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2013年6月3日

米国の大手総合病院メイヨー・クリニックから受注した
陽子線がん治療システムの据付作業を開始

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西宏明/以下、日立)は、このたび、米国で70を超える病院や診療所を運営する大手総合病院であるメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)から2011年5月に受注した陽子線がん治療システム二式のうち、一式目の据付作業をミネソタ州ロチェスターの総合病院で開始しました。治療開始は2015年夏を予定しています。

  今回メイヨー・クリニックに据付作業を開始した陽子線がん治療システムは、正常な細胞への影響をできるだけ抑制するために、腫瘍の形状に合わせて高い精度で陽子線を照射することができる最先端の「スポットスキャニング照射技術」を適用したもので、従来の装置と比較して省スペースな設計となっています。回転用ガントリー治療室4室、研究開発用の固定照射室1室の全5室にスポットスキャニング照射技術を適用したシステムを設置します。
  なお、二式目は、2014年春からアリゾナ州フェニックスの総合病院で据付作業を開始し、2016年春の治療開始を予定しています。

  米国では、1990年以降、陽子線がん治療システムへの関心が急速に高まっています。日立は、電力システム事業を通じて、加速器や放射線照射・制御に関する豊富な技術・ノウハウを生かし、約20年前から陽子線がん治療システムの開発を進めてきました。これらの技術をもとに、「スポットスキャニング照射技術」を開発し、2007年12月には、米国において同技術を応用した陽子線がん治療システムとしては世界で初めて米国食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration)の販売認可を取得しました。同技術を採用したシステムは、2008年5月に世界最大級のがん専門病院である米国のM.D.アンダーソンがんセンターに商用として世界で初めて納入し、その後さらに5施設から受注しています。

  また、2013年4月には、ロシア連邦の医療・研究機関と、粒子線がん治療装置の建設を推進するための戦略的な協力関係を構築することで合意しており、建設が有力視される2つのプロジェクトへの共同参画を皮切りに、ロシアの粒子線がん治療装置市場への本格的な参入をめざしています。

  日立は、最先端技術を生かした粒子線がん治療システムの納入を通じて、粒子線がん治療の普及に貢献していくとともに、ヘルスケア事業を含む社会イノベーション事業をグローバルに展開していきます。

陽子線がん治療システムについて

  陽子線がん治療は、放射線によるがん治療法のひとつであり、水素の原子核である陽子を加速器で高速に加速し、がん細胞に集中して照射することでがんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損なわないため、治療と社会生活の両立が可能であり、生活の質(QOL : Quality Of Life)を維持しつつ、がんを治療できる最先端の治療法の1つとして注目されています。

スポットスキャニング照射技術について

  スポットスキャニング照射技術とは、腫瘍に照射する陽子線のビームを従来の二重散乱体方式*1のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術で、複雑な形状をした腫瘍でも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。更に、患者ごとに準備が必要であった装置(コリメーター*2、ボーラス*3)が不要、また、陽子ビームの利用効率が高く不要な放射線の発生が少ないなど、病院スタッフの負担も軽減でき、廃棄物の発生量の低減にも効果があるという特長を備えています。

*1
二重散乱体方式 : 物質中を通過する際の散乱効果を活用して、陽子線の細いビームを二つの散乱体を通過させ、拡散させることで、陽子ビームの直径を拡大する。拡大された陽子ビームは、コリメーターやボーラスを通して、がんの形状に成形される。
*2
コリメーター : 真鍮等の厚板をがんの輪郭に合わせて中を切り取ったもの。これによって、がんの断面形状に合わせて陽子ビームを成形することができる。
*3
ボーラス : ポリエチレン等のブロックをがんの奥行きの形に合わせて中をくり抜いたもの。これによって、患部より奥に陽子ビームが届かないように設定することができる。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 電力システム社 放射線治療推進本部 [担当 : 西村、渕上]
〒100-8608 東京都千代田区外神田一丁目18番13号
電話 03-4564-3565 (直通)

以上

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