ページの本文へ

Hitachi

このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。

2012年10月9日

がんの早期発見に寄与する高感度な光超音波イメージング用
造影剤の基本技術を開発

  株式会社日立製作所(執行役社長:中西宏明/以下、日立)は、このたび、生体深部の微細な腫瘍の発見に適した、高感度な光超音波イメージング用造影剤*1の基本技術を開発しました。本造影剤には、光を照射すると繰り返し気泡化し、そのたびに超音波を発生するナノメートル(100万分の1ミリメートル)サイズの液滴(以下、ナノ液滴*2)を用いています。従来の造影剤に比べて約3倍の感度にあたる強い超音波信号が得られたほか、従来の造影剤では困難であった生体深部の腫瘍を高い分解能で計測することを可能としており、がんの早期発見や治療に寄与するものです。

  近年、光を照射して超音波を計測する光超音波イメージングが、特定の波長を照射することによる腫瘍組織の画像化や、光を細く絞ることによる微小な腫瘍の観察など、従来の超音波イメージング技術にはない計測の可能性を持つことから注目されています。しかし、腫瘍に到達することが可能で、効率よく超音波を発生する造影剤の開発が、高感度に腫瘍を検出するための課題となっていました。今回、高感度な光超音波イメージング用造影剤の基本技術の開発に、2006年に技術開発したナノ液滴を応用することで成功しました。技術の詳細は、以下の通りです。

(1)ナノ液滴を用いた光超音波イメージング用造影剤の基本技術を開発

  2006年に技術開発したナノ液滴に光吸収剤からなる層を加えることにより、光を照射することで気泡化し、音波を発するナノ液滴を開発しました。このナノ液滴を用いることで、従来の造影剤に比べて約3倍の感度にあたる強い超音波信号が得られました。日立が2006年に開発したナノ液滴は、造影剤をナノサイズにすることで、腫瘍組織まで到達させるものです。腫瘍組織に到達したナノ液滴に対して、超音波を照射すると、マイクロメートルサイズの気泡に拡大し、その際発生する音波を計測することで腫瘍の精細な画像化を可能にしました。

(2)光照射によって繰り返し気泡化するナノ液滴の構造を開発

  従来の造影剤は、一度気泡化すると再び超音波信号を発することができませんでしたが、成分や粒径を最適化することで光の照射時に繰り返し発泡し音波を生成するナノ液滴の構造を開発しました。これにより、腫瘍の特定部位を長時間計測することや、生体深部にわたる腫瘍全体を計測することが可能となり、従来の造影剤では困難であった生体深部の腫瘍を、高い分解能で計測できる見通しが得られました。

  本造影剤は、特定の疾患部位に選択的に結合するマーカーと組み合わせることで、従来困難であったがんの早期発見や治療に寄与する基本技術です。

  なお、本研究成果は10月7日からドイツ、ドレスデンで開催される超音波に関する国際学会(IEEE International Ultrasonics Symposium)にて発表予定です。

用語

*1
造影剤:臓器や血流など、特定の対象を選択的に映像化する際に用いる薬品。
*2
ナノ液滴:リン脂質の膜の中にフルオロカーボンを過熱状態で封入したナノサイズの液滴。過熱状態とは、過冷却の逆の現象で、相変化が起こるはずの温度以上に達しても、もとの相を保つ状態であり、ナノ液滴は沸点を超えた温度で液体が液体のままである状態。物理刺激として超音波もしくは光が照射されると、液体から気体への相変化が起こりマイクロバブルになる。腫瘍組織の周りの血管壁は、正常な組織の周りの血管壁に比べ、構造がまばらであり、サイズの大きい物質を透過する性質がある。ナノ液滴は、正常組織を通らず腫瘍組織を到達する大きさで作られているため、腫瘍組織に対する選択性を持っている。

照会先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、石川]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777(直通)

以上

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。