導体素子
*4
p型MOS: 電流を正孔が運ぶ金属酸化膜半導体素子
*5
オペアンプ: 微弱な信号を増幅することができる集積回路。
*6
Gy(グレイ): 放射線によって物体に与えられたエネルギーを表す単位。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 研究開発グループ 研究管理部 [担当:小平、安井、石川]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : 042-323-1111(代表)

以上

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