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2015年7月27日
株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、京都府上京区内に建設予定の「永守記念最先端がん治療研究センター」向けに京都府初となる陽子線がん治療システムを受注しました。日立は、陽子線のビームを細い状態のまま用いることで複雑な形状をしたがんに高い精度で陽子線を照射でき、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能なスポットスキャニング照射技術と、呼吸等により体内で位置が変動するがんでも高精度で照射を行うことができる動体追跡照射技術が採用された回転ガントリー2室を備える最先端の陽子線がん治療システムを納入する予定です。2018年度中の稼働開始をめざします。
永守記念最先端がん治療研究センターは、世界最大手の総合モーターメーカー、日本電産株式会社の創業者であり代表取締役会長兼社長(CEO)の永守重信氏が、地元京都府と京都府民への貢献を目的に、京都府に寄付される最先端のがん治療研究施設です。同センターは、陽子線がん治療システムや、その他のがん治療機器など最先端の機器を1カ所に集約する施設で、京都府立医科大学附属病院の放射線治療施設として運営されます。
日立は1990年代から粒子線治療システムの製造を開始し、2007年12月にスポットスキャニング照射技術を採用した陽子線がん治療システムで、世界初となる米国食品医薬局(FDA : Food and Drug Administration)の販売許可を取得しました。2008年5月には世界最大級のがんセンターである米国M.D.アンダーソンがんセンターに陽子線がん治療システムを納入するなど、国内外で日立のシステムが使われています。これまでに日立のシステムで10,000名以上の患者が治療をうけており、陽子線がん治療分野において高い信頼性と実績を有しています。今回、日立は、こうした実績に加え、スポットスキャニング照射技術と動体追跡照射技術を組み合わせた最先端の陽子線がん治療システムが高い評価を受け、受注に至りました。
近年、副作用の少ないがん治療法の一つとして、世界中の病院や治療センターで粒子線がん治療に対する関心がますます高まっています。日立は、今後もヘルスケアビジネスの主力事業の一つである粒子線がん治療システムのグローバル展開を通じて、世界のがん治療に貢献していきます。
陽子線がん治療は、放射線によるがん治療法のひとつであり、水素の原子核である陽子を加速器で光の70%のスピードに加速させ、がん細胞に集中して照射することでがんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損なわないため、治療と社会生活の両立が可能であり、生活の質(Quality Of Life)を維持しつつ、がんを治療できる最先端の治療法の一つとして注目されています。
スポットスキャニング照射技術とは、がんを照射する陽子線のビームを従来の二重散乱体方式*1のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術です。複雑な形状をしたがんでも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。さらに、患者ごとに準備が必要であった装置(コリメーター*2、ボーラス*3)が不要、また、陽子ビームの利用効率が高く不要な放射線の発生が少ないなど、患者に優しく、病院スタッフの負担を軽減でき、さらに、廃棄物の発生量の低減が可能であるという特長を備えています。
腫瘍近傍に2mmの金マーカーを刺入し、CT装置であらかじめ腫瘍中心との関係を把握し、2方向からのX線透視装置を利用して、透視画像上の金マーカーをパターン認識技術にて自動抽出し、空間上の位置を周期的に繰り返し計算します。そして、金マーカーが計画位置から数mmの範囲にある場合だけ照射することで、呼吸等により体内で位置が変動するがんでも高精度で照射を行うことが可能になります。これにより、動いているがんの範囲をすべて照射する方法に比べて、照射体積を1/2〜1/4に減らし、正常部位への照射を大幅に減らすことが可能になります。
以上