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企業情報ニュースリリース

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2015年5月20日

膨大な機器データを効率的に送受信するための新たな通信方式を開発

  株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、次世代ネットワークを構築する基盤技術の一つであり、データを効率的に送受信してネットワークの負荷を低減することができる情報指向ネットワーク技術(ICN: Information-Centric Networking)の新たな通信方式を開発しました。本通信方式により、従来の通信方式では実現困難とされた、自動車の車載装置やセンサーなどの広範囲を移動する機器から発生する膨大なデータを送受信することができます。自動車向けでは、膨大な走行データを活用することで、渋滞緩和や走行支援などの実現が可能となり、安全かつ快適な社会インフラの構築に貢献する技術となります。

  近年、様々なモノとモノをインターネットに繋ぐIoTが注目されています。IoTが普及することで、ネットワークに接続するセンサーやカメラ、家電や車載装置などの機器は、将来500億個以上になり、これらの機器から発生する膨大なデータにネットワークが対応できなくなることが予想されています。この課題を解決する手段の一つとして、情報指向ネットワーク技術の研究が進められてきました。
  情報指向ネットワーク技術とは、センサーやカメラなどのネットワークに接続された機器から送信されるデータに、識別子*1と呼ばれるデータを特定するタグを付与することで、効率的にデータの送受信を行う技術です。識別子が付与された一つ一つのデータを保存する場所を経路情報*2として、全通信サーバーで共有することで、データの保存場所を意識することなく、識別子を指定するだけでデータを送受信できることが特徴です。データの発信元である機器から近距離のサーバーやデータセンターに分散してデータを保存することができ、必要なときにのみ、識別子に基づいて効率的にデータの送受信を行うことで、ネットワークへの負荷を低減することが可能となります。
  一方で、情報指向ネットワーク技術における従来の通信方式では、データの発信元である機器の場所が移動し、データの保存場所が変わる度に、保存場所を示す経路情報をネットワークに接続された全通信サーバー間で共有させる必要がありました。そのため、経路情報を更新する通信処理が頻繁に発生し、ネットワークに高い負荷がかかることから、特に車載装置など大容量のデータを移動しながら送受信する機器では、情報指向ネットワーク技術の適用は困難とされていました。

  そこで日立は、経路情報の共有に伴うネットワークへの負荷を低減するために、データに付与される識別子をグループ単位で纏め、その経路情報を集約ノード*3と呼ぶ特定の通信サーバーに割り当てることで、経路情報が更新された際は、全ての通信サーバーではなく特定の集約ノードで更新する、情報指向ネットワーク技術の新たな通信方式を開発しました。本通信方式により、これまで発生していた通信サーバー間で経路情報を共有するための通信回数を大幅に減らし、ネットワークへの負荷を低減できます。従来の通信方式では困難とされていた、自動車の車載装置やセンサーなどの広範囲を移動する機器から発生する膨大なデータを、情報指向ネットワーク技術を用いて送受信することが可能となりました。

  また、従来の通信方式では、経路情報を通信サーバー間で共有するための通信処理により、ネットワークの帯域に空きが少なく、ネットワークに接続している他の機器へデータを送信するPush型通信の実現が困難でした。今回開発した通信方式は、ネットワークへの負荷を低減できるため、保存されているデータを必要なときに受信するPull型通信のみならず、複数の機器へデータを送信するPush型通信を実現しました。これにより、情報指向ネットワーク技術においても、リアルタイムにデータの送信ができ、自動車の車々間通信に適用した場合、危険を感知し急な減速をした車の走行データを、リアルタイムにその車の周辺を走る他の車へ送信することで、事故を予防するようなシステムを実現することが可能となります。

  本通信方式の開発にあたり、国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:坂内 正夫、本部:東京都小金井市、以下、NICT)が運用するテストベッドにて実証実験を実施しました。具体的には、NICTテストベッドのネットワーク内にある全国の7拠点に、今回開発した通信方式を実装した通信サーバーのプロトタイプを配置し、全国規模で移動する端末6,000台を模擬するソフトウェアを用いてデータの送受信を行いました。実証実験の結果、情報指向ネットワーク技術を用いて、車載装置などの移動端末におけるPull型通信およびPush型通信の両方を同時に実現したことを確認しました。

  日立は、ネットワークやビッグデータの技術開発を通じて、IoTの普及により実現される安全で快適な社会インフラの構築に貢献していきます。

  本開発研究は、NICTの委託研究である「新世代ネットワークを支えるネットワーク仮想化基盤技術の研究開発」による成果です。本成果の一部は、2015年5月21日に東京大学で開催される電子情報通信学会情報指向ネットワーク技術時限研究専門委員会第1回研究会にて発表する予定です。

*1
複数のデータの中から特定のデータを一意に識別するための識別符号。
*2
データを送受信する際に経由する通信サーバーを指定する情報。通信サーバーはデータを受け取った際に、次にどの通信サーバーにデータを送信するかを経路情報を参照して決める。
*3
識別子の特定のグループの経路情報を記録する通信サーバー。

[画像]IoT通信における情報指向ネットワーク技術の適用
IoT通信における情報指向ネットワーク技術の適用

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 研究開発グループ 技術統括センタ 情報企画部 [担当:湯本]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
電話:050-3135-3409 (直通)

以上

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