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2013年4月30日
ヨーロッパ医療センター、ブドケル核物理学研究所と
普及に向けた戦略的な協力関係を構築
株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、このたびヨーロッパ医療センター(取締役会長: イゴール・シロフ/以下、GEMC)およびブドケル核物理学研究所(ディレクター:アレキサンダー・スクリンスキー/以下、BINP)とロシア連邦(以下、ロシア)における粒子線がん治療装置の建設を推進するための戦略的な協力関係を構築することで合意しました。今後、日立はGEMC、BINPとの協業を通じて、建設が有力視される2つのプロジェクトへの共同参画を皮切りに、ロシアの粒子線がん治療装置市場への本格的な参入をめざします。
高速に加速した陽子線や炭素線などの粒子線を腫瘍に照射する治療が、新しいがん治療法として注目を集めています。がん患者数の割合が日本や欧米諸国と比べて高いロシアでは、がん治療設備の整備の一環として、多くの医療機関で粒子線がん治療装置の新設が計画されています。
GEMCはモスクワで20年以上の歴史と伝統を持つロシア最大級の民間医療機関であり、24時間対応の救急病院、小児病院、女性専門病院等を5箇所で経営しています。同社ではロシア国内の民間病院への出資、経営参加、医師の派遣などを通じてチェーンを拡大しています。一方、BINPは、シベリアの首都ノボシビルスクに拠点を置く国立研究所で、世界で初めて電子陽電子衝突型加速器を建設するなど、ロシアにおける加速器研究をリードしています。
今回締結した協定により、日立はGEMCおよびBINPとの主要設備の利用や技術開発を通じて、粒子線設備の性能・信頼性・安全性を向上することをめざします。また、共同で実証試験などを行うことで、日立の粒子線がん治療装置をロシアに納入する際に必要な許認可を取得していきます。さらに、建設が計画されているモスクワ第63病院における陽子線がん治療装置と、ウラジオストック極東大学向け陽子線・重粒子線がん治療装置において、協力関係を結び、主要設備の開発や購入、プロジェクトファイナンスの構築などの具体的な検討を進めます。加えて、今後、ロシア全土における粒子線がん治療装置の事業機会の拡大をめざします。
日立では、約20年前から陽子線がん治療システムの開発を進めてきました。これまで、がん治療への有効性が高く評価され、国内では筑波大学や名古屋陽子線センターに、また海外では、世界最大級のがん専門病院である米国のM.D.アンダーソンがんセンターに納入しています。さらに現在、北海道大学や3箇所の米国著名病院における粒子線がん治療装置の建設を進めています。
日立は、スポットスキャニング等の先端的技術を生かした粒子線がん治療システムの納入を通じて、先端的な放射線医療やがん治療の普及に貢献していくとともに、ヘルスケア事業を含む社会イノベーション事業グローバルに展開していきます。
粒子線がん治療は、放射線によるがん治療法のひとつであり、水素の原子核である陽子を用いる陽子線がん治療や、炭素の原子核を用いる重粒子線治療等があります。いずれの治療も粒子を加速器で高速に加速し、がん細胞に集中して照射することで、がんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損ないにくいため、治療と社会生活の両立が可能であり、生活の質(QOL:Quality Of Life)を維持しつつ、がんを治療できる先端的な治療法として注目されています。
スポットスキャニング照射技術とは、腫瘍に照射する陽子線のビームを従来の二重散乱体方式 *1 のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術で、複雑な形状をした腫瘍でも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。さらに、患者ごとに準備が必要であった装置(コリメーター*2 、ボーラス*3 )が不要、また陽子ビームの利用効率が高く不要な放射線の発生が少ないなど、患者に優しく、病院スタッフの負担を軽減できるほか、廃棄物の発生量の低減が可能であるという特長を備えています。スポットスキャニング照射技術を応用した陽子線がん治療システムとしては、世界で初めて米国食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)の510Kクリアランスを2007年12月に取得しています。
株式会社日立製作所 電力システム社 医療営業本部 医療営業部 [担当:馬島]
〒101-8608 東京都千代田区外神田一丁目18番13号
電話 : 03-4564-6137 (直通)
以上