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2014年2月5日
株式会社日立製作所
日立マクセル株式会社
毎秒60フレームのリアルタイム処理で高精細映像を補正
株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、このたび、明るい場所でも高い視認性が得られるプロジェクターの実現に向けて、高精細映像を毎秒60フレームでリアルタイム処理する映像処理技術を開発しました。本技術では、表示する映像信号を人の視覚特性に基づいて分析し、映像を視認するために重要な成分を抽出・強調することにより、視認性を高めた映像表示を実現します。これにより、プロジェクターの映像出力(光源の輝度)を上げることなく、見やすい映像を表示することができます。また、さまざまな製品への搭載に向け、実装するハードウェアの構造に合わせて処理アルゴリズムを最適化し、小型のハードウェアで高精細映像のリアルタイム処理を実現しました。
本技術は、プロジェクターはもとより、車載モニタ、監視モニタなどの映像を見やすくすることも可能であり、広範囲な分野への活用が期待できます。
プロジェクターでは、映像を光に変換してスクリーンに投影するため、外光が射し込む場所ではスクリーンが明るくなってしまい、投影された映像全体が見えにくくなります。このため、部屋を暗くして使用するのが一般的でした。しかし、近年はプロジェクターで使われるランプの高輝度化が進んだこと、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末と連携した利用が増えていることなどから、明るい場所でも使われる機会が増えています。
日立では、こうしたニーズに応えるべく、さまざまな明るさの環境で見やすい映像表示を可能にする映像処理技術を開発しました。
従来、映像を見やすくする処理として、コントラスト補正、カラーマネージメントなどがありました。しかし、これらは画面全体に一様な補正を行うため、もともと見やすかった部分が潰れて見えにくくなるなどの副作用があり、大きな補正効果を得ることが困難でした。今回開発した技術では、画面内の場所ごとに映像の明るさや細かさなどを分析し、特性を変化させて局所的に映像を補正するため、副作用を抑制しながら大きな視認性向上効果が得られます。技術の特長は以下の通りです。
人の視覚特性をモデル化したRetinex理論を応用し、映像中の視認性に影響する複数の光成分を分離し、映像の明るさ、細かさ、色合いなどの特徴に応じて強調した後、合成する新たな映像補正アルゴリズムを開発しました。これにより、以下のように映像の高い視認性を実現します。
a) 質感 | 「精細感」「光沢感」「陰影感」を向上し、映像内におけるオブジェクトの輪郭を鮮明化 |
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b) コントラスト感 | 映像の明部に影響を与えることなく、暗部に隠れて見えにくい領域を高視認化(図1、図2) |
c) 演色性 | 元の映像に含まれる色情報を失うことなく色鮮やかに再現 |
一般的にRetinex理論を応用した映像補正は、光成分の分離に多量の演算を必要とするため、論理回路規模*2や処理時間が課題でした。今回、開発したアルゴリズムの製品搭載に向け、映像に含まれる光成分を分離、強調、合成する処理過程で、ハードウェアが備える論理回路を効率よく利用できるよう処理順と内容を最適化することにより、小規模な論理回路で静止画だけでなく、高精細映像(1920x1200画素)のリアルタイム処理(毎秒60フレーム)を実現しました。本技術を応用することで、プレゼンテーションなどの業務用途だけでなく、映画や放送コンテンツなどの動画表示が必要なホームシアターやアミューズメント用途においても見やすい高画質な映像表示が可能となります。
また、上記処理を小型のハードウェア(17x17mm)で実現しているため、小型のプロジェクター用など小さな基板への実装も容易で、幅広い分野への適用を見込んでいます。
日立のプロジェクターを開発・製造・販売している日立マクセル株式会社(取締役社長:千歳喜弘/)では、本技術を搭載して視認性の向上を図った超短投写プロジェクターを開発し、米国・欧州より順次発売する予定です。
また、日立は今後、車載モニタ、監視モニタをはじめとした見やすい映像表示ソリューションを提供して行く予定です。
株式会社日立製作所 研究開発本部 技術統括センタ [担当:吉田]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
電話:050-3135-3409 (直通)
以上