ニュースリリース

無線LANを用いた映像監視システム向けの高品質伝送技術を開発

監視カメラのコマ落ち頻度を1/100以下に改善

  株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明／以下、日立)と株式会社日立国際電気(執行役社長:篠本 学／以下、日立国際電気)は、高い伝送品質が要求される映像監視システムに無線LANの標準規格*1を適用し、高品質な映像伝送を可能とする無線伝送技術の開発に成功しました。今回開発した無線映像監視システムは、映像監視システムに無線LANの標準規格IEEE802.11eに規定されている通信方式を適用することで他の無線LAN対応機器からの電波干渉の抑制が可能です。また、通信エラー時の画像劣化を最小限にする通信プロトコルにより、高品質な画像伝送を実現します。日立と日立国際は、今回の開発技術を適用した無線機を試作し、複数台の監視カメラを用いた検証実験を行い、コマ落ちの頻度を従来と比較して1/100以下に低減できることを確認しました。この技術は、経済性に優れ、信頼性の高い無線映像監視システムの実現を可能にします。

  企業や公共施設においては、セキュリティー強化や防災への対応など、安心・安全な社会の構築に向けて映像監視システムの導入が進められています。複数の監視カメラから警備室や監視センタに映像を送ることで監視や記録を行う映像監視システムでは、現在有線ネットワークの活用が主流です。今後、より広い範囲の映像監視を行い、さらにカメラの設置自由度を高めるためには、通信配線が不要となる無線ネットワークの映像監視システムへ期待が高まっています。監視カメラを無線ネットワークへ接続するためには、データ容量の大きい映像の伝送を可能にする広帯域な無線LANでカメラとアクセスポイントを接続する必要があります。しかし、無線LANはスマートフォンやPCなどの機器で広く利用されているため、これらの無線LAN対応機器からの電波干渉を受け、コマ落ちなどの監視映像の劣化が生じていました。

  そこで日立と日立国際電気は、標準規格IEEE802.11eで規定されている通信方式(HCCA*2)を映像監視システムに適用するとともに、映像の劣化を抑制する独自の通信プロトコルを新たに開発しました。HCCAを用いることによって、アクセスポイントにおいて、監視カメラとそれ以外の無線対応機器の通信タイミングを個々に割り当て、機器間の電波干渉を抑制することが可能です。さらに、独自に開発した通信プロトコルによって、万一無線通信エラーが発生した場合にも、監視カメラの通信信号を優先的に再送することが可能となり、コマ落ちなどによる監視映像の劣化を低減しました。

  今回の開発技術を適用した無線映像監視システムを構築し、映像通信の検証実験を行ったところ、電波干渉の原因となる他の無線LAN対応機器を動作させた環境においても、高信頼で高品質な映像伝送が可能となることを確認しました。従来の無線LANを適用した映像監視システムでは数分でコマ落ちが発生するのに対し、本技術を用いたシステムでは9時間以上コマ落ちが発生しませんでした。これにより、映像のコマ落ち頻度を1/100以下に低減できることを確認しました*3。

  本成果は、2013年3月5日から8日まで東京ビッグサイトで開催される「SECURITY SHOW 2013」の日立国際電気ブースならびに、2013年3月19日から22日まで岐阜大学(岐阜市)で開催される「電子情報通信学会総合大会」にて発表予定です。

*1

無線LANの標準規格: IEEE802.11a/b/g/nで規格化されている無線LANの方式。

*2

HCCA: Hybrid coordination function Controlled Channel Access。標準規格IEEE802.11eで規定されている通信制御技術。従来、端末が自立的に通信を行うキャリアセンス方式に対して、基地局からのポーリングによる通信制御を行う技術。

*3

実験条件: 映像信号3Mbps、カメラ用無線機5台、干渉用無線機1台の環境下で、カメラ用無線機とアクセスポイント間における映像通信の誤り率を測定。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、石川]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地
TEL : 042-327-7777(直通)

株式会社日立国際電気 映像・通信事業部 企画本部[担当:浅野]
〒187-8511 東京都小平市御幸町32番地
TEL : 042-322-3111(代表)

以上