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企業情報ニュースリリース

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2014年5月15日

機械構造物の疲労現象を高精度に再現できる
コンピュータ制御の三軸疲労試験装置を開発

構造部材の適正な設計による信頼性向上や材料費低減に貢献

  株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、建設機械や再生可能エネルギー設備などの稼働時に発生する複雑な応力(力を面積で割った値)を、実験室で再現できるコンピュータ制御の三軸疲労試験装置を開発しました。この機械を用いて、実際に建設機械で計測された応力を試験片上で再現した結果、3%以下の誤差範囲で部材表面に加わる応力が再現できることを確認しました。今後、本装置を社会インフラ分野などの製品に活用することで、利用条件に即した構造部材の適正な設計が可能となり、信頼性向上とともに材料費の低減に貢献していきます。

  鉄道車両や建設機械、風力発電設備などの社会インフラを支える機械構造物は、長期間の使用に耐える信頼性が大変重要です。構造物の表面には縦・横にゆがみを加えた3つの変形に起因する応力が発生しますが、このように複雑な応力は大きさや方向が一定の応力に比べて疲労の進行が速く、疲労破壊が発生しやすいことが報告されています*1。複雑な応力による疲労現象を解明し高精度で現象を予測できれば、疲労破壊が懸念される箇所により適正な板厚の材料、構造を選択することができ、資源やコストの低減につながります。
  従来の材料試験では、1方向からの負荷に対する疲労現象を解明することは可能ですが、試験片に多方向から負荷を与えることが難しく、任意の応力を試験片上に再現できないという課題がありました。そこで今回、日立では、実機の稼働状態で発生する複雑な力を試験片上に再現できる疲労試験装置を開発しました。装置の概要は以下の通りです。

(1)応力の再現

  試験片に対して、0、45、90度方向に荷重を発生するアクチュエータと、試験片の片側を固定する冶具を備えています。
  構造物表面の応力は縦・横2種類の伸縮変形と1種類のせん断(ゆがみ)変形で生じる3組の応力を重ね合わせることで表すことができますが、従来の材料試験装置は2方向から試験片に荷重を与えるため、3組の応力を発生できず、実際の応力を高精度に再現できませんでした。本技術では3方向から独立した荷重を試験片に与えることで、構造物表面に生じる任意の応力を再現することが可能となりました。

(2)三軸疲労試験装置

  試験装置において0、45、90度の各軸のうち、45度軸は固定、0、90度軸は可動する構成となっており、試験片にはコンピュータ制御によってアクチュエータで荷重を加えます。しかし、片側を固定しているため、荷重負荷時に試験片の中心位置がずれてゆがみが生じ、想定外の箇所で疲労破壊が発生してしまいます。そこで、伸びに応じて可動するリニアガイドを採用して、ゆがみが抑制される構造としました。(図1)

  試作した試験装置で、実際に使用されている建設機械で計測された複雑な応力を試験片上で再現したところ、計測された実際の応力に対して、再現応力は3%以下の誤差で一致しており、実機稼働時の複雑な応力を再現できることを確認しました(図2、図3)。
  また、中央部に突起を設けた試験片で疲労試験を行った結果、三軸応力を加えると、一軸試験,二軸試験に比べて疲労強度がさらに低下するという実験結果を得ることができました。

  日立では、今後も複雑な応力に対する疲労現象を定量的に計測する技術を開発し、より信頼性の高い社会インフラ分野の製品提供に向けて技術開発を推進していきます。
  なお本技術は、2014年5月17日、18日に福岡大学において開催される「日本材料学会主催 第63期学術講演会」にて発表予定です。

*1
関連論文:Material dependence of multiaxial low cycle fatigue lives under non-proportional loading (International Journal of Fatigue誌 2011年 33巻: pp.1025-1031.)
著者:Itoh T. and Yang T.

図1 開発技術を実現する試験装置

[左]図2 実機稼働時の複雑な応力の再現精度、[右]図3 疲労試験によるき裂発生箇所

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:影山]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508 (直通)

以上

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