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2012年3月27日
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、石炭火力発電のCO2回収・貯留(CCS : Carbon Capture & Storage/以下、CCS)のCO2回収に関して、市販されている一般的なゼオライト*1固体型吸着材と比較して、CO2吸着量を約13倍増加でき、材量を約90%削減できる酸化セリウム成分の固体型吸着材を開発しました。
今後、さらなる材料開発およびシステム性能評価を進め、2025年以降の実用化をめざします。
石炭火力発電は、ボイラ内で石炭を燃焼させて発生した水蒸気を使い、蒸気タービンを回転させて発電する方式です。今般、人口増加などによるエネルギー需要などを受け、新興国をはじめグローバル市場において、プラント建設に対する継続的なニーズがあります。一方、石炭火力発電は、大気中へのCO2放出抑制が求められており、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等を除去する排ガス処理の後に、効率的にCO2を回収できる装置の開発・実証試験などが進められています。
日立は、これまでCO2回収材料としてアミン液を用いる化学吸収法を開発してきました。日立が開発した吸収液は、従来の吸収液に比べてCO2回収エネルギー消費量を約30%削減*2でき、現在、商用化に向けて実証試験などを計画しています。
また日立は、CO2回収エネルギー消費のさらなる低減に向け、新しい回収材の研究開発を進めています。アミン液を用いた化学吸収法は、蒸気タービンより抽気した水蒸気で、CO2を吸収した液を再加熱し、CO2を分離・回収するため、CO2回収のためのエネルギーが必要になります。そこで、日立は、CO2回収エネルギー(蒸気タービンより抽気する水蒸気)を低減させるため、新しい候補材の一つとして、液体よりも比熱が小さく、CO2回収に伴う水蒸気の使用を、より低減することが期待できる固体材料に注目しました。ただし、市販の固体型吸着材では、排ガス中に存在する水分を優先的に吸着してしまうため、効率的なCO2分離が困難であるという課題がありました。
今回開発した固体型吸着材は、酸化セリウム成分の吸着材です。酸化セリウムは、水分共存下でもCO2を効率的に吸着できます。また、排ガス浄化触媒の開発で培った技術を適用し、吸着材の吸着点を増加させ、より多くのCO2を吸着することが可能となりました。これらにより、市販されている一般的なゼオライト固体型吸着材と比較して、水分共存下においても、CO2吸着量を約13倍増加でき、材量を約90%削減できます。また、日立が開発したアミン液を用いた化学吸収法と同等まで、CO2回収に必要なエネルギーの低減を確認することができるとともに、今後、固体型吸着材の改良や最適システムの構築を進めることで、回収に必要なエネルギーを更に20%以上低減することをめざします。
また、固体型吸着材を使用することで、アミンタンクなどの付帯設備が不要となるため、CCS装置の簡素化を実現できます。
今回開発した固体型吸着材の主な特長は、以下の通りです。
日立は、引き続き、発電効率のさらなる向上に向け技術改善を進めるとともに、今後の実用化に向けた研究開発を推進します。また今後も、日立は、環境性能に優れた技術を開発し、低炭素社会の構築、地球環境の保全に貢献していきます。
なお、本技術は、3月26日に慶応義塾大学で開催される「日本化学会第92春季年会(2012)」にて、紹介しています。
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 櫻庭]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508
以上