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2012年4月16日
シリコン素子を使用したインバーターと比べ容積と質量を40%低減
株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、このたび、パワーモジュールの小型化や冷却系の簡素化が期待できる材料として、シリコン(以下、Si)にかわる次世代材料として注目されるシリコン・カーバイド(炭化ケイ素:以下、SiC)を用いることで、装置の小型・軽量化と、電力損失の低減を両立した、直流1,500V架線対応の鉄道車両用SiCハイブリッドインバーターを開発しました。
今回開発したSiCハイブリッドインバーターには、日立が開発し、サイズを約3分の2(当社比)に小型化した耐圧3.3kVのSiCハイブリッドモジュールを使用しています。本インバーターでは、SiCハイブリッドモジュールを用いることで、シンプルな回路構成を実現できたうえ、使用時に発生する熱を冷やすための冷却器の小型化を図ったことなどで、装置の小型化を実現しました。さらに直流から交流へのスイッチングを行う際の損失を低減するために、日立が独自に開発してきたソフトゲート制御技術を、本インバーター向けに最適化を図ることで、SiCハイブリッドモジュールを用いる際の課題となっていた、スイッチング時のノイズ増大への対応を図り、電力損失の低減を実現しました。さらに、軽量なコンデンサであるオイルレスコンデンサを採用することにより、インバーター全体の軽量化にも成功しました。その結果、本インバーターでは、現在主流のSiを用いたインバーターに比べ容積と質量を40%、電力損失を35%低減しています。
日立は、将来的に本インバーターを各種の鉄道車両に適用していくことで、小型で環境性に優れた鉄道車両の実現に貢献していきます。
近年、地球温暖化防止の観点から、低炭素社会を実現するための環境対策が世界規模で進められています。鉄道は、環境負荷の少ない輸送システムとして需要が高まっていますが、さらなる省エネルギー化に向けて、車両の軽量化などに貢献する、小型で環境性に優れた鉄道車両用インバーターが求められています。
現在、多くの鉄道車両インバーターには、省エネルギー性の向上と高性能化の両立をはかるために、Siダイオードが使われています。しかしさらなる高性能化を図っていくために、絶縁破壊強度が約10倍高く、高耐圧であることからデバイスの薄型化による導通(オン)時のオン抵抗の低減が可能であるSiCの活用が拡大していくことが期待されています。そこで、日立はこれまでに培ったインバーター技術をいかし、小型SiCハイブリッドインバーターを開発しました。本製品の特長は以下のとおりです。
SiCはSiと比較して高耐圧であることから、一般的にデバイスの薄膜化による導通損失とスイッチング損失の低減に有効です。日立はSiCのダイオードとSiのIGBTを組み合わせた、3.3kVのSiCハイブリッドモジュールを開発し、ダイオードの電力損失低減だけでなくIGBTの電力損失低減も可能としました。損失の低減に成功したこの3.3kVのSiCハイブリッドモジュールを使用することにより、インバーターの高効率化を図り、小型化を実現しました。
インバーターに使用するIGBTモジュールの電力損失は、電流が流れる時に発生する導通損失と、スイッチング時に発生するスイッチング損失に分けられます。SiCハイブリッドモジュールは、特にIGBTのターンオンスイッチング損失と、ダイオードのスイッチング損失の低減に有効ですが、その一方でスイッチング時の電磁ノイズが増大します。そこで、これまでSiを用いたインバーターに適用してきた日立独自のソフトゲート制御技術を、SiCハイブリッドインバーターに最適化することで、IGBTのターンオン損失の低減と、スイッチング時の電磁ノイズの低減を両立しました。
鉄道用インバーターを構成するパワーユニットは、一般に、車両走行時の走行風で冷却されます。走行風は、車両の走行にしたがって車両の前方から後方へ流れることから、冷却器の温度は風の取り入れである風上が低く、風下が高くなります。そのためパワーモジュールで発生した熱を冷却フィンへ運ぶヒートパイプを、車両の走行方向に配置することで、風上と風下の温度差を最小化することが可能です。今回、日立では、流体解析技術を活用し、風上と風下の温度差と冷却効果を同時に最適化するヒートパイプ配置を新たに開発することで、冷却器を小型化・軽量化しました。
株式会社日立製作所 交通システム社 [担当:岩村]
〒101-8608 東京都千代田区神田一丁目18番13号(秋葉原ダイビル)
TEL : 03-4564-3596(直通)
以上