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2014年3月10日
都市内の通信を想定した40kmの光ファイバ伝送に成功
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西宏明/以下、日立)は、このたび、光ファイバ網(メトロ系)の大容量化に向け、"光多値伝送*1"において低コストのInP系半導体光変調器を用いた高品質光多値伝送技術を開発し、本技術により生成した光64値信号を用いて、都市内の通信を想定した40kmの光ファイバ伝送に成功しました。これは、現在4値の光多値伝送が普及している高速光通信分野において、光源と一体集積化が可能なInP系半導体光変調器の実用化と、それによる光多値送受信器の低コスト化に道を拓くものです。
クラウドやビッグデータ活用、スマートフォンの普及などによりネットワークをいきかう情報は拡大の一途を辿っています。都市間を結ぶコア系ネットワークや都市内のメトロ系ネットワークにおいても、光通信網の大容量化に向けた様々な取り組みが進められています。その中でも、光の振幅と位相を変えて一度に多くの情報を送る光多値伝送は、次世代の大容量伝送方式として注目されています。現在、コア系ネットワークでは、一度に2ビットの情報を伝送することが可能な光4値変調方式が用いられています。2015年頃には一度に4ビットの情報を伝送する光16値変調方式の実用開始が見込まれていますが、拡大し続ける情報量に対応するため、16値を超える光多値伝送を低コストに実現する技術の開発が急務となっています。
このような背景から、日立は、データセンタ間や都市内の数十kmをつなぐメトロ系光ファイバ網を対象に小型で省電力性能に優れた半導体光変調器を利用した光多値変調技術を開発しました。これまでGaAs系半導体光変調器を用いた光64値信号が実験的に生成された例はありましたが、信号品質が低く、実用に課題がありました。今回、同じInP系の半導体光源と一体集積化が可能なInP系半導体光変調器を対象として、信号品質を高める技術を開発しました。開発技術は以下の通りです。
半導体光変調器を用いた光多値変調では、半導体材料の特性の影響で変調精度が劣化し、光多値信号を正確に生成できなくなるという課題がありました。今回、日立は半導体光変調器を用いたときに生じる変調精度の劣化要因を詳細に解析し、次の2つの要因を明らかにしました。
これら2つの要因により、光多値信号の信号点が不揃いに配置されることで信号品質が劣化することがわかりました。
上記の要因に基づき、デジタル信号処理*3を用いた補正回路を新たに開発し、光送信器で生じる信号の歪みを防止しました。今回開発したデジタル補正回路は、以下4点を補正する回路の4段構成により信号の歪みを防止しており、これらを用いることで理想的な光多値信号を生成できます。
①光干渉部のアンバランス性*4、②不均一な変調特性*5、③変調特性の非線形性*6、④信号帯域の劣化*7
なお、①②を補正する技術は今回新たに開発したものです。
開発技術の実用性を評価するために、市販のInP系半導体光変調器にデジタル補正技術を適用し、光64値信号を生成して40kmの光ファイバ伝送試験を行い、信号品質基準*8を満たした光多値伝送を実現しました。本成果はInP系半導体で実証しましたが、GaAsなどの他の半導体材料を用いた光変調器にも適用できる多値光伝送の基本技術です。今後、日立では、本技術を用いた光送受信器の開発を推進する予定です。
本成果は、2014年3月9日から13日まで、米国のサンフランシスコで開催される光通信の国際会議「OFC(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)」において、3月10日(現地時間)に発表予定です。
なお、本研究における成果の一部は、総務省の委託研究「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発」によるものです。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 042-323-1111(代表)
以上