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2015年8月28日
株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、第13回産学官連携功労者表彰において、国立大学法人北海道大学(総長:山口 佳三/以下、北大)などと共同で取り組んだ「動く腫瘍をピンポイントで狙う『“4次元動体追跡型”陽子線治療装置』の開発と普及」で文部科学大臣賞を受賞しました。
産学官連携功労者表彰は、企業、大学、公的研究機関などにおける産学官連携活動において大きな成果を収め、また、先導的な取組みを行うなど、産学官連携の推進に多大な貢献をした成功事例に対して、その功績を称えることで、日本の産学官連携のさらなる進展に寄与することを目的として2003年より内閣府が中心となって行っているものです。
陽子線がん治療は、放射線によるがん治療法の一つであり、水素の原子核である陽子を加速器で高速に加速し、腫瘍に集中して照射することでがんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損なわないため、治療と社会生活の両立が可能であり、生活の質(QOL: クオリティ・オブ・ライフ)を維持しつつ、がんを治療できる最先端の治療法として国内外の医療機関で導入が拡大しています。脳の腫瘍のように動かない部位では、集中して照射するピンポイントの治療が可能ですが、肺や肝臓のような体幹部の腫瘍は呼吸などで位置が変動するため、腫瘍位置をリアルタイムで捉えて正確に陽子線を照射する技術が求められていました。
今回受賞した「動く腫瘍をピンポイントで狙う『“4次元動体追跡型”陽子線治療装置』の開発と普及」は、日立と北大が内閣府の最先端研究開発支援プログラムの支援の下で、日立の持つスポットスキャニング照射技術と、北大が持つ動体追跡照射技術の両方を世界で初めて搭載したシステムを共同開発したもので、呼吸などで位置が変動する腫瘍に対して高い精度で陽子線を照射できます。
産学官連携においては、北海道経済産業局の協力により、4次元動体追跡技術の国際標準化に向けた支援を受けられる体制を確立しました。また、先端医療開発特区(スーパー特区:2008年〜2013年)*1で、北大と分担研究を行った粒子線治療のパイオニアである国立研究開発法人放射線医学総合研究所における重粒子線治療開発の経験を参考に、本システムを早期に普及できる体制を整えました。本システムは、北海道大学での導入をはじめ、海外の医療機関にも納入する予定です。
本テーマは、①日立、北大、北海道経済産業局での産学官連携、北大内での医工連携により世界初の陽子線治療装置を開発した点、②患者の負担が少ない治療装置の開発は医療分野において大きな前進であり、今後の医療の進歩に貢献するものと期待できる点、③海外展開も見込め、「大きな市場の開拓」という点で高く評価され、文部科学大臣賞を受賞しました。本日、8月28日(金)、東京ビッグサイトにて授賞式が行われ、受賞者は以下の通りです。
日立は、今後もヘルスケアビジネスの主力事業の一つである陽子線がん治療システムのグローバル展開を積極的に行い、グローバルシェア30%以上をめざすとともに、世界のがん治療に貢献していきます。
スポットスキャニング照射技術とは、がんに照射する陽子線のビームを従来の二重散乱体方式*2のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術です。複雑な形状をしたがんでも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。さらに、患者ごとに準備が必要であった装置(コリメーター*3、ボーラス*4)が不要、また、陽子ビームの利用効率が高く不要な放射線の発生が少ないなど、患者に優しく、病院スタッフの負担を軽減でき、さらに、廃棄物の発生量の低減が可能であるという特長を備えています。
腫瘍近傍に2mmの金マーカーを刺入し、CT装置であらかじめ腫瘍中心との関係を把握し、2方向からのX線透視装置を利用して、透視画像上の金マーカーをパターン認識技術にて自動抽出し、空間上の位置を周期的に繰り返し計算します。そして、金マーカーが計画位置から数mmの範囲にある場合だけ照射することで、呼吸等により体内で位置が変動するがんでも高精度で照射を行うことが可能になります。これにより、動いているがんの範囲をすべて照射する方法に比べて、照射体積を1/2〜1/4に減らし、正常部位への照射を大幅に減らすことが可能になります。
株式会社日立製作所 ヘルスケア社 粒子線治療事業部【担当:望月、大澤】
〒101-8010 東京都千代田区外神田四丁目14番1号
電話 03-4564-3565(直通)
以上