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2012年3月13日

テレビ会議システムの残響低減技術を開発

アレイ型マイク一台を置いた会議室で残響を9分の1に低減

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、高品質なテレビ会議システムの実現に向けて、室内の天井や壁、設備などに反射して生じる残響を大幅に低減できる音声処理技術を開発しました。本技術は、アレイ型マイク一台*とPCを会議室に設置するだけで、発話者の場所や顔の向きが時々刻々と変化した場合でも残響を除去できるため、聞き取りやすい音質でコミュニケーションができるテレビ会議システムを実現します。最大20名程度が参加可能な約50m2の会議室での実証実験では、残響を9分の1に低減できることを確認しました。

  近年、企業のグローバル展開が進む中、出張費や移動経費などのコスト低減や業務の効率化のために、遠隔拠点間のコミュニケーションツールとしてテレビ会議システムの導入が本格化しており、より円滑なテレビ会議を実現するために、発話者の音声が室内の天井や壁、設備などに反射して時間遅れでマイクに到達する残響成分をできるだけ低減するシステムの開発が進められています。これまでの技術では、残響がマイクに到達する時間と音量(残響のパターン)が一定であるとの仮定に基づいて残響成分を推定し除去していましたが、実際には発話者の位置や顔の向きが少しでも変化すると残響のパターンは変動するため、残響を高精度に除去することが難しいという課題がありました。

  このような背景から、日立は、部屋の広さやレイアウトなどの事前データを必要とせず、発話者の位置や顔の向きが変化しても、リアルタイムかつ高い精度で残響を低減する技術を開発しました。開発した技術の特長は、以下の通りです。

(1) 変動量も含めた残響発生パターンの推定
  音声がどちらの方向から到達したかを推定することができるアレイ型マイクを用いて収録した、過去約5秒間の音声に対して、直接届いた音声と、異なる方向から遅れて届く残響音の分離処理を行います。さらに、その分離された残響音から、残響音声の到達時間や音量がどのくらい変動するかを求め、この変動量も考慮した残響の発生パターンを推定します。
(2) 残響の音量をリアルタイムで推定し、残響成分を高精度に除去
  (1)で推定された残響発生パターンに基づき、入力された音声に対して、残響成分の音量を推定し、聞きたい音声の音量とのバランスを考慮した残響成分高精度な除去をリアルタイムで行います。

  これらの処理には、EM(Expectation Maximization)アルゴリズム(確率的最適化法の一種)と呼ばれる計算手法を適用しています。

  今回開発した残響低減技術を用いた実証実験では、最大20名程度の参加が可能な約50m2の会議室において、音源がアレイ型マイクから4メートル程度の場所にある状況下で、残響成分を9分の1に低減可能であることを確認しました。
  本技術は、会議室におけるテレビ会議システムの通話品質の向上をはじめ、室内で動作する対話ロボットの音声認識精度の向上にも寄与する技術です。

  なお、今回開発した技術については、3月13日から神奈川大学で開催される日本音響学会2012年春季研究発表会、および3月25日から京都で開催される「The 37th IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing」(ICASSP2012)で発表する予定です。

  • * アレイ型マイク : 多数のマイクロホン素子を並べたマイク。各マイクロホン素子に到達する音声の時間のずれから、音源の位置特定が可能。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地
電話 042-327-7777(直通)

以上

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