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企業情報ニュースリリース

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2014年3月10日
株式会社日立製作所
日立GEニュークリア・エナジー株式会社

福島第一原子力発電所での燃料取り出しに向けた調査用の
水中走行遊泳型ロボット・形状変化型ロボットを開発

水中や障害物に囲まれた狭い空間で姿勢や形状を自在に変化するロボット

[画像](左)水中走行遊泳型ロボット (右)形状変化型ロボット

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)と日立GEニュークリア・エナジー株式会社(取締役社長 : 武原 秀俊/以下、日立GE)は、姿勢や形状を自在に変化させ、狭隘空間であっても障害物を回避しながら、広い範囲を遠隔で調査できる水中走行遊泳型ロボット(クローラ)と形状変化型ロボット(クローラ)を開発しました。この二つのロボットは、資源エネルギー庁が補助事業として進めている福島第一原子力発電所での燃料取り出し作業に用いるための遠隔装置の開発に先立ち、日立と日立GEが各種調査に用いるために開発したものです。水中走行遊泳型ロボットは水中、形状変化型ロボットは陸上において、人間が作業することができない障害物や構造物に囲まれた狭い空間での移動が可能であり、冷却水の漏えい箇所の調査や燃料状態の調査に活用することができます。

  福島第一原子力発電所では、圧力容器内に冷却のために水を継続的に注入しています。冷却水の一部は、圧力容器から格納容器を経て、発電所建屋の地下階などに漏えいし、放射性物質を含む滞留水となっています。滞留水は、放射性物質や塩分除去などの浄化作業を経てタンク内に保管されていますが、滞留水を減少させるには、原子炉建屋内での漏えい箇所を特定し、補修(止水)することが必要です。

  こうした状況に対応して日立と日立GEは、水中での水平及び垂直面の壁面走行と遊泳動作を1台で可能にした水中走行遊泳型ロボットと、直径100mmの管内走行と凹凸面上の安定走行を両立した形状変化型ロボットを開発しました。二つのロボットは、今後、資源エネルギー庁が実施している補助事業を通じて、福島第一原子力発電所の燃料取出しに向けた調査装置へ活用していきます。
  今回開発した移動装置は以下の通りです。

(1) 水中走行遊泳型ロボット(クローラ)

  水中走行遊泳型ロボットは、水で満たされた発電所建屋内を調査するためのロボットであり、原子力発電所の滞留水の漏えい箇所を水中から調査する装置として活用できます。図1にロボットの外観、表1に主な仕様を示します。このロボットは、水中での移動自由度を高くするために、垂直4基、水平2基、計6基のスラスタ*1と1組のクローラ*2により、走行動作と遊泳動作を両立した点が特徴です。特に、走行動作については、水底の走行のみならず、遊泳による障害物回避や遊泳後に姿勢を変化させ、壁面に吸着して走行する機能も有しています。日立と日立GEでは、図1に示した通り、このロボットを用いて水中での移動性能を評価しました。その結果、床面から浮上、遊泳し、壁面へ押し付けた状態で90°姿勢を変換して、安定して壁面に吸着、走行する、一連の動作が出来ることを確認しました。

[画像]図1. 水中走行遊泳型クローラの外観

表1. 水中走行遊泳型ロボット(クローラ)に関する仕様
項目 仕様
寸法 (mm) 高さ330 × 長さ605 × 幅450
気中重量 (kg) 31.5
動作機構 垂直スラスタ × 4
水中スラスタ × 2
クローラ × 2
ケーブル (m) 80 (中性浮力)

(2) 形状変化型ロボット(クローラ)

  原子力発電所には放射線量が高い領域があり、対象部位に装置を挿入するための開口部は極力小さくする必要がある一方、小型の移動装置は走行が安定しないため踏破性に課題がありました。今回、2つの小型クローラを組み合わせ安定走行できる移動装置を基本形状とし、狭隘空間を通過可能な形状に変化させることができるロボットを開発しました。図2にロボットの外観および変形状況、表2に仕様を示します。形状変化型ロボットは、本体及び両端の2つの小型クローラの3関節で構成され、本体に対してクローラを90度で回転して形状を変化させます。本体に直交するようにクローラを横に並べて配置するコの字型の姿勢と、本体とクローラを縦一列に配列する姿勢を自在に選択することにより、平面の安定走行と狭隘な配管の通過を両立できるようになりました。図2のロボットを用いて、原子炉格納容器内部の走行を想定した試験を実施した結果、直径100mmの配管を通過できること、格子寸法25mm×90mmのグレーチング*3平面上を走行できること、さらに、凹凸のある面上を安定走行できることを確認しました。

[画像]図2. 形状変化型ロボットの外観

表2. 形状変化型ロボット(クローラ)に関する仕様
項目 仕様
寸法 (mm) (配管通過時) 高さ90 × 長さ640 × 幅65
(平面走行時) 高さ90 × 長さ250 × 幅 272
気中重量 (kg) 7.5
動作機構 形状変化モータ × 2
カメラ動作モータ × 2
小型クローラ × 2
ケーブル (m) 40

  この二つのロボットの詳細は、3月26日から28日まで、東京都市大学で開催される「日本原子力学会2014年春の年会」にて発表する予定です。

用語

*1
スラスタ : 広義には推進システムの総称。本装置において、プロペラ型の推進器。
*2
クローラ : 無限軌道の別称。無限軌道とは、起動輪、転輪、誘導輪を囲むように一帯に接続された履板の環であり、起動輪でそれを動かす事によって不整地での車両の移動を可能にするもの。
*3
グレーチング : 側溝の蓋や、建造物の足場に用いる格子状の鋼材。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 影山]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508(直通)

以上

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