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2016年6月21日
膨大な情報の高速処理により超スマート社会の実現(Society5.0)に貢献
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、イジングモデル*1を用いた新型半導体コンピュータの実用化に向けた前処理アルゴリズムを開発しました。新型半導体コンピュータは、都市における交通渋滞やグローバルサプライチェーンにおける物流コストなど、システム化された社会インフラの複雑な課題に対する実用解*2を計算処理により導き出し、システムの高効率化・高信頼化を実現するため、日立が独自に開発を進めているものです。今回開発したアルゴリズムは、新型半導体コンピュータが社会インフラのシステム課題を計算処理可能な形に自動変換する前処理技術で、新型半導体コンピュータの実用化の基礎となります。日立は、新型半導体コンピュータを実用化し、社会への適用をめざすことにより、大規模化・複雑化する社会インフラのシステム課題を解決し、「超スマート社会*3」の実現(Society 5.0*4)に貢献します。
現在、インターネットの活用によりあらゆるモノや人がつながるIoTをはじめとするデジタライゼーションが加速しています。その一方で、デジタル化により社会インフラが急速に大規模・複雑化していることから、システム課題を最適化するための技術が求められています。都市における交通渋滞の解消やグローバルサプライチェーンにおける物流コストの最小化など、複雑化する社会課題を解決するためには、経路や手順などさまざまな組み合わせ(パターン)を、さまざまな制約の下で、できる限り良い解(実用解)を求める技術が必要です。そのため、日立は、社会インフラで生じる膨大な「組み合わせ最適化問題」をイジングモデルを用いて処理する新型半導体コンピュータの開発に取り組み、2015年2月に試作に成功しました。
今回開発した技術は、新型半導体コンピュータの実用化の基礎となるものです。新型半導体コンピュータ上でイジングモデルを用いて実際の問題を解くためには、経路や手順など、問題を構成している要素と、要素同士がどう関係しているかを示す相互作用を新型半導体コンピュータ上に取り込む必要がありますが、要素間の相互作用が複雑であるため、半導体基板上の規則的な構造に当てはめることができないという課題がありました。そこで今回、複雑な相互作用を単純で規則的な構造に自動変換することのできる前処理アルゴリズムを開発しました。これにより、新型半導体コンピュータ上に複雑化した相互作用を効率的に取り込むことが可能になりました(図1(a))。
今後、日立は、北海道大学に開設した「日立北大ラボ」*5を始めとするオープンイノベーションを通じて、新型半導体コンピュータの実用化に取り組み、複雑化する社会インフラに対応した大規模・高速な情報処理を可能とすることで、「超スマート社会」の実現(Society 5.0)に貢献していきます。
なお、本成果は、2016年6月25日に石川県金沢市で開催される電子情報通信学会コンピュテーション研究会で発表する予定です。
前処理アルゴリズムでは、1つの要素が持つ相互作用の数に応じ、複数の要素に分割し、相互作用の数を減らすことで単純な相互作用にする操作を繰り返します(図1(b))。この操作を用いることで、例えば全ての要素が互いに接続されているような複雑な構造でも(図2(a))、自動的に格子状の構造に変換することが可能です(図2(b))。しかし、この構造では、規則的な構造になった反面、より多くの要素が必要となります。計算の効率を上げるためには要素数はできる限り少ない方が好ましいため、格子状の構造に変換した後に、その構造が表現する問題の意味を変えずに、より少ない要素数で表現できる規則的な構造に効率的に変換する必要があります。
今回開発した前処理アルゴリズムは、格子状の構造に変換した後に、冗長な要素の削減と再配置を効率良く繰り返していくことで、必要な要素数を徐々に少なくしていきます(図2(c)(d))。これにより、できる限り少ない要素数で、新型半導体コンピュータが処理可能な形状への変換を実現しました(図2(e))。
図1: 新型半導体コンピュータの構造と要素の分割
図2: 今回開発したアルゴリズムの動作イメージ
株式会社日立製作所 研究開発グループ 研究管理部 [担当:小平、安井]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : 042-323-1111(代表)
以上