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2015年6月10日
10年間にわたるシステムの運転・保守契約も締結
株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、北米において日立の5つ目となる陽子線がん治療システムを、米国メリーランド州にある世界トップクラスの医療機関ジョンズ・ホプキンス・メディスン(Johns Hopkins Medicine)傘下のシブリー・メモリアル病院(Sibley Memorial Hospital/米国ワシントンD.C.)から受注し、また、10年間にわたるシステムの運転・保守契約も締結しました。
今回、日立はスポットスキャニング技術を搭載し、回転ガントリ室3室と研究開発に使用される固定照射室1室を備えた陽子線がん治療システム「PROBEAT」を設置します。本システムは、米国ワシントンD.C.において初となる複数の照射装置室を備えたマルチルームタイプであり、IMPT(Intensity Modulated Proton Therapy: 強度変調陽子線治療)*1や、ガントリ搭載型コーンビームCT*2を使った精度の高い照射が可能なものです。
ジョンズ・ホプキンス・メディスンは、米国メリーランド州ボルチモア市に位置する研究と臨床を一体化した総合病院であり、「全米の優れた病院ランキング*3」で毎年、上位に選ばれるなど世界トップクラスの医療機関として高く評価されています。ジョンズ・ホプキンス・メディスン傘下のシブリー・メモリアル病院は、1890年の設立以来、米国ワシントンD.C.における非営利医療機関として、がんを中心とした研究から臨床・治療、リハビリまで幅広く手がけています。
日立は、2007年12月、スポットスキャニング技術を搭載した陽子線がん治療システム「PROBEAT」で、世界初となる米国食品医薬局(FDA: Food and Drug Administration)の販売許可を取得しました。2008年5月に世界最大級のがんセンターである米国M.D.アンダーソンがんセンター向けに陽子線がん治療システムを納入し、これまでに1,400名以上の患者を治療しています。近年では2013年9月に名古屋陽子線治療センターに、2014年3月には北海道大学にも納入しており、日立の陽子線がん治療システムは高い信頼性と実績を有しています。2015年度は、北米の納入施設で新たに治療が開始される予定です。
陽子線がん治療分野において日立は、98%以上の装置稼働率や、お客さまへの長期的かつ充実したサポート体制などの高い信頼性と実績が評価されています。
日立の執行役社長兼COO東原敏昭は、今回の受注に関して次のように述べています。「このたび世界トップクラスの医療機関であるジョンズ・ホプキンス・メディスンの陽子線がん治療パートナーとして、当社を選んでいただき、大変光栄です。研究開発を通じて最先端のがん治療をめざすリーダーであるジョンズ・ホプキンス・シドニーキンメル・がんセンターの理念は、健康で安心して暮らせる社会づくりを革新的技術・システム、ソリューションやサービスでサポートする日立の社会イノベーション事業の考えと同調するものであり、両者で長期的なパートナーシップが築けることを期待しています。シブリー・メモリアル病院の陽子線治療センターは、ワシントンD.C.およびその周辺地域に、がんの新たな治療法をもたらし、がん治療・研究などの領域において先進的な事例になるものです。
今回のパートナーシップを通じて、世界中の患者およびがんの研究に貢献できると確信しています。」
近年、副作用の少ないがん治療法の一つとして、世界中の病院や治療センターで陽子線がん治療に対する関心がますます高まっています。日立は、今後もヘルスケアビジネスの主力事業の一つである陽子線がん治療システムのグローバル展開を通じて、世界のがん治療に貢献していきます。
陽子線がん治療は、放射線によるがん治療法のひとつであり、水素の原子核である陽子を加速器で光の70%のスピードに加速させ、がん細胞に集中して照射することでがんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損なわないため、治療と社会生活の両立が可能であり、生活の質(Quality Of Life)を維持しつつ、がんを治療できる最先端の治療法の一つとして注目されています。
スポットスキャニング照射技術とは、がんを照射する陽子線のビームを従来の二重散乱体方式*4のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術です。複雑な形状をしたがんでも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。さらに、患者ごとに準備が必要であった装置(コリメーター*5、ボーラス*6)が不要、また、陽子ビームの利用効率が高く不要な放射線の発生が少ないなど、患者に優しく、病院スタッフの負担を軽減でき、さらに、廃棄物の発生量の低減が可能であるという特長を備えています。
株式会社日立製作所 ヘルスケア社粒子線治療事業部 粒子線治療ソリューション部
[担当:伊丹、藤崎]
〒101-8010 東京都千代田区外神田四丁目14番1号
電話 03-4564-3565 (直通)
以上